第17話 偽令嬢を作った署名
王都監査会の大広間は、以前私が糾弾された閲覧室よりずっと静かだった。
静かな場ほど、書類の音が響く。
私はまず、偽造出生証と本物の補正頁を並べた。
「ご覧ください。封蝋の欠け方が逆です。さらにこちらの署名は、死亡後の日付で使われています」
次に、オスカー名義の閲覧請求票を提示する。
「三日前、私の補正頁だけが抜き出されました。請求者はフェルナー監査官」
オスカーが立ち上がった。
「必要な照会だった。違法ではない」
「抜き出した頁を私的に隠した時点で違法です」
私は続けて、ブルーノの自白書と、彼の部屋から出た指示書を出した。そこには『補正頁と教会写しを処分せよ』とある。筆跡鑑定済み。オスカーのものだ。
広間がざわめいた。セラフィナの顔から血の気が引く。
「リーゼロッテ・ヴァルターの認知と家名継承は、当時の制度に照らして完全に合法です。偽っていたのは私ではなく、私を偽物に仕立てた側でした」
王都戸籍局長が額の汗を拭った。
「では、先日の職務停止処分は……」
「偽造証憑に基づく不当処分です」
私は一言ずつ置くように告げた。
オスカーが何か言い返そうとしたが、監査会長に制された。
「フェルナー監査官。まずは自らの署名について説明しなさい」
彼は初めて、私ではなく足元を見た。
それで十分だった。私はもう、彼の顔色ひとつで自分の価値を測る女ではない。




