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第18話 聖女候補の寄付台帳

 オスカーの追及が始まると、セラフィナは涙を武器にしようとした。


「わたくしは貧しい方々を救いたかっただけです。慈善会の事務は部下に任せていて……」


「でしたら、あなたの署名の入った寄付台帳をご覧になりますか」


 私は白曜慈善会の帳簿を開いた。寄付の受領日、救恤金の不足額、王都財務局の補填金。その三つが同じ日に並んでいる。しかも振込先の中継口座は、セラフィナ個人の後援費口座だ。


「こちらが教会写しです」


 レオン神父と産婆グレータにも証言してもらった。セラフィナがベルン家の血ではなく、慈善会の後ろ盾によって“聖女候補”へ仕立てられた過程が明らかになる。


「そんな古い記録、偽物かもしれませんわ!」


 セラフィナが叫ぶ。


「偽物の補正頁を使って私を告発した人の台詞とは思えませんね」


 私が返すと、広間に乾いた笑いが走った。


 聖務院の監督官が立ち上がる。


「白曜慈善会は本日付で調査対象とする。セラフィナ・ベルンの聖女候補資格も停止」


 セラフィナの膝が崩れた。オスカーは隣を見ようともせず、ただ顔を青くしている。


 数分後、私への処分撤回と名誉回復が正式に読み上げられた。偽物令嬢の烙印は、ようやく剥がれ落ちる。


 けれど私が感じたのは勝利感より、長く止めていた息をやっと吐けた安堵だった。


 記録は残る。だからこそ、嘘もまた残る。残った嘘を消すのが、私の仕事だった。


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