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聖都ですか?勇者さま。




セントファリス。


それは『聖なる町』


また『祝福の町』、『赦(ゆる)しの町』とも呼ばれる。



名前の通り『ファリス教』の総本山、教団本部が置かれている。


現在は『町』などとは呼べず『都市』と言える大きさだ。


教団が出来た当時は『王国の中心』と言えば聞こえは良いが、


人も少なく要は『田舎』だった。



王都ゼノンから南、地図で見れば下の方に南方都市オズゲートはある。


その二都市の道すがらに『セントファリス』はある。


当時は俗に言う、ありふれた宿場町でしかなかった。



・・・と言うか町の名前すら『セントファリス』ではなかったのだが。


そう、地図上での王国の中心でしかなかったのである。





だが、この町に偉人が生まれる。


小さい頃から才能を発揮し、神聖魔法や回復魔法に精通し、


見た目も可愛く『神童か、神娘か』と噂されていた。


後に勇者パーティーのメンバーとなり魔王を倒す一員になる。


名を『ファリス』と言った。


魔王討伐後、勇者ジンと結ばれる事となる女性だ。








「・・・ん?、、、??」



「どうかしたかにゃ?」



「ううん。何でもないよ。」



「一応聞くけど俺の周りに何か居ないよね?」



「何も居ないにゃ。」



「そう?」



、、、セントファリスの町に近づくにつれて何かチクチクというか、


誰かに見られている様な気がするんだけど、、、『気のせいかな?』



こんな事は以前に何度も有ったので驚きはしないのだが、、


その度にシズが、「もう。イタズラしちゃダメでしょ。」


・・・って、採取の丘では良くある事だった。


その時は、どうやらシズの『お友達』の誰かのイタズラらしかった。



今は注意してくれるシズも居ないし、危険も無い様なのでスルーする。




「そろそろファリスに到着だね。」



「そうですにゃ・・・。」


なぜか元気のない返事のミヤ、、、




『初めての馬の二人乗りで疲れちゃったのかな?』


・・・無理して具合が悪いのを我慢してるのかも、、?




「ミヤ、もうすぐだから我慢してね。」



「そうですね!」 なぜか怒り気味??




『もう、フェンさまは鈍感過ぎです、、、』


ミヤの小さな『ぼやき』はフェンには届かなかった、、、。









町の入り口、正門にあと少しと思われた辺りで急に街道が詰まり始める。



「ここまでスイスイだったのに何か有ったのかな?」


前を見ても先頭までは見通せなかった。



「何か有ったんですか?」


分からなければ人に聞く、一番手っ取り早い方法だ。



前の幌馬車の荷台に居る人に声を掛ける。


「君はファリスは初めてかい?」


「ここの所、ファリスへの入場者はチェックを受けなきゃなのさ」


毎回の事に『うんざり感』が伺える。


そして、門兵に理由を聞いても教えてもらえないらしい。


『理由も分からず毎日待たされたら『うんざり』するよね、、、』


フェンは素直に同情した。



・・・そして「おかしい」とも思った。


セントファリスは『赦しの町』なのだ。


『来る者は拒まず』で通常なら誰でも検問など受けず入れるはず。


明らかに襲撃に来ました、と言う武装集団やモンスター以外なら


誰でも受け入れる町なのだ。


他の宗教の教えでは有り得ない話しだが「他の宗教の信者」でさえ、


分け隔てなく受け入れる。



・・・ただし、



『こちらも認めるから、そちらも認めて下さい』が原則なのだ。


町に来て『ファリス教』を攻撃する様な行為は重罪だ、その逆も。


まあ、『相手から理解してもらった』のに『でも、あなたの事は理解しない』


、、、なんて話しは宗教以前の話しだと思うが。



ファリス教はそれを明言し、実際に行なっているのだ。










ようやく正門まで辿り着いたのはもう日が真上に来る頃だった。


途中、前の幌馬車の荷台の男に延々と愚痴られたので『うんざり感』


も倍増していた・・・正直、話し掛けなきゃ良かったな、とも。




門兵が問う。


「フードを取って、名前と来訪目的、あとは、どこの町の出だ?」


、、、門兵自身も相当『うんざり』している様子だ。



「イーストノエル出身、名前はフェンです。人を訪ねに参りました。」



「・・・!!、、、イーストノエルのフェンで間違いないな?」


、、、なんで自分の名前を? 間違う訳がないだろうに、、、。



「はい。間違いありません。」 



兵士達から『ざわっ』と気配が上がる。



「で、フェン殿は「誰を」訪ねて参ったのかな?」



「いえ。名前は分からないのですが、、、ファリス教の神官様かと。」



目的がファリス教の神官様への面会ならと、兵士達の空気が少し緩む。




と、兵士の目が留まる。



「その、、もう一人は?」、、、ミヤの事だ。



「フードを取って顔を見せろ。」



街道の渋滞に入ってからは、ずっと前の幌馬車の男の目が有った為に


ミヤを猫に出来なかったのだ、、、大失敗だ。



「早くしろ!」 また兵士達の緊迫感が増す。



「えっと、この娘は、、、えっと、、、」



口籠もるフェンに・・・『バッ』っとミヤがローブを脱ぎ捨てた。


チュニック姿のミヤが高々と宣言する。



「私はフェン様の付き人、兼、『恋人』にゃ!!!」


、、、やけに『恋人』が強調されていたような、、


、、違う、違う、そんな事を気にしてる場合じゃない。



だが、フェンの心配を他所(よそ)に兵士達の反応は涼やかだった。



「獣人か。この町では珍しくもない」



えっ!・・・ミヤ、、、驚かれないって知ってたの?



フェンが驚いていると兵士が続ける。



「だが、今の時勢だ。確認させて貰う。」



「神官様を呼んで来い!」



「神官様はその者の中の邪悪を見抜く。」



しばらくするとファリス教の神官服の女性が現れる。




「この者ですか?」



「はい。お願いします。」


・・・丁寧語だ。さっきは『呼んで来い』とか言ってたくせに。



「ファリス神は全てを見通します、、、。」


『すぅーっ』と息を吐き出しミヤに集中しようとして、、



ふと、一瞬フェンと目が合う、、、、そして戻す、、さない!?



「えっ!!」



二度見どころではない。フェンを凝視している。



「えーーーーーーっっ!!!!!」


神官様のものとは思えない大声だった。



そして今度は泣き出した。


「なんで?、、、なんでなのよ?、、、」



いきなり泣き出されてはフェンも門兵達も困ってしまう。


何だか分からないが謝罪した方が良い雰囲気だった。


「あの、、、ごめんなさい。」


フェンが謝る、、、ついでに門兵達まで謝っている。



しばらくして神官様が顔を上げた。キッとした表情で、


「もういい、付いて来なさい。」


フェンも門兵達も言われるがままだった。


「はい」



門兵は出入記録簿に、記入した。


『イーストノエルのフェン、獣人1人、神官様が捕縛、連行』と。






『何処へ連れて行く気だろう?』不安も有ったが、女性一人だ。


いざとなればミヤと一緒に幾らでも逃げられるだろうと大人しくついて行く。



と、小さな礼拝堂で立ち止まり、中を伺い誰も居ないのを確認して入る。


『何で神官様なのに隠れる様に礼拝堂に入らなきゃなんだろう?』


疑問は心に仕舞い込んでおく。また泣かれたら大変だし、、、。




コツコツと床を靴が叩く音だけが響き、教壇の前で振り向く。


いきなり表情が変わり、叫ぶ。


「なんで?・・・なんで生きてるのよーーーー。」


『何でって、、、死んだ覚えも無いんですけど?』


、、、人を勝手に殺すなよっ、ってツッコミを入れたくなる。



「だってあの時、、、勇者様の魔法で、、、」


『??・・・あの時?』・・・あっ!!!


「もしかして・・あの時の神官様、、、なの?」



ガルンで助けた女の娘。ファリス教の神官様。


惨劇を見、自身も襲われ、血と泥で汚れ、泣き震えていた。


余りに汚れていた為、一目では神官様だと気付けなかった。




それが・・・




今度は『綺麗過ぎて』気付かなかったのだ。


顔や髪も綺麗に手入れされ、神官服もシワ、シミの一つも無い。


これで『分かれ』という方がおかしいだろ、と心底思う。


良く見れば背丈も一緒だ。ミヤより少し小さいだろうか。




「はい。ガルンの事、改めてお礼申し上げます。」


「あれれ? 急に丁寧語なの?」


「茶化さないで下さい。」


「でも、どうして生きているのですか?」


「あの跡では・・・勇者ジン様の魔法の後の町の跡には・・・」




「僕もそれが聞きたくて。」


「あと、またお願いが有って君を探しに来たんです。」







あの日、ガルンでの戦いの中、神官様にお願いした事。


『君はここに隠れていて。』


『それとファリス教の神官さんへとしてのお願いがあります。』



そして、、、



「ここで見た事をそのまま、嘘偽り無く皆に伝えて下さい」


・・・と、仰いました。




『さすが神官様だ。一言一句間違いない』、、、なら、なぜ?


神官様が正確に伝えたなら、その後、歪められたという事だ。




「まずは神官様が僕と別れた後、見た事を最初から教えて下さい。」


・・・その中に爺ちゃんの手掛かりが有る事を期待して。








「ミヤの出番が少ないにゃ!」

 「いいじゃない、私なんて、私なんて、、、」

 「これだけ出ても名無しなんだから(泣)」

「ごめんなさい、神官様、、、あっ」

 「・・・もぅ(怒)!!!」

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