第12話 雪村に眠る出生証
証拠の最後の穴を埋めるため、私は北端の雪村へ向かった。
王都から離れた山間の小さな教会には、中央の火災から逃れた写し簿が残っているとヘルガが教えてくれたのだ。
案内してくれたのは神父レオン、三十一歳。証言人になってもらうには若いが、記録管理は真面目だった。さらに彼は村に住む元産婆グレータを呼んでくれた。五十四歳、記憶も声もはっきりしている。
「セラフィナ・ベルン?」
グレータは鼻を鳴らした。
「あの娘はベルン家の血じゃないよ。昔はミナって呼ばれてた。会計監督官の妹がこっそり産んで、この村で預けてた」
教会の写し簿を開くと、確かに『ミナ・エルベルト』の名があった。後年、余白に別筆で『ベルン家養女候補』と書き足されている。しかも追記の日付は、慈善会が急に力を持ち始めた時期と一致していた。
「こちらも見てください」
レオンが別の冊子を差し出した。そこには私の母と父が正式に婚姻登録を終えた後、私の認知と家名継承が受理された写しが残っていた。王都の補正頁と同内容、本物の裏取りだ。
「これで二つ揃いましたね」
私は深く息を吐いた。自分の正しさを証明するために、ここまで遠くへ来なければならなかったのは皮肉だ。でも、もう言い逃れはさせない。
帰りの馬車で、クラウスが言った。
「君は怒っている時ほど冷静だな」
「怒鳴るより、頁をめくる方が早いので」
「なら私は、君が頁をめくる間の盾になる」
その言葉は、冬の残り雪より静かに胸へ積もった。




