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歴史の陰 無口が世界で愛されるのには理由がある  作者: かづ


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信じる力②


バン!、バン!バン!と遠くで花火を打ち上げた音が聞こえた。


今日が夏祭りの初日だ。

それから一週間続くのが夏祭り期間である。


公爵邸は丘の上で、街から少し距離があるから街の熱気というか盛り上がりを本来ゆったりした気分で眺めることができる。

初夏の雰囲気を感じさせる青い空に遠くに白い雲が漂い、街の陽気を後押ししている感じがした。


しかし私は、あの花火の音が激しくドアをノックするような、急き立てられている音のように感じていた。


やった方が良いことと、やりたくないという自我の狭間(はざま)で一人で引き裂かれそうになっていた。

自分で決めたことに自分で嫌になっているなんて、先日の娼婦と同じようだ。ああゆう人が私の前に現れたのも、今この状況になる前触れというか、自分が放ったものは全てブーメランのように自分に返ってくるというか、そういうジンクスめいたものを感じずにはいられなかった。


他人をどうだとか評価するのは本当に良くない。勿論自分にとって。


そしてこれだけ十分自分を理解できれば、後は決心して動くだけだとも言える。

幸い、時間が進めば否応がなく始まってしまう。その前にしっかり決心をすることが私流開運術だ。

惰性や()(くず)し的に動く事では周囲と波長が合わないことがある。だから行動には決心をすることが大切である。

決心して行動すると周りが私の味方になってくれる気がするのだ。

私はこれをしますという波動を出すと周囲もそれに引き合うモノが現れる感覚になる。そんな感覚分かるかな?


こんなギリギリまで右往左往して不安に駆られていたのだから、私もまだまだ未熟ってことね。


謙虚に目の前のことに当たろうと心に決め、部屋の扉を開け歩を進めた。


今日の予定は、馬車でパレードをしながら、街の中央にあるこの日の為に作られた特設ステージに上がり、公爵が祭りの開会の挨拶をするのを公爵家の一員としてロレンス、お義母様、ジュリアと共に見守ることになっている。

話を聞くとジュリアは数年前から毎年参加しているようだ。それが税金で生きている貴族の義務だともいえるのだが、ジュリアも最初は大勢の人の眼にひるんでしまいましたと言っていた。


私も初めて登壇したあの冬のお披露目会は緊張したが、今回は平民も含めて数の上ではより大勢の人が見ていることになる。

だが人数こそ多いが、野外という事もあるし、祭りの準備なども含めて色々な雑音もあるだろう。きっとあの時のような水を打ったような静まり返った雰囲気とは違う、これからの祭りに期待したフワフワとした空気に違いない。民衆も祭りを楽しみたいのであって、公爵の話を聞きたいと思っている来ている人は少ないだろうから、そこは気にしなくても大丈夫だろう。


私も今までそれなりの状況でそれなりの責任と生きるか死ぬかの橋を渡ってきた。

私の場合は積極的に死ぬかもしれない限界への挑戦をしていただけかもしれないが、この体はそれに応えてくれて今に至っている。

だから今回も死んでも構わないと自分を預けて行動をするだけだ。


そんな事を思いながら馬車に揺られて公爵邸を後にした。


パレードは二台の馬車に別れて行われる。

私やロレンス、ジュリアを乗せた二頭立ての馬車が先行し、後から四頭立ての馬車が公爵夫妻を乗せてゆっくりと進む。

勿論、周りや先導には騎士団が配備されてはいるが、沿道には多くの人が犇めき合ってこのパレードを喜んでいるのが見えた。

皆手を振り歓声を持って迎えてくれている。


これを私たちは媚びへつらうでもなく、見下すのでもなく、毅然とだけど親しみを込めた表情で受け止めなければならない。

ただの笑顔では笑い過ぎと言われ、表情が強張ると固すぎると怒られる。これができるようになることが貴族の人間に求められている。

貴族は品性や性格だけでなく、外面も含めて厳しいマナーが存在するのだ。税金で生きるというのは、求められて当たり前の水準が高いことを意味する。厳しい目の人も納得させる必要があるのだから。


馬車から降りて、特設ステージに登壇する時には拍手をもって迎えられ、歓声も聞こえてきた。

街の皆からはロレンスの人気が高いことがうかがえた。黄色い感性でロレンスを呼んでいる声が聞こえた。

これに応えるためロレンスは笑顔を振りまいている。


そして全員が壇上に姿を現し、用意された席へと案内され、進行の役の人が公爵に挨拶をお願いした。


「ログレス領の皆、今年もこの時期が来た。皆が待ち詫びているイベントの一つといえるだろう」

野外で公爵は地声で話している。ゆっくりと丁寧に短めな言葉であった。

公爵が皆に呼びかけると、歓声と拍手、指笛でレスポンスがある。

公爵が手を挙げるとそれが納まるのを見ると、この領の人たちの鍛えられた主従関係を感じる一方、性格が陽気なのだろうと見て取れた。


ここはあらゆることがバーンベルク領と違う事に驚く。

バーンベルク領だったら、こんな集まりがあったとしても皆静かに規律正しく厳かにかみしめるように話を聞くだろうに。


「今年は皆に伝えておきたいことがある、それは息子ロレンスの婚約者がこの領に来ていることだ。こちらへ」

そういわれたので、後ろの椅子に座って待機していた場所から立ち上がって公爵の隣へと向かった。

「こちらが、婚約者のステファン・バーンベルク様だ」

私がカーテンシーのポーズを取って、顔を上げた時、最初観客が「え」という顔で驚き静まり返っていたが、ザワザワとしながらも大きな拍手で迎えてもらえた。


そして再度公爵が手を挙げて場を鎮めたのを確認すると私は席に戻る為に後ろを向いたその時に、北の空に光り輝くものを発見した。


え?何か飛んでいる?


頭は混乱しながらも、異常な現象を伝える為、隣にいた公爵の袖を引き、指を指す。

「閣下、アレ!」

何があったと私を見てからの指の指し示すものを確認すると公爵も思わず驚きと共に声が出た。

「な、なんだ、あれは!」


私も見たことがない、発光物体が空に浮いている。しかもそれはオレンジ、赤、黒、黄色、白と色々な色に変わりながら、こちらに向かっているように見えた。

会場の参加者も公爵の反応で皆が指さし、驚き、騒然としてきた。


それは見間違いではないようで、会場に向かってきている。しかもかなりの早さの様で、公爵や私たちを守るために騎士たちが壇上に上がってくる頃にはそれが大きな人型をしていることまで分かった。全身発光していて一般男性より倍以上ある様に見えた。


近くで見ると不思議と眩しいという感覚にはならず、ただ明るいと思う程度であったが、それが50メートルほど手前の上空で停止し、声が聞こえて来た。

「やあ、人間!ずいぶん増えたね。私は精霊のテオだよ」とどこか少年に感じる声で挨拶され「君たちに神からの言葉を伝えるね」と言っている。

その精霊の声は音声ではなく、頭に直接入ってくるテレパシーだった。


しかし、民衆が大騒ぎをし、騎士団の班長がそれぞれ大声で号令をかけていることもあり、聞こえていても頭に入ってこない。


それでも構わず話を続ける。

「神はね、失敗したと思っているんだ。人間を生み出したのは間違いだと気づいたんだよ。だから滅亡させてもいいと言ってくれた。だけど、それじゃ色々困ることもあるから、一部は残しても良いと思っているんだ。そこで、精霊を信仰してくれている人だけは助けようと思っているんだけど、君たちはどうする?」

テレパシーだから言っていることは分かるし、聞き間違いもない。意見のすれ違いや、ニュアンスが間違っているという事もない。

本当にこの精霊がそう思い、そう考えこっちに意見を聞いていることになる。


だけど言っていることがかなりおかしなことを言っていると思える。

「精霊のテオよ!なぜ、君が信仰している神ではなく、君たち精霊を信仰する者だけを助けようとするのだ!」

だれもが、先程の話を聞いて変だと感じるところを直接言葉にしたのはロレンスだった。

「それはね、私に尽くしてくれるのであれば生きる価値があるけど、そうでないのであれば不要だからさ。神に見捨てられたものを私が活用しようと思っているだけだからね」

「それでは、君は神の言葉に反発することになると思うが、それは許されているのか?」

「大丈夫さ。君たちと違って、神様は私を好いてくれているからね」


精霊のテオは自信満々に感じる淀みのない受け答えをしてロレンスを怯ませた。


最後まで読んでくださり、誠にありがとうございます。

大変うれしく思います。

読者の皆様が幸多からんことをお祈り申し上げます。


間が空いてしまってすいません。

言い訳をすれば、他のやることが多かったというのもありますが、集中して書けなかったです。

話の流れもプロットからズレ始めているので、「これ上手く着地するかな」と思いながら書いています。

それを楽しんで書き進めますので、読んでくれている猛者の皆様に置かれましては、少し気長に見ていただければと願っています。

今後とも宜しくお願い致します。


面白ければ、評価やブックマークをつけていただけると大変ありがたいです。

どうぞよろしくお願い申し上げます。

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