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歴史の陰 無口が世界で愛されるのには理由がある  作者: かづ


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3.11

まあ。彼女たちの行動など私が気にする必要ないんだけどね。


メイドに気を遣う主人などいる訳がない。

そんなモノを気にして行動していては、私の品格が落ちるだけだ。

だから私はやることをやるために中に入っていく。


ドアをノックし、返事がないので、マリーにジュリアを起こし、着替えさせ、私のところに来させるようにお願いする。


「おはよう。ジュリアこれからは時間の配分に気を付けなさい。ガラリと変わるけれど、それは良い変化として受け入れてちょうだい。眠くても、辛くても、しんどくても、全てを乗り越えてついてきなさい。それができれば、あなたは必ず一流になれます。信じてついてきなさい」

「はい!分かりました」


やはりジュリアは真面目で素直だと思う。

(うたが)ったり、迷ったり、そういう葛藤(かっとう)と言われることをしないのは純粋で前向きだからだ。


ロレンスの言う我儘(わがまま)はなんだか違うのではないだろうか。


それから私はまずは文字の書き取りと数字を教えた。

どんなことでも基礎の基礎をモノにできている人の方が強いからだ。

針子の仕事を教えて出来るようになったとしても、それだけでは生活が上手くいかなだろう。

相手と同じくらいの教養がなければ、対等の扱いをされることは無い。当たり前だけど。

だから基礎学力というものを付けておく必要があるのだ。

学びとは適度にできる必要がある。超えると良くないこともあるし、足りてないととても困るものだ。


「これを今日できるようになりなさい。それができるのであれば、今日の過ごし方はあなたの自由にしていいです。勿論この間に寝てもいいですし、食事も、休憩もしていいです。あなたが本当に上達したい、やる気がどれだけあるかを見せて欲しいだけですから。それが、今後のあなたを作ることになります。忘れないでね」

「はい」


うん。やっぱりいい子ね。


長い付き合いの中では気に入らない、合わないというものも出てくるかもしれないが、第一印象から今まで、この子に対して悪いところは見当たらない。完璧な人はいないだろうから、色々な面はあるだろうが、気の張っている今そういうところを見せないように振舞うことを意識出来ているだけで十分「気の利く良い子」という評価を下せる。


そこを後にして、お義母様に言われたことも含めて、彼女たちにも注文を入れておかなければならない。


「あなた名前は?」

「え?私ですか。私はデイジーです」

「ではデイジー、今から全員を玄関前に集めなさい。今後の方針を伝えます」

「え、今はまだ朝の仕事の最中ですから、それは・・・」

「あなた達の仕事は主人の為に仕えることだったはずですが、なぜ他に仕事があるように言うのでしょう?おかしいと思いませんか?」

「はい!申し訳ございません!今呼んでまいります」


何度も言葉を交わさないと動けないメイドはメイドではないと思う。

これはいざとなったら薬を盛ることも考えねばならないかもしれない。


6人全員が私の前に整列する。

名前はそれぞれデイジー、ジーナ、ナンシー、シーラ、ララ、ラウラである。


しりとり?最後のラ攻めは中々ね。まあ、覚えるのはデイジーとララを覚えればなんとなく出るんじゃないかしら。


「おはようございます」

私の笑顔が固まる。

なぜか私の顔を見ているだけで言葉が出ない。

「「・・・」」

仕方がないので私は飛び切りのスマイルでもう一度挨拶をする。

「おはようございます」

「「おはようございます、若奥様」」


言葉を出せるじゃないか!一回でやってほしいものだ。


「挨拶は大切です。覚えておきなさい。知っているとは思いますが、あなた達に正式に挨拶はしていなかったかもしれませんので、念のため。私の名前はステファン・バーンベルクです。あなた達の主人になりました。よろしく。今後のあなた達の仕事については私の隣にいるメイドのマリーが指示を出します。私の言葉だと思って従いなさい。マリーはジュリアの面倒もお願い。基礎だけだから大丈夫でしょう。あなた達は、全員でこの家と庭、そして洗濯物を綺麗にし、主の為になることだけを考えなさい。これだけの人数がいれば、面倒なこともないでしょう。隅々までしても時間が余るかもしれません。余るのであれば、何をしてもかまいません。ですが、メイドであるという事を忘れてはいけません。いいですね」


「「畏まりました」」


全員が了承したことで、私も納得して、マリーを残して本館へと帰る。


これから朝食から始まるお義母様の指導に付き従い、色々学ばせてもらわなければならないのだ。


ロレンスもお義父様に教わることもあれば、騎士と訓練する時間も必要らしい。

王都に行くまでそれほど時間もないようで、ある程度身に付けておかなければならないことは沢山あるらしく何かと忙しくしていた。


お互いやることが山積みなのだから無理に時間を合わせて何かをする必要はないと思っていた。


だからまず今やるべきことを次々にこなしていく。

屋内の整理の仕方、使用人の配置に関すること、屋敷の会計に、出入りの商人たちとの顔合わせ。臣下の貴族の関係やその人柄や近況。

管理の敷地に薬草などの植生についてなどなど。

お茶などの休憩に思える時間も色々話があるので全てを吸収できるようにアンテナを張り続けることが必要になる。

それをガツガツすることなく、優雅にこなしてこそ貴族である。


私はそう教わって育ったので、なるべく人前では優雅に行動するように心がける。


夕食も終わり家族から離れると、私は離れの屋敷へと向かう。


今日のそれぞれの仕事を確認するためだ。


まず中に入ろうとするとマリーが出てきて、挨拶をしてくれる。

「お帰りなさいませ、ステファン様」

「他の人たちは?」

「久しぶりに色々掃除したようで、今は少しだらけていますね。掃除も手際が良くありませんでした。一生懸命なのはわかるのですが、品がありません。まあ、今日は汚いところを一気に綺麗にしようと張り切っていたのもあるかもしれませんが、そういうところも直していただきたいですね」

「そうね。少なくともログレス家のメイドという役割を全うできる人間にしたいわね」

「畏まりました」

「あと、ジュリアの方はどう?」

「はい、彼女はよくやっています。ステフ様の指示を良く分かっているようで、彼女はずっと文字の書き取りや数字を覚えようとしていました。おそらく今日の課題は終えていると思います。ただ、まだ上手にはかけていないようで、美しくはありませんね」

「慣れが必要な分はおいおい上手になるでしょうが、なるべくそれも綺麗にしてあげたいわ。文字には人柄が出ると言いますからね」

「畏まりました。これもログレス家基準でしょうか?」

「できれば、そうと言いたいですが、そればかりに注力することもできません。毎日やらせながらできるだけでいいでしょう。明日から縫物の初歩と計算を教えて、メイドたちには糸を紡ぎ、布を織ることを追加する予定だから。明日朝、メイドたちはまた集めてちょうだい。まだ自分たちは何者か理解していないようだし、それにやりがいだって感じていないのかもしれませんからね」

とある程度話を聞いたところで、今まで気になっていた箇所が綺麗になっているかどうか一応確認する。夜も更けているので正直あまり見えないから、確認は軽くで済ませながら入っていく。


そしてジュリアが勉強している部屋へと入る。

中ではジュリアが何度も文字をなぞりながら書き取りをしていた。

今までやり続けることができるのだからやる気はあるに違いない。それに集中力も素晴らしい。

「ジュリア、今日ことはマリーから聞きました。あなたが如何に目標に向けて頑張れる子なのかは分かりました。この調子で励めば十分良い相手が見つかると思いますよ。でも、調子に乗り過ぎて体調を崩したりしないように。あと、人に認められようと躍起になる必要はありませんからね。あなたの価値は誰にもわからせないという気持ちで臨みなさい。その方が気が楽になりますから」

「誰にもわからせないですか?」

「そう、誰かが認めてくれると、もっと賞賛を欲しがる人もいます。ですが、そんなの貰っても、迷惑なだけなのです。だから誰にも分らせないつもりで臨みない。己の信じる理想の未来を追えばそれでいいのですから。誰に何を言われても気にする必要はありません。今はまだ理解できなくても、そのうちこういう事かと分かる時が来ると思います。だから今は己の心構えとして、誰にも分らせないのだと思うだけで十分ですからね」

「分からないこともありますが、分かりました」

「ふふ、そう、正直でいいですね。それでいいのです。それでは体に気を付けて、ほどほどにね。私は帰りますから。明日はまた別の課題が出てきますからお楽しみに」

「はい。おやすみなさい」

「お休みなさい」


うん。やっぱりいい子じゃないか。誰だ、我儘なんて言っているのは。そいつの性格センサーが腐っているんじゃないか?




最後まで読んでくださり、誠にありがとうございます。

大変うれしく思います。

読者の皆様が幸多からんことをお祈り申し上げます。


面白ければ、評価やブックマークをつけていただけると大変ありがたいです。

どうぞよろしくお願い申し上げます。

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