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歴史の陰 無口が世界で愛されるのには理由がある  作者: かづ


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人生に自由がない⑤


私の中でカテゴリー分けが成された。


ジュリア、こいつは敵だ。


6歳も7歳も離れた、見た目も小さな子供ではあるが、こいつは本当に私の邪魔ばかりしてくる敵である。

正直兄妹とか言われても、腹違いという事もあり、記憶も含め親近感はそこまで感じていない。


だから敵認定をしても全く心は痛まなかった。


まあ、敵といっても直接手を下すようなことは無いが、ただ仲良くはならない気がした。


「ハハハ、ジュリアはなんでそんなに宝石が好きなんだい?」

「それは・・・・」

「ジュリア様も女性ですから、自分を美しく着飾ることで、皆さんの気を引きたいのでしょう」

「そ、そういう事です!」


なんだかキャロルの助け舟に全力で乗っかろうとしている様子が滑稽に見えるが、さして欲しい訳ではなく、ただ気を引きたいという事だろう。それなら分かる。


だが、父上の気を引こうなどお前には百年早い!


そう叱り飛ばしたいのだが、ジュリアとの時間を取る時だけ、父上はこうやって公爵ではない父親に戻ってくれるという事実が今回初めて分かったのだ。

だからこの時間が無くなるようなことを口にして、自分で自分の首を絞めるような真似はしたくない。できうることならば、もっと増やしたいくらいだが、ジュリアに沢山会うというどうでもいい事を考えると、そのバランスを考えねばなるまい。


「お前のような小娘が着飾るなど烏滸がましい!」という言葉が口から出そうになるのを寸前のところで呑み込み、「確かにその簡素な服であれば、着飾る物があれば特別に映えそうだな。顔よりも目を引くとだろう」と言っておく。


その言葉の意味が分からないのかジュリアは全く動じることはなかったが、父上とキャロルは顔を歪めた。


「確かにジュリアの身形は少し簡素過ぎるな。今度商会を呼んで服を作らせよう。体も成長するんだから以前の服は合わなくなったのかもしれんな」

「そうなんです、これからまた成長期が来ますからね。大変なのですよ。おほほほ」

なんだかんだでジュリアの意見を叶える形になったが、このままでは自分と父上との時間ができるとは限らない。

「私の妹でもあるのだからな。私からもプレゼントしよう。父上、商人を呼んだときは私も見た立ててやりたいと思います。ですから日程が決まりましたら教えてください」

私のこの反応に父上は大変喜んで下さった。

「おお、そうか。妹として接してくれるのは嬉しいぞ。女性に贈るプレゼント選びを勉強するのも悪くない。経験は積んでおくといつか必ず役に立つものだ。こういうところで練習しておくのもいいだろう。しっかり見立てられるようになっておきなさい」

「はい、父上」

計画通り。これで、次につなげることができた。


しばらくすると父上から商会がやってくる日程が決まった。


この日は商人を自宅に招くという事になるので、流石に離れに来てもらうというのはよろしくない。

それは商人も公爵に招かれたというのと、公爵家の人間に招かれたでは格というモノが変わるからだ。実際公爵が買い与える訳だから公爵邸に招くというのが筋になる。だからジュリアにとってはおそらく初めての本館へ来館になった。


今までは亡くなった母親、ヴァネッサが作ってくれた服を着ていたそうだ。

ヴァネッサは自分の最後を決めていたのか、多くの物を作っておいたのだそうだが、それでも、何年も先を見越していたとしても、完璧であることは無い。それが現状らしい。


この日は母上も一緒に選ぶことになったので、家族が全員集まる運びとなった。

季節の変わり目を前に丁度良かったというのもあるのだろう。


ジュリアはキャロルを伴ってやってきた。

「本日はお招きありがとうございます」と言ってジュリアがカーテンシーを取った。

挨拶のマナーは十分教育できているようで、しっかりしている。


ふん、まあまあだな。だが足を戻すときに少しグラついた。まだ甘い!


こっちに来た時はジュリアは大人しくしており、採寸を色々終えて、服選びになる。

ここは冬もそこまで寒くならないので、夏用と春秋用があれば事足りる。ただ貴族は季節に合わせてやはり変えるのがマナーである。

デザインや機能がというよりも、季節を感じ、季節を味わい、季節と一体になることこそが貴族であり、優雅であるからだ。


そして、ジュリアは一応貴族として扱われる。


確かに愛人の子には爵位の相続権は無いが、ただそれだけだ。法律上の話でしかない。


貴族界隈では別だとしても、世間一般では公爵の娘として扱われるのだ。

少なくとも季節感を無視した格好など論外といえる。


母上は女の子に服を作ってあげることがなんだか楽しいようで、ウキウキしているように見えた。


あれ、私の場合はこんなことあったかな?


男性の場合はそれほどバリエーションが無いというか、女性ほど色やデザインが変わらないから選んでもそれほど楽しいという訳ではないのだが、なんだか少しだけ寂しさを感じずにはいられなかった。


ジュリアは母上がノリノリな様子に少し引け目を感じているようで遠慮が見える。

節度を守って発言しているようで、この間のような無作法な言動は隠されていた。


もしかして私の時だけ無作法で良いと思っているのではないだろうか。


アクセサリーを選ぶ段になるとキャロルも加わり、意見を出している。

女性は着飾ることにどうしてこんなにも貪欲なのか私にはわからない。何をそんなに楽しいと思えるのだろうか。


私はジュリアに対して何を贈ったらいいか全く考えていなかったが、自分のセンスを疑われるのも癪だししっかりした物をプレゼントとして選びたい。

つまり、相手に合わせる能力を見せながら、使いどころがあまりない物を贈ることが私の目標である。

だから選んだのはキッラキラな宝石が付いたティアラだった。


これは流石にそれ相応のパーティーでもなければ使いどころあるまい。服装もある程度ゴージャスなモノでないとアンバランスになる。だがジュリアの金髪には十分似合う。


フフフ、流石私だ。誰にも文句は言わせない最高のプレゼントだ。


自信満々で「これを贈ろう」と言って見せたのだが、他の家族からは反応はまちまちだった。

父上は大笑いをし、母上は扇子で口元を覆い、キャロルからは賞賛したが、ジュリアからは苦笑いが返ってきた。


「あ、ありがとうございます」

とは言われたが、全く嬉しそうではなかった。


狙い通りではあるが、これはあんまりよくないな。と反省せずにはいられなかった。


贈り物は嬉しいと言われなければ、駄目であるとこの時身をもって知った。

相手を馬鹿にするつもりが、自分がピエロとなって、恥をかいた感じになってしまった。




それからは特に何もなく、平和な毎日が過ぎてゆく。

父上と共に王都に行って、その年の貿易船動向報告を行ってたり、帰ってきて、領内の森を管理したりと、相変わらず後継者勉強と騎士叙任の為の訓練を行っていた。


私にとっては何も変わらない公爵への道を歩き続けていた。

平凡であるだけで、忙しいが型に嵌まった毎日だった。



そんな平和な日が過ぎていたある日、キャロルに暇を出されたという話が聞こえてきた。

暇を出されるとは、解雇通告である。


母上が出したことであるのだが、これはかなり余程のことが無い限り言われることが無い、そういう厳罰的な最終措置であった。

理由までは噂になっていないが、急な事であり、ジュリアはまた精神的に不安定になるのではないだろうかと少し心配した。


父上と訪問した時には新たにメイドが数名いたので、問題なさそうではあるし、ジュリアはあまり不満は漏らさなかった。

それが、以前から見ると、静かに見え、落ち込んでいるのではないかと少し思ったが、父上はジュリアに甘々で可愛がり過ぎているので、私が心配するのはやめようと心に決めた。


ただ少し喜んでほしいと思って、ネックレスなんかを贈ったりして見た。

反応は薄く、何ともプレゼントのし甲斐のなさを感じた。


やはりこいつは可愛げがない。




そして最近になってキャロルに出会った。

彼女が暇を申し渡されてから3年が経っていた。


それは街の方に行った帰りだった。夕暮れ時で、ほとんどの人間が帰り支度や夕飯へと向かおうかとしている時であった。

夕陽が差し込み、全てのモノを赤く照らし、影が長く伸び夜が忍び寄っているように感じる寂しい時間帯だった。


彼女の格好はどこかのメイドのようなお仕着せの制服で、以前に一回入った喫茶店から出てきたようだった。

客を見送ったところだったのだろう。振り返った時に丁度目が合った。


「やあ、キャロルだろ、久しぶりだな」

もう私は父上の仕事についても随分理解が進んでいて、様々な経験もしたことで、逆にキャロルがなぜ暇を出されたかという事実自体知らない事すら忘れて、何の気なしに気安く声を掛けてしまった。


向こうはその気安い声のかけ方にどこか居心地の悪さを感じてか、苦笑いで応じた。

「ご無沙汰しております、ロレンス様」

「最近見ないなと思っていたが、そうか、今はここで働いているのか」

「え、あ、はい、そうでございます」

「最初に話したのもここだったな」

「え?ええ、まあ」

なんだか迷惑そうな感じの態度だったのを見て、『そうか、まだ就業中なのだな』と理解し、話を切り上げることにした。

「悪い、立ち話で長々と。今度こちらにお邪魔しよう。その時にでも少し相手をしてくれ」

「あ、はい、よろしくお願いします」

それじゃあと言って別れた。


たぶん彼女は社交辞令で終わる話だと思っての返しのように思ったが、私は言ったことを違えることはしない。


だから一週間も経たずにあのカフェを訪れた。


その時の彼女は驚きと喜びを見て取れるような素直な反応で、良いことができたと自分でも満足した。




最後まで読んでくださり、誠にありがとうございます。

精鋭の読者のお陰で続けられています。

本当にありがとうございます。


喜怒哀楽の何か感じたら、評価、ブックマークをお願いします。

今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

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