表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/47

第22話 8月13日-  黒と青

どうもこんにちは。

第22話です。

どうぞよろしくお願いします。

 真夜中の公園、一人の男がいた。白、一見そう見える青白い装束。その色は街灯に照らされ闇に浮かび、亡霊を思わせる。


 周囲には狼の群れ。数多の翼の生えた狼を拳と足で蹴散らしていた。

 生身でマルコシアスの分身体を相手するのは色の騎士団、臨時メンバーの青騎士、本殿橋獅子ほんでんばししし


 獅子の妖怪、唐獅子からじしは別行動だ。

 単に効率の問題から分かれて分身体の撃破に当たっている。

 もう一人の当番、黒騎士はホテルの上層階からの魔法で対処している。

 

 分身体との生身での戦闘は、いい肩慣らしになる。

 分身体をすべて屠ったとき、ネコ科特有の喉を鳴らす音が聞こえた。


「戻ったか唐獅子」

「こやつら喰っても消えてしまう」

「確かに、喰ってもなんにもならないのな」

「わしがただ働きとは世も末よの」

「前にでっかいタコを喰わせたのな。我慢してほしい」

「でかいだけで不味まずかったわ」


 唐獅子はいつも文句ばかりだ。そのことに獅子は慣れっこだった。


「喋るライオンってすごい」

「妖怪には珍しくないのな」


 無邪気な調子で言いながら現れたのは黒騎士だった。金色の髪が夜風に撫でられ揺れている。


「確かに悪魔もしゃべるわね……。それにしても大きいライオン」


 結構違うところもあるのだが、西洋文化圏では唐獅子はライオンに見えるらしい。そもそも唐獅子は向こうに存在しないのだろう。


 四ツ橋(よつはし)四死使師ししししは日本が拠点なのに対し、色の騎士団と学院は海外が本拠地だ。


 黒騎士は猛獣を恐れないのか軽い足取りで唐獅子へ近づく。


「なんだこの小娘が今宵こよいの食事か」


 唐獅子が発した言葉に黒騎士は足を止める。


「細くてまずそうだ」


 獅子は黒騎士の魔力が上がるのを感じた。


「青騎士。この獣に私を食べないよう。教えておいてくれるかしら」


 嫌に丁寧な口調で黒騎士は言った。笑顔だが眉毛の辺りが細かく動いている。


「わかったのな。唐獅子、お前は人を食べないのにそんな冗談はやめるのな」

「むう、このおなごかわいらしいが怖いぞ、獅子」

「まあいいや。今日は終わりだよ。青騎士」


 唐獅子のかわいらしいという言葉に機嫌が持ち直したのか黒騎士は魔力を潜めた。その後に怖いと言っていたがそこは気にしなかったらしい。


「わかったのな」

「いい加減分身の相手も飽きたわ」


 大きくあくびをして黒騎士は言った。


「確かに弱すぎるのな。これでお金をもらっているのが申し訳ないのな」

「そう言っても、値下げする気はないんでしょ」


 獅子は鳥居と同じく、四ツ橋を破門された身である。

 鳥居が会社に属しているのに対し、獅子はフリーランスで妖怪退治を行っている。今は悪魔退治だが。


「ないのな」

「そうでしょ。それにしても他の勢力と共闘だなんて、一人法師との戦争を思い出すわ」


 一人法師が現れ、最終的に四勢力が五勢力となった出来事。

 

「その時は確か……君はいなかったのな」

「話に聞いただけ。四勢力がみんな手を組んで戦ったなんて、おとぎ話みたいで信じられない」

「俺は破門の身なのな」


 獅子は四ツ橋を破門された身。他勢力と連携するにはちょうどいい立ち位置にいる。


「まあいいけど、おかげで今回も無事に仕事を終えられそう」

「油断大敵なのな」

「油断タイヤキ?」


 時折、外国人であることを忘れてしまうレベルで日本語を操る騎士団メンバーだが、ことわざや慣用句、四字熟語には弱いらしい。

 ――というかたい焼きは知っているのか。


「油断すると怪我するってことなのな」

「Don't get overconfident.――そういう意味でしょ?」


 そんな意味の言葉があるみたいだった。余り英語に明るくないので聞き取ることができなかった青騎士だった。


「そういうことだから気を付けるのな」

「そんなこと言ってあなた何体倒したの? 私十二体」


 黒騎士はすこしむくれたように言った。


「俺は五体なのな。数を競うなんて子供みたいなのな」

「こ、子供みたい!? そんなこと言うなんて信じられない! 私これでもお酒飲めるんだけど」


 黒騎士の逆鱗に触れたらしくまくしたててくる。本人は、百七十センチを少し下回る身長を度外視し、その幼げな顔のつくりを気にしているらしい。


 その様子は年の離れたきょうだい喧嘩のようだった。


「わしは十五匹ぞ!」


 お構いなしに割って入ったのは唐獅子だった。

 自分よりも子供っぽい存在が現れたためか黒騎士も一気に落ち着いた。


「ねえ」

「ああ」

「?」


 黒騎士の呼びかけに青騎士は何か察したようだった。


「今日、多くない?」

「……唐獅子、嘘は言っていないのな?」

「インドライオン嘘吐かない」


 確かに嘘ではない。本人(本獅子?)は気が付いていないが嘘を吐くと尻尾の動きが変わる。それがなかった。


「やはり多いのな」

「ってことはそろそろ?」

「かもしれないのな」


 召喚士。その動きが活発になりつつあった。予知されたあの瞬間が近づいていることを確かに二人は感じた。

今回もお読みいただきありがとうございます。

感想をいただけると励みになりますのでよろしくお願いします。

次回、風名、翼を持つ獣と相対す。

「第23話 8月17日-1 風と獣」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ