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裏側ですか?勇者さま。






その日は結局王都で一泊する事になる。



ちなみに宿に食事も『教団持ち』でって事でヨロシク♪



そして翌朝、各々の帰路についた。



名残惜しそうなルチアだが、今回みたいに『すぐにまた会える』という実積が


効いたのか「また会えますよね」と素直に旅立っていった。



ニーナはあっけらかんとしたもので


「レアなアイテム見つけたら連絡してね。盗みに行くから♪」


なんて捨て台詞で街中へ消えて行った。



『あの、住んでる町はもとより、連絡方法すら知らないんですけど?』


・・・と、指摘する暇も無く消えた。




フェンとミヤも帰路につく…予定が無い久々の旅路だ。




「フェンさま、ミヤ、クロスシティーの町に寄って行きたいにゃ。」




…僕は立ち寄った事ないけどミヤは有るのかな?見たい物?知り合いが居るとか?



「うん。帰り道だし、いいよ。」




久々の仕事ではない道程だ。フェンも寄った事の無い町だし、興味もある。




「じゃあ、まずはクロスシティーに向けて出発だね」




王都ともお別れ…何気に嬉しいと言うかホッとした気分になった。



正直、ほんの数日だけど都会の空気…人の多さに一杯一杯だったのだ。



少しでも田舎へ近付きたい…王都に済む人に言わせれば、


『田舎者根性丸出しだ』と言われるかもだが、今のフェンには、それが素直な気持ちだった。





クロスシティーと言えば一大都市だ。物流に関しては王都よりも盛んだろう。



全ての公道が交わるこの都市は王国の『物の中心』なのだ。



それと同時に軍事の重要拠点でもある訳だ。



『クロスシティーで見つからない物は無い。』と言われる程に

お店も品揃えも数多い。



そして…それは「表の顔」と同時に「裏の顔」も持ち合わせている事を

意味するのだが、、、。






クロスシティーには昼過ぎに到着した。



ちょうど喉も渇いたし、お腹も減ったのでお昼ご飯を食べようという事に

当然の様になった。


、、、が、混んでいる。


時間が時間だけに大通りに面したド派手な店は皆、行列が出来ている。




イーストノエルでは行列など皆無だし、店が休みの日でさえも行けば、


『今何か作るから…』なんていうのが当たり前だったのに…。



行列にげんなりし、迷っているとミヤが提案する。



「裏道にこそ美味しい店が有る物にゃ。」



…そういう物なのかな?



フェンは美味しいお店は儲かっているのだろうから大通りに大きな店舗を建てて、


ドーンと営業しているのが当然だろうと思っていたのだが。



とは言っても、あの長い行列に並ぶなんて…待っているだけで夕方になっちゃうんじゃない?


と並んでないのに並んだつもりで心配になる。



「うん。他を探そう。」


決断は速かった。



メイン通りを逸れて脇道、裏道へと進む。


人も疎らになり、それなりに店舗が並んでいる通りに出た。



『うん。いいね。』


申し訳ないがフェンはメイン通りよりこちらの通りの方が落ち着く。



「食事が出来るお店はどこかな?」



「あそこはどうかにゃ?」



ミヤの指す先には食堂らしいのだが、どちらかと言えば酒場だろうか?


とは言え、結局、何の店なのか分からない店がある。



店に近付くと料理の仕込みを行っているらしい音も聞こえる。




まずは腹拵えだよね!…食堂だと勝手に即断し、店に入る。



「いらっしゃい」野太い男の声が掛かる。



ビクッ!薄暗い店内では心臓に悪い声だ。



「ここのお勧めって何ですか?」




「??…はぁ?!」




はぁ?!って言われても困るんですが…。




「何かお腹の膨れる物をお願いします。」




「ふーん。兄さんお金は持ってるのかい?」



…いや、食事代くらいは持ってますよ、なんなら宿泊代も有ります…とは口には出さないけど。



「ちゃんと有ります。」



フェンは懐から革袋を取り出しカウンターに置き見せる。



今回は前のガルンの経験を生かし、十分なお金を持って来ていたのだ。




「ならいい。兄さんの好みは…そうか。」


好みを聞いた後に隣のミヤをチラッと見て勝手に納得してくれる。




ミヤの、猫人族の好きな料理でも出してくれるのかな?



「ちょっと待ってな!」



男は奥へ入って行く。



…どんな料理が出てくるのかなー。



ミヤもワクワクしてるかな?…と様子を見ると、部屋の中をキョロキョロしている。



何か気になる物でも有るのかな?…釣られてフェンも見渡してみる。




薄暗い部屋の隅に何か…?!…獣人?




気付かなかったけど確かに獣人の、それも子供と言っていいような小さな影、目があった。




フェンが笑いかけると慌てて隠れてしまう…ビックリさせちゃったかな?



しばらくすると男が戻って来た…後ろに何人か引き連れて。




…えっ?お腹が膨れる物って頼んだけど、一人で持ちきれない様な料理って、



一体どれ程の量を作って来たの?




…ってか、お金大丈夫かな?ここがボッタクリ店で足りなかったらどうしよう?





だが、予想は裏切られる。



全員『料理を持っていない』のだ。



フェンは頭に?マークが浮かぶ。



「えっと、、どういう…」




言い掛けると男が言う。



「どの娘がいい?」



「?!」



娘?…娘ってどういう意味なの?



見れば出て来た女の娘達は皆、獣人…しかも猫人族だ。




「これは…どういう?」




男に問い掛ける。



「自分で『お腹の膨れる物』を頼んでおいて、解らない訳ないよな?」




…!!!!





勘違いではない。



店の男はフェンが『猫人族の娘を買いに来た』と受け取ったのだ、で、この状態なのだ。



店の男は『腹の膨れる物』を『妊娠させる目的の娘』と受け取ったのだ…


しかもミヤを見てフェンは猫人族の娘が希望だと。




連れて来られた獣人の娘達の瞳は一様にフェンを見つめている、、


『この人間は、、どういう人間か?』、、と。


根底に在るのは怯え、、恐怖だ。


『買われる』・・・それは生死に係わる事柄なのだ。


もし、幸運にも良い人間に買われたなら静かな生活が送れるかもしれない。


だが、悪い人間に買われたら、それは死に値する、、。


この店より酷い仕打ちを受け、『死んだ方が良かった』と思う事になるかもしれない。


今日、自分達を買いに来た人間は、、、?


自分をアピールして気に入られて買われて行くのか?


大人しく目立たず隠れて今の生活を受け入れこの店で働き続けるのか?


たった今、逢ったばかりの人間から、すぐに判断しなければならない。



・・・この人間は?・・・どっち?



フェンは身震いする。


獣人の女性達からの真剣な突き刺さる様な視線に。


それは、生への渇望と欲求、、反して、、恐怖と絶望。


本来なら、自由を奪った人間に対する『怒り』や『軽蔑』の筈が、、


その『本来の感情』さえ奪われたのが、この獣人さん達なのだろう。




『何で、こんな事!!』



自分が汚された気がした。




実際は違うとしても、少なくとも男はフェンを『そういう人間だ』と判断したという事。



そして、こんな行為…『他の存在を売る行為』を自分と同じ人間が行っている事に。




そもそも自分の行動と言葉が今の状況を作った、という事実が許せなかった。





ミヤは…ミヤの方を見るのが怖かった。




ミヤは今、どんな顔をしているのだろう?




軽蔑し、嫌悪を顕にしているのではないだろうか?




フェンは今まで生きて来た中で一番『恐怖』していた。


どんなに危険なモンスターを前にしても感じた事の無い『感覚的』な恐怖だった。




「フェンさま」


意外な声に、つい振り向いてしまう。




「ミヤ…」




「仕方ない事なんだにゃ」


ミヤは悲しい様な、諦めた様な顔をしていた。




「仕方ないって、、そんな、、」




「じゃあフェンさま、何とかしてくれるにゃ?」




「何とか…」…出来る方法など今のフェンには思い付かない。



「おい!どうするんだ!」



焦れた男が声をあらげる。



急にミヤも声をあげる。



「浮気なんて許さないにゃ!!!」



「こんな無駄遣いは絶対許さないにゃ!」



「は…い。」


フェンも何とか声を絞り出す。



店の男も『ミヤが財布のヒモ』を握っていると知ったせいか、急によそよそしくなる。




「買わないんなら、とっとと帰ってくれ。」




店から押し出す様に追い出されてしまう。




「ミヤ、、、ごめん。」



それしか言える言葉が無かった。



店を出ると、入店前から聞こえていた『仕込みの音』らしい音がまだ聞こえる、、、




悪い予感…直感と言っていいような確信を持って建物脇の路地に踏み込む。




「・・・・!!」




数人の男が仕込みの為に『肉』を蹴っている…訳がない。




違うのだ。『獣人』を蹴っているのだ。



…そんな、、、フェン達の入店前から…どれだけの時間蹴っていたのか?




「「やめろ!!!」」




考えた訳では無く、ただ純粋に止める行動以外に選択肢は無かった。



「誰だ、お前?」


男の一人が声を上げる。



「その子をどうするつもりだ?」逆にフェンも問う。



「粗相をしたから罰を与えているのさ。もう用済だし罰を与えてから廃棄予定だ」



言葉に出来ない怒りがフェンの中に生まれる。



思わず剣に手が掛かる。



男達にも緊張が走る。



「お前ら、いつまでやってるつもりだ!!」


先程の店内の男だ。



「お前、まだ居やがったのか?」




「「この子を買います!!」」





『店内で買わずになぜ?』




しかも、




『こんな物をなぜ?』




…とは男は言わない。





今まさに廃棄予定の物が金を生むかもなのだ。途端に態度が変わる。



「どうぞ、どうぞ。店内で詳しい話を。」



…そんな話しよりも早く手当てをしなければ…フェンの頭の中は『助けたい』

気持ちしか無くなっていた。




結局、男の『言い値』を値切りもせずに即決する。



金額を支払うと自然と涙が流れた、、、。



・・・なんだよ、何なんだよ!、、、これ、、、。




フェンは値切らなかったのだ。




だが、、、『安すぎた』のだ。




「たった、たった100ジルド、、、」




店の男からすれば、吹っ掛けた値段なのだろう。


用済みの獣人など邪魔なだけだ。しかも死に掛けだ。



この子の命が、たった100ジルドだと言う。


生まれて来て、生きてきて、たった100ジルド、、だ。




フェンは身震いする。


・・・獣人を買った、この子の生き死にはフェン次第なのだ。


『こんな、こんな事、絶対間違ってる、、、』



だが、結果としてフェンも獣人を買った人間の仲間になったのだ。



悔しくて涙が止まらなかった。





奪う様に引き取ると街中へ走った。


酷い傷だった。男が言ったのは本当だったのだろう。


・・・『廃棄予定』


最初から男達は『殺すつもり』で暴行していたのだから。





寺院、、寺院は、、、



手当たり次第に見つけた寺院へ担ぎ込み頼む。



「この子を診て下さい!」



だが、どの寺院も引き受けてくれなかった。




「どうして、どうして診てくれないの?」




途方に暮れるが、思いつく。




「ファリス神殿なら・・・」



フェンは走った。




子供は繰り返しずっと呟いている。




「ごめん、なさい、、、ごめ、、んなさい」




「許して、、下さい、、、、まだ、働けます、、、、」




「、、、殺さ、、、ないで、、、、」、、、と。




『ごめん。ごめんね。・・・』



フェンは他に言葉が見つからなかった。






ファリス神殿にようやく到着した。



気付くと背中の声が聞こえない。



ゾッとした悪夢が過ぎるが、背中に伝わる鼓動はあった。



「すいません。重傷なんです。今すぐ治療をお願いします!!」



神殿の受付けの担当らしき男が対応する。



「治療ですか?まずは費用の説明から、、」



「そんな場合じゃないんです!今すぐ、、危険なんです!」



やれやれ、といった表情で受付の男は言う。



「指示に従えないならお引取り下さい」




「いいから、、治せ!!!、、、お願い、、します」



もうフェンもどうしたら良いのか判らなかった。



「フェンさま、待って!」



ミヤが割って入る。



「申し訳ありません。見ての通り危険な状態なのです。」


「費用はお支払いしますので、どうかお願い致します。」




「お引取りを。」


受付の男も引けなくなっていた。





「騒がしいですね。何事です?」



「神官様、、、」


急に受付の男のトーンが下がった。




神官様と呼ばれた男はフェン達3人を一瞥すると、、、言う。



「ここはファリス神殿。全ての者を受け入れる場所。」


「全ての傷つきし者に癒しを与える場所。」


「但し、法に従えぬ者は恩恵に能わず。」


「従えぬ者は立ち去れ!」



、、、神官は怒り収まらぬフェンではなくミヤの目をみて頷く。




「フェンさま。行くにゃ。」



「ミヤ、だって治療を、、、。」



「いいから行くにゃ。但し、その子は置いて、だにゃん。」



「ミヤ、何を・・・」



そのままミヤに引きずられる様に神殿の門をくぐる。




神殿から少し離れた場所でミヤの手を振り解いて言う。



「ミヤ、どうして?あの子を置いて来るなんて、、、」



「大丈夫だにゃ。」



「何が大丈夫なの? あの子が治療してもらえなかったら、、、」



「今頃、治療して貰ってるにゃ。」



「どうして、、、?」



「神官様は『従えぬ者は出て行け』と言ったにゃ」


「それは、『フェンさま』と『ミヤ』の事にゃ。」


「あの子は何もしてないにゃ、、従わぬ者ではないのにゃ。」


「そして、、、神殿は全ての傷つきし者に癒しを与えてくれるにゃ。」




・・・っ、、、全然気付かなかった。



神官様とミヤは理解して行動していたのだ。



自分は自身の意見だけしか見えず相手に対して怒りを感じるばかりだった、、、。



「ミヤ、、僕は、、、」



「そうにゃ。フェンさまは素直過ぎるにゃ。経験も足りないにゃ。」



「相手を見て、相手を理解する力が足りないのにゃ。」




田舎で育ち、多くの人と触れ合う機会が無かったのは言い訳でしかない。



フェンが知らなかっただけの話しなのだ。



ただ今日の出来事はフェンの中の何かを変えたのは間違い無かった。







「僕が知らなかっただけなんだね、、」

 「そうにゃ。もっと勉強するにゃ。」

「はい。ミヤ先生!!」

 「じゃあまず一般常識からにゃ!」

 「飼い猫には毎朝キスしなきゃなんだにゃ!」

「じゃ、ミヤは家族だからしなくてOKなんだね♪」

 「、、、大失敗にゃ(泣)」

 

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