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歴史の陰 無口が世界で愛されるのには理由がある  作者: かづ


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3.15



その日の出来事が一通り済むと離れへと足を運ぶ。

今日は色々面白かったが、やらねばならないことも見えてとても勉強になった。こういう時がとても嬉しいのだ。


できることしかやらない人は成長は無い。分からない事やできないことは伸びしろだ。

確かに未知で、面倒で、遠回しにしたい、断りたいという衝動は湧く。

だがこれが成長のサインだ。変化の兆しだ。チャンスの証でもある。

私はいつもこのサインを心待ちにしているのだ。


とてもやる気に満ちた私が離れへと近づいた時、玄関からメイドが出てきてお出迎えをしてくれた。

「「お帰りなさいませ、お嬢様」」

「ただいま戻りました。変わったことは無かったかしら」


出迎えてくれたマリーが代表して応えてくれる。


「はい。本日の予定通り皆邁進してくれました。ジュリア様も課題を前向きに取り組んでいらっしゃいます」

「そう、順調ね」


全てが良いこと尽くめでうれしくなったが、マリーはどこか落ち着きがない。


「はい。あと、・・・・休憩の時にメイドたちから聞いた話があるのですが、・・・・なんと言ったらいいか」

「?」


マリーが何か言いにくそうにしている姿は珍しい。


この子はいつも何でも率直に行動してくれる。思い切りが良いというか割り切って生きているところが魅力的なのだ。

そんな彼女でもなんと言葉にしたらいいのか迷っているようだ。


「ちょっと!デイジー!あなたから話しなさい」

「うぇ!わ、私ですか!」

「だって、私は見たことありませんから」

「えぇ、私だって、実際に見た訳ではなくて・・・、ねぇ」

「私に振らないでよ!他のメイドたちが話している時に私も聴いた程度なのに」

なんだかやいのやいのと言っているが、噂話を伝えようとしていることだけは分かった。


「いいわ。どんな噂があるの?話なさい」

「えっと、それがですね。ロレンス様についてなんですが、・・・・どうやら街で女性と会っている様なんですよ」

「なるほど」


言いにくそうにしているから、そんな事だろうと思った。

別にダメージは無い。少し舌打ちをしたくなったくらいだ。


「しかも結構いい感じで歩いているところを見たって」

「宝石店から出てくるところを見たって人もいて」


ほ、宝石?あの人女性を飾るのが好きなのかしら?


「カフェに一緒に出入りするところをよく目撃されていますよね」


ロレンス様、カフェ好きだな。どうせ行きつけのアソコね


「そうそう、何度も会っているようで、この間は花屋で買い物しているのを見たって聞きました」


私貰ってない!


「仲の良さを見て、お似合いの二人だって、メイドたちが騒いでいたんです」

「コラ!言い過ぎ」

「あっ、申し訳ございません」


ほぉ、これはクロね。真っ黒だわ。


「いいです、分かりました。ありがとう。また情報が入ったら教えてね」

「「畏まりました」」


おそらく女性と会っているのは間違いない。そしておそらく私が来る前の話だろう。

私が着た後も会っているというのであれば、ちょっと話が変わってくるが、その前という事であれば、許そう。


少し自分の感情が動揺というか不安というか焦りというか、何ともイラっとした怒りというか、色々なことが体を駆け巡っていて、自分を落ち着かせるために、取り敢えず体でも動かしておく。


シュ、シュッシュ


「なぜ、急にシャドーボクシングを?」


ちょっと奇行が過ぎましたね。


「何でもありません。それよりジュリアの所に行きましょう」

「畏まりました」


ジュリアはもうすでに軽い刺繍までできるようになってきている。順調である。


そこでふと思い当たる。


他のメイドたちが見たのは、もしかしたらジュリアだったのではないかしら?


ジュリアは本館の方へはあまり行くことは無い。

ロレンス様とも出かけて、我儘?も言ったと聞く。


もしかしたらメイドたちが騒いでいるのはジュリアなのかもしれない。

でもジュリアだったら、ロレンス様にロリコンの噂があってもいい気がするな。

それにメイドたちが6歳以上下の女の子と一緒にいる姿で『お似合い』と表現するだろうか。


あと、ロレンス様の好みは豊満な肉体の持ち主である。

ジュリアと一緒にいる時に彼は仲睦まじい姿を演じるだろうか。

貴族だし、仮面を被って嬉しそうにするくらいなら朝飯前と言えなくもないが、ジュリア相手にそれをするだろうか。


色々な仮説が頭をめぐるが、判断など着くはずがない。諦めて現実に戻る。


「お疲れ様、ジュリア、ところであなた、ロレンス様と最近どこかへ行きましたか?」


限りなくジュリアではないと分かっていても、確認を怠る言い訳にはならない。

念のために(すが)る様に聞いてみた。


「いえ、特に。どうかされましたか?」

「そうだよね、ごめんなさいね。気にすることはありませんが、どこかへ行ったら報告をしてちょうだいね。別に良いんですけどね。気にしている訳ではないんですが、お願いしますね、うふふ」

「はぁ、分かりました」


いけない、いけない、なんだか変なスイッチが入っている。これが嫉妬と言う奴だろうか。


取り敢えずジュリアには報連相の大切さを説いた後、あんまり無理しないでねと伝え、離れを後にした。


知らなければ、こんな気持ちになることもなかったが、現状のこの感覚はいかんともしがたい。


シュ、シュッシュ、シュ、シュッシュ、シュ、シュッシュ

ワンツー、ワンツー、ワンツー

打つべし、打つべし、打つべし


何度かイメージのロレンスと巨乳美女をぶちのめすと気持ちもすっきりした。


ふぅ。いけないわ。これは淑女の行動ではありませんね。改めましょう。


そんなことを考えるころには本館近くで、レオンとライオネスに出会った。

二人は御者としてログレス領に来て、そのままログレス家の騎士として仕える道を取っている。


私を慕って、付いて着てくれたのだ。

両親や兄たちもそういう人材を探し、騎士の退職を受け入れて、御者にしたのだ。


所謂、隠れ護衛騎士である。

嫁ぐ際はこういう騎士やメイドを送り込むのはこの世界一般的である。決して私だけ特別に溺愛されている訳ではない。多分。


「こっちから殺気を感じたのですが、お嬢、誰かに襲われました?」

「へ⁉いいえ、何もありませんでした」

「そうでしたか、ならいいんですが」

「貿易船の奴らは、結構血の気の多い感じの奴らみたいですから気を付けてくださいね。さっきも街中(まちなか)で揉め事起こして騎士が呼ばれたんですよ。まあ毎年何件かあるみたいですけど、ウチだったら確実に処刑していますね」


まあ、バーンベルクは揉めるだけの命懸けの理由があることが大前提になっているのだから、そうなるだろう。

軽い気持ちで誰かと揉めはしないのだ。死んでも良いと思える大切な事だけである。


だから、揉め事には騎士ではなく、管理者や領主が自ら赴くのだ。

それだけ深刻であり、自分の落ち度でもあるのだと受け入れ、自らが話を聞きに行く。

必要であれば、改正を約束し、我儘であれば、処刑を執行する。

本気で自分の我儘を正しいとしている人は所謂狂信者というモノだから、言葉ではどうしようもないのだ。

それが秩序を守る者の在り方だとしている。


今日断られた人たちが酔っ払って荒れているのかな?

それとも今後商談のある人達かな?そんな不手際を見せる人達な訳がないか。


「もしかしたらお嬢の所に忍び込んだりする輩がいるかもしれませんから、油断しないで下さいよ。大丈夫だと思いますが、もしもの時はアレを・・・」


二人とも心配性だ。だが、言い訳するのは面倒だし、気持ちは素直に受け取り、頷いておく。


「それじゃ、おやすみなさい」


二人と手を振って別れると、なぜかロレンス様が廊下にいた。


「ごきげんよう。どうされたのですか?こんなところで」

「今の二人は・・・何でもない。偶々通りかかっただけだ。それじゃ、おやすみ」

「おやすみなさいませ」


まさかロレンス様も私の殺気を感じて来たの?

そんな何か駄々洩れしてますか?



最後まで読んでくださり、誠にありがとうございます。

大変うれしく思います。

読者の皆様が幸多からんことをお祈り申し上げます。


面白ければ、評価やブックマークをつけていただけると大変ありがたいです。

どうぞよろしくお願い申し上げます。

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