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第35話 辺境伯会議の公開照合

辺境伯会議は、春の空気に似合わず冷えた大広間で開かれた。


 北部諸侯、王都監査院、民政院の書記、銀鉱町の代表者たち。中央の長机には私がまとめた証拠束と、ベアトリクスが持ち込んだ羊皮紙の家系図が並ぶ。


 議長席へ着いたアグネスが告げた。


「本日の争点は三つ。仮相続権の妥当性、国勢調査人数の正確性、そして婚姻・養子縁組記録焼失後の代替証拠の有効性」


 私は最初に、ハンナとエーミールの件から入った。婚姻献金簿、席次札、立会証言、賃金帳、扶養加算、学用品札、母印帳。別々の場所に残った記録を、時系列で一本の線に結ぶ。


「原本は焼けました。しかし生活は焼けていません。だから記録も残っています」


 続いて、四十八名の学齢児童削除一覧を示す。外された全員が、ベアトリクスの『暫定整理対象世帯』と重なっていた。


「そしてこの整理が通れば、浮くはずだった街道整備費は西方マルシュ伯家の申請額とちょうど一致します」


 広間のざわめきが大きくなる。マルシュ伯の代理人が青ざめた。


「憶測です!」


「憶測なら、なぜ国勢調査前に木材仮払証が出ていたのですか」


 私はルードルフから押収した帳票を出した。


「まだ人数も確定していない補助金を、誰が前借りするつもりだったのでしょう」


 ベアトリクスが扇を閉じる。


「わたくしの家系図には何の問題もありませんわ」


「では、そこを次に」


 私は深く息を吸った。ここからが本番だった。彼女の『高貴な血筋』そのものが、継ぎ足された偽物であることを示す。


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