知識ですか?勇者さま。
「どうにゃ?、、、ちゃんとついて来てるかにゃ?」
ミヤが都市での常識的な事柄を説明してくれているのだが、、、
、、、正直、フェンには難しかった。
目の前で『困っている人』が居れば助けるのが普通だとフェンは思う。
手を差し伸べ、助ける、、、今までもそうして来たし、これからも。
街中に戻って来たフェン達は宿を探す。
「あの子の事も有るし、今日は一泊するにゃ。」
フェンも同意する。
ミヤの話しは納得出来る話しだし、教団に預けたのだから心配ないだろう。
・・・とは思うのだが、、、。
フェンの中の性善説、、フェンが今日まで暮らして来た中で作り上げて来た
人への、人間の性善説の基準が揺らいでいるのだ。
、、、実はフェン個人の、ただの思い込みではないか?との思いが拭えない。
いくら神官様が引き受けたとは言っても、心の中の不安が消えないのだ。
フェンの気持ちを察したのかミヤが言う。
「その不安は実際に自分の目で見て確かめなきゃ解決しないにゃ。」
宿屋が見つかり部屋を取る。
クロスシティーは物流の拠点だけあって、それに伴う人の流れも多い。
その為、宿屋の業界も発展している。
競争原理が働いてどの宿屋も他の都市や町に比べて豪華なのに割安だ。
冒険者が使う一番安い二人部屋でも不必要な程に広い造りになっており、
素泊まりで二人で40ジルド。一番高い一人部屋でも120ジルドほどだ。
まあ、冒険者は安い部屋に泊まるが、宿屋の酒場で『それ以上の散財』を
してくれるのを見越しての価格設定でもあるのだろう。
今までなら割安感が有って素直に『お得』だと喜んだと思う。
だが、今のフェンは素直に思う事が出来なかった。
お金を払う時に、どうしても想像してしまうのだ。
ここの一番安い二人部屋に三泊も出来ない値段だなんて、、、、
・・・『あの子が』である。
もし、それで救う事が出来るのなら『何泊でも野宿してもいい』と思う。
、、、そんな事は不可能な妄想でしかないのは理解しているのに、、。
支払いを済ませ、部屋へ入る。
疲れた、、本当に。 頭も回らず考えも整理出来ない。
考え込むフェンを見かねたミヤが言う。
「フェンさま。食事に行くにゃ、何か食べるにゃ。」
ミヤに言われて、食事をしていない事を思い出す。
「そうだね。ごめんね、ミヤ。お腹空いたよね?」
考え込むあまりに一番近くにいるミヤの事さえ考えられなかった。
『これじゃ、駄目だ!』 心の中の自分に言う。
「行こう、ミヤ」
「はい。フェンさま」
疲れを取る為のスタミナセットをミヤに却下されたのが不思議だが、
無事に食事を済ませた。
部屋に戻るとミヤが提案する。
「フェンさまは素直過ぎなのにゃ。行動も率直過ぎなのにゃ」
「戦う技術は有っても、駆け引きが出来ないにゃ。」
「特に対人の『交渉事』は壊滅的にゃ、、」
結論的にこうなった、『勉強しよう』と。
「机上の知識はあくまで想像にゃ。実際に経験しなきゃだにゃ」
「、、、でも知識としての引出しは多く有った方が良いにゃ」
「少しづつでも勉強するにゃ。まずは対人的な事からにゃ、、」
「ジン様も最初はそうだったとクロネも言ってたにゃ」
、、、爺ちゃんも?、、フェンはピンと来ない。
フェンが物心ついた頃には『爺ちゃん』は『爺ちゃん』だったのだから。
だが、爺ちゃんもそうだった、と言うなら頑張ってみたい気持ちもした。
「まずは今日の事から振り返ってみるにゃ」
・・・内心、ミヤも焦っていた。
疑う事を知らないフェンに社会勉強として裏の社会を見せようと、
『わざわざ』行った裏通りの店は自分でも衝撃過ぎだったと思う。
予定では食堂で少し金額を多く吹っ掛けられて、、反省する。
、、、くらいのはずだったのだ。
フェンは衝撃を受け、、過ぎたのではないか?
軽い『人間不信』になった様にも見える程に考え込んでしまった。。
フェンが素直で誠実なのは良い所で魅力でもある。
その純粋な物を強制的に穢した様な気がしたのだ。
『フェンさまには、、フェンさまのままでいて欲しいにゃ』
、、、でも、このままじゃもっと傷付くのにゃ、、。
相反する気持ちにミヤも戸惑っていた。
幕間
以下、読んで下さる方の再確認用です。
第20話にもなると皆さんも内容確認した方が良いよね♪、、、と、
その実、自身の間違いを防ぐ為にも、内容の確認です。
登場人物
フェン ・・・主人公。人間の若者。性別は男性。勇者ジンの孫。
ジン ・・・主人公の祖父。フェンからは『爺ちゃん』と呼ばれている。
当初は現勇者だったがガルンの件後、フェンに勇者を譲り消える。
クロネ ・・・猫。フェンが生まれる前から家に居る『先住猫』。実は獣人。
ガルンの件で開放され本来の姿に戻る。ジンと共に消える。
ミヤ ・・・猫。クロネの後にやって来た猫。フェンに『猫可愛がり』される。
ガルンの件で開放され本来の姿に戻る。フェンと行動を共にする。
フェンの事は「フェンさま」と呼ぶ事になっている。
シズ ・・・シズネ。フェンの幼馴染。フェンは『シズ』と省略して呼ぶ。
土精霊術士。土精霊に対する影響力は特異とも言えるほど。
実は前魔王討伐後に、、、。
セリス ・・・ギルドの受付嬢。町のギルドの受付嬢人気NO.1。リリスの妹。
ギルドの『癒しキャラ』となっている。
リリス ・・・商人。ギルド出入りの個人商。セリスの姉。押しが強い。
交渉事とトレジャーハンターの能力が高い。
ルチア ・・・ファリス教団の最年少神官様。
人前ではフェンを「お兄様」と呼ぶ。
人が居ない時や親しい人しか居ない時は「お兄ちゃん」と呼ぶ。
家族はモンスターにに殺され、それがトラウマになっている。
ロベルト ・・・ロベルト公。フェンの父親。ゼノン王国の直系の血筋。
勇者の血筋を欲しフェンの母と結婚した筈だったのだが。
フェシリア ・・・フェンの母親。両親の勇者の血を引く。
死んだと聞かされていたが父の話しではまだ生きて
いるらしい。
今も大陸中央の山脈で『人の砦』となって人間を護っているの
だと言う。
ファリス ・・・フェンの祖母。フェシリアの母。ファリス教の開祖。
勇者パーティーの回復担当。ジンと結婚する。
結界と一体化して精神体となり『神』の様な存在になる。
落ち着いた女性に見られがちだが、結構剛胆な性格。
大司教 ・・・ファリス教の大神官様。現在の教団での最高位責任者。
孤児院だった頃に教団に来てファリスを母と慕っている。
幼少の頃はオネショを隠そうと毎朝布団を被って出て来ず、
『オネショ被り』のあだ名が付いていた。
フェンを教団の教祖にしようと奮闘中。
ニーナ ・・・女盗賊さん。フェンには半強制的に『お姉様』と呼ばせる。
フェンの王都への到着を遅れさせる依頼を受けるが失敗。
『人殺しと非道はしない』と言い切る。
ヘルブム ・・・ヘルブム卿。王国の貴族。ロベルトを次期国王にと画策する。
取り巻きのもう一人の貴族と共に偽者に勇者を継承させよう
とするも失敗。三人纏めて国王からの処分待ち。
国家(地名)・他
イーストノエル ・・・フェン達が暮らす町。程よく田舎で住みやすい所。
町の名前は前勇者から来ているのだとか。
王都 ・・・王都ゼノン。今のゼノン王国の首都。
ガルン ・・・国境の城塞都市。隣接する敵国との小競り合いが絶えない都市。
セントファリス ・・・ファリス教団の本拠地。村、町、都市へと変貌した。
オズゲート ・・・南方都市。南方の首都とも呼ばれたが、セントファリスが
発展し今ではセントファリスの「向こう側の町」呼ばわり
されている。
クロスシティー ・・・別名、クロスロード。王国の主要道路が交差する都市。
物流、軍事、欲望、『無い物は無い』と言われる。
その為、王国の光と闇の部分を色濃く表す都市でもある。
ラ・クジャール ・・・ゼノンの東方に隣接する敵国。今まさに戦争に入ろうと
していたが、ロベルト公の邪魔な勇者の抹殺と言う餌に
食い付き利用される。結果として勇者は消え、国内の
邪魔者は消せ、一人勝ちの様に思えるが・・・。
通貨単位 ・・・ジルド。
・・・・・・。
「フェンさま、ココ分かるかにゃ?」
「いえ、分かりません、ミヤ先生。」
「分からないなら罰を受けて貰うにゃ。」
「罰としてミヤ色に染めてやるにゃ!」
「えっ?栗色に??」
・・・うっっ!純粋なフェンさまが眩しいにゃ。。。




