第28話 学舎補助金の人数差
夜、私は巡回窓口で集めた補助証拠を数えながら、春の学舎補助金一覧を開いた。
ノルトハイム全域の学齢児童は、本来なら四百二十六名。そのはずが王都へ送られた仮集計では三百七十八名しかいない。
「四十八人」
私は数字を口にした。
「削られた人数です。しかも全員、未亡人世帯、継子、養子、流入鉱夫の子どもに偏っている」
ヘルガが横から別表を差し出す。
「街道整備費も同じです。世帯数が一定以下だと、北門から銀鉱町へ繋ぐ舗装費が半分になります」
つまり狙いは二つ。子どもを数から外して学舎を痩せさせ、世帯を減らして街道費を削る。浮いた金と管理権を、誰かが飲み込むつもりなのだ。
私は外された子どもたちの名簿を読んだ。十二歳の織工見習い、十歳の鉱夫遺児、七歳の養女、十三歳のエーミール。皆、生きているのに数字だけ死んだことにされている。
「教育費まで削るなんて」
珍しくヘルガが怒りを露わにした。
「大人の相続争いで、子どもの机を減らすんですか」
「減らした先で、『辺境には学ぶ子が少ない』とでも言うのでしょう」
その時、ディーターが新しい報告を持ち込む。銀鉱町の倉庫で、ルードルフが学校用木材の仮払証を持っていたという。まだ工事も始まっていないのに、補助金の前借りだけは済ませている。
「早いですね」
私は書類を受け取った。
「まだ私たちの人数が確定していないのに、もう削った後の金を動かしている」
クラウスが机の縁へ手を置く。
「辺境伯会議まで待たせるか」
「待たせます」
私ははっきり答えた。
「焦っているのは相手です。だからこちらは、数を一人ずつ生き返らせてから叩く」
四十八人の子どもは、補助金の数字ではない。未来そのものだ。ここで削らせるわけにはいかなかった。




