表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歴史の陰 無口が世界で愛されるのには理由がある  作者: かづ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/59

1.7

次の日は最終日という事もあり、午前中は社交はあったようだが、私は出ず、午後の最後の晩餐を兼ねたダンスパーティーに出席するように言われている。


ダンスは習ってはいるもののこんな小さな子を誘う変態はいない。

暇ではあったが、これも私の役目である。

誰から見られても、問題ないようにだけ心掛けた。

1か所にとどまっていると目立つので、色々徘徊して回ることにしていた。

すると先日の話を噂している人たちがチラホラいた。


ただ内容は領主に不満を漏らしている訳ではなく、連れてきたガトーの父である、バース叔父様が今後立場が悪くなりそうだという内容のモノが多いと感じた。


その為か、ガトーとジンも元気がない。

二人と話しているアントニオはどうにか励ましている様子だが、上手くいっていない感じだ。

そして当人のバース叔父様ご夫妻は項垂れ、椅子に座っていて誰も近寄らない空間ができていた。


そして会が進み、閉会の時間になり、最後に当主のお爺様から挨拶というか今後の方針の発表がされた。

「皆、今年ももう終わる。来年に向けた英気を養えてくれていれば嬉しく思う。そして今回の会で色々話した結果、今どうしても伝えておきたいことがある。・・・それは我々はこの領地を守る存在であるという事だ。決して我がもののように扱う立場ではない。他の国ではどうだか知らんが、我らの土地は誰のものでもない。誰のモノでもなくても治めている。これは人間同士の枠組みであり、先祖から託されたことであり、神の願いだ。それが誠だから今がある。今までから逸脱した場合、どこに神の怒りがあるか分からんと思え。だから今一度肝に銘じてほしい。我らの歴史は未来永劫守護する存在としてここにあるのだと」

高らかに宣言された言葉は、自分たちの名誉や誇り、プライドをはっきりと示してくれた。

そして次の言葉を出す前にお爺様が、目頭を押さえ、息を整え、感情を抑えていることが伝わる。

「このことを破るものには罰を与えねばならん。・・・・だから我が息子バースはこの度この禁を破ってしまった。よって、バースを・・・バースを今日をもって追放処分とする。・・・・そしてわしも今日を持って当主の座を離れ、蟄居する。今まで、皆、よく尽くしてくれた。・・・本当にありがとう。その皆に、信頼に・・・・・・・本当に申し訳ない!・・・・・全てわしの不徳の致すところだ。・・・次の当主は長男のクレートに引き継ぐ。以上」

場がシーンとなり、お爺様が壇上から退くと少しずつざわめきが大きくなっていく。


誰もがそこまで大事になる話だとおもっていなかったのだろう。

しかし、もうすでにみんなの前で宣言をしてしまった。

皆思う事があるのか、自分のことのように悔み、涙を流すものもいる。


諫めることができなかった。

叔父さんを止めることができなった。

当主を支えることができなかった。

そんな不甲斐なさがザワザワと会場を満たしていた。


そしてその夜、親族会議が開かれた。


そこにはいつも仕えてくれている執事や侍女、使用人も揃っていた。

そして一族全員がテーブルに着き、扉が閉められたことを確認すると、お爺様より話が始まる。

「先程伝えた通り、わしは当主を降り引きこもる。クレート少し早くなったが、後は頼む」

「はい」

すんなりお父様が返事をした。

状況の変化についていけていないのは孫の兄たちと私だけで、他はこの状況に早くも適応している感じがした。

「今後、情勢が変わったと聞いた連中が何か動いてくることがあるやもしれん。警戒は怠るな」

「心得ております」

「うむ。皆も聞いてほしい。わしが抜けたとしても、ここにいる皆でこの領地を支え、守っていくことを誓ってほしい。550代以上続くのは王家を除けば、他にない。それだけ多くのご先祖が守り繋いだのだ。お前たちにもきっとできる。様々な苦難が襲ってきたとしても、ここにいる皆であれば乗り越えられると信じておる。頼んだぞ」

「「はい」」

全員の声が揃うほど皆の覚悟が決まっていた。

ゆっくりと皆の顔を一人ひとり吟味するかのように見て、いったん目をつむる。

「よし!話は以上だ。少し孫たちと話がしたい。他は外してくれ」


皆が退席していく中、孫たちはお爺様の傍に席を変えた。

部屋には孫6人とお爺様、お婆様だけになる。

「お前たちには急な話になって済まないと思って居る。まだ飲み込めないと思う者もいるみたいだな。だがな、我ら貴族は決断を早くせねばならん。そして秩序を守る為であれば、全てを飲み込む器を作る必要がある。どうしようかと迷うようであれば、それは平民と変わらん。嫌だからやめよう、怖いから様子を見ようと思うのは、それは断じて貴族ではない!我ら貴族は必ず先頭に立ち、前に進まねばならん!だから常に覚悟を持ちなさい。覚悟を持って行動を取りなさい。なに、本気で突き進めば必ず道は開けるのだ。人生とはそうなっとる。大事なことは言い訳せず、覚悟を持って行動を示し続けることだ。必ずお前たちにもできる。周りも我らについてくる。わしにできてお前たちにできないことなどない!親を手伝い、支え、このバーンベルク家を守ってくれ。頼んだぞ」

そしてそれを聞いているうちにエミリヤをはじめ泣き始めた。

「レオナルド、お前はまだ覚悟が足りん。行動に責任が足りん。そして何より、家の誇りが分かっていない。勉強で分かることもあるだろうが、生き方を考えろ。死に方を考えろ。人を見てその生き方を感じなさい。難しいことだが、お前が欠かせない人間になるためには絶対に必要なことだ」

「アントニオ。お前はレオナルドと違う意味で覚悟が足りん。そして人に優しすぎる。お前のいいところではあるが、弱点でもある。周りの目ばかりを気にしすぎて己のことを蔑ろにする。先頭に立って行動できるように心掛けなさい。自主性、独立自尊。そういうモノを常に意識しなさい」

「ガトー、ジンお前たちはこれから己の誠を信じて貫き通すことだけを考えなさい。バーンベルク家の為に尽くすことだけを考えなさい。脇目を振らず、ただ真っ直ぐにそれだけを常に心に持ちなさい、お前たちなら必ずできる。つらく当たる人間は多くは無いと思うが、それでもいるだろう。済まない。わしの責任だ。だが、前を向いて突き進んでほしい。勝手だが、お前たちの境遇は必ず良くなる、信じてほしい」

「エミリヤ、済まない。・・・泣かないでおくれ。お前の嫁入りを手伝うことができないのが寂しいよ。お前はもうすでにどこに出しても恥ずかしくない立派な令嬢だというのに。・・・・・・・ハハ、いかんな、どうも女性には上手く言葉が出ん。・・・・お前も貴族の誇りを、貴族とは何かを胸の中で葛藤を続けなさい。・・・お前には当たり前かもしれんがな」

「ステファンはお前が賢いことは分かる。あまり喋らないのもその一環かもしれんが、・・・沈黙は確かに重要だがな、無口ではだめだ。それでは誰も付いてこない。お前は沈黙で培ったものを与えてあげる側になりなさい。己の身だけ捧げるだけでなく、お前の知識や考え相手の為に捧げなさい。これはアントニオにも言えるが、対話をしなさい。流されたり、合わせるのではない。対話だ。相手に嫌われることを良しとし、自分と考えの合う、近いモノを持っている人を惹きつける。そういう者を集めることは楽ではないが、重要だ。黙っているだけでは、いつか軽視され、忘れられてしまうぞ。いいな。前に出ろ。怖がるな。そんなことよりも大切なものを追い求めなさい」

「言葉がいくらあっても足りないほど、皆に伝えたいことはあるが、ここで終わりにしよう。これからも各自励んでくれ」

そこに私が空気を読まず、声をかける。

「お爺様のご本書いて。読むから」

「本?あ、ああ、そうか、歴代の当主の本があったな。はは、忘れておったわ。よくぞ教えてくれた。ありがとう。これから時間は十分あるらな。できたら届けさせよう」



そして「では行こう」と言ってお婆様に手を差し出し、優しく手を重ねエスコートして出て行った。

その後ろ姿はまるでピクニックに行くかのような軽やかさで、今まで見た中で一番気品のある幸せそうな二人の姿だった。


それからお爺様とお婆様は離れに移り住むことになった。




最後まで読んでくださり、誠にありがとうございます。

大変うれしく思います。

読者の皆様のご健勝とご幸多をお祈り申し上げます。


もしよろしければ、評価やブックマークをつけていただけると大変ありがたいです。

どうぞよろしくお願い申し上げます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ