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歴史の陰 無口が世界で愛されるのには理由がある  作者: かづ


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3.8

未だ夕暮れには時間がある。

そうと決まったらさっさと片づけるのが一番だ。


今まで教えられていないのは、ご義両親としても打ち明けるのは抵抗があるのだと推察できる。

人間心理として隠し通せるものであるのであれば、隠しておきたいと思うのはなんとなくわかる。結局それは叶わないことが多いのだが。

第三者を通じてバレるケース、思わぬことが引き金でバレるケースなど色々だが、大体気まずいことになる。

つまり隠し通せると考えることを希望という名の妄想にすり替え、疚しさや邪な考えを膨らませてしまうだけの結果に至るという事。

隠すことが騙すことになったとしても、決して希望になるなんてことは無いのだ。落ち着いて考えれば分かるだろうに。


だからそれらを待つよりは、私にも関係する話ならば、積極的に関わってしまった方が幾分か良い結果に導けるはずだと思っている。


彼女の家に向かう前に準備として情報を貰った。


ロレンスとの今までの会話だけでは情報が足りない。このままでは勝手な思い込みになることもある。


『慎重に迅速にそして大胆に』


これがモットーの私なのだが、これは時に大変な事態にすることがある。私としては後から大事に変わることだけは避けたい。

今までは両親のもとで何とか隠せて?いたが、ここではまだ守ってくれる絶対的な存在はいない。

味方にするためにもここでの自分の評価を得ることは望ましい。

まあ評価よりも単純に皆が納得いく道を歩める手伝いがしたいのだが。


彼女の名前はジュリア、12歳。

母親を3歳の時に亡くしてしまい、その後は乳母とメイド数人と一緒に離れに住んでいるとのこと。

あまり本館の方には遊びに来ることもなく、離れにいることが多いらしい。

普段は大人しく文句は言わないらしいが、父や自分が会いに行くと様々な事をねだり、我儘を言うらしい。


話を聞く分には、この子は我儘というよりも淋しさをぶつけても良い対象をしっかり考えて行動している気がする。

つまり、頭が良い、計算高いといえる。


普段が大人しいという事を考えるときっとマナーはしっかりできているはず。


これなら十分話し合いでどうにでもできるでしょう。


おそらく私に対しては我儘を言い出すことは無いと思えた。

だって甘えても、駄々を捏ねても、同情してもらえる相手ではないから。


同情とは自分が絶対的な弱者であると固定化させる必要がある。

お義父様やロレンスは爵位を持っていたり、持つことが確定している。

絶対的に強い立場になり、自分は弱者という立ち位置を固定化させることができる。

それに対して、妻という立場は、必ずしも強者とは言えない。自分を弱者として扱ってくれるとは限らない。

だから同情を誘う事は出来ない。ただ同情は受けるという事は、ある意味自虐といえる。


自分を自ら(おとし)める行為は精神的にも、肉体的にも悪く作用することがある。


そんなやり方を誰彼構わずしている人間は一般的に病んでいると言われるのだ。

暗い(わら)いをして己の不幸をいつも語る。


昔の同僚を思い出した。あの子は・・・。まあいいか。


まあ。今回のジュリアは甘えたり、我儘を言う段階だから、病んでるまでは達していないはずだ。



そして、急なアポなし訪問を試みた訳だが、想定が狂った。



離れの家の中は、少し薄汚れていた。


最初は「ん?」と思う程度だったが、至る所にこれはずっと掃除していないなと思えるところがある。


そして我々が来たことに漸く気づいた使用人が、とんでもない奇声を上げてた。

「ぎゃあああああ」


え?何か憑いてますか?



離れの屋敷はそれほど広くない。

庭の一角に建てられているが、日本に住んでいた記憶のある私としては豪邸といえる一軒家に見えた。

だから普通中に入れば誰かが気づくのだが、中々出てこない。

こちらも別に泥棒でもないので、いないのならいないで仕方ないと思い、中を検める。


寝室は流石にどうかと思うが、他のところは確認しても持ち主はこちらなのだから問題ないだろうという程度の感覚だ。


すると本館と違い、ここには美術品は無いし、簡素だった。


離れなのだから、そういう趣の違いはあるのだろうと思っていたが、窓の淵や廊下の隅など、眉を(ひそ)めるところは至る所にあった。



そしてはじめて会った使用人が、奇声を上げたのだ。

今まで何をしていたかと思えば、皆で仲良くお茶をしている。

その中にジュリアと思しき人はいない。


「これはどういうことだ」


ロレンスはもうすでに怒っていた。イヤ、私もそうだ。

この世界に来てから初めて会った。

性根の腐った人間だった。


仕事をしない、遊び惚ける、見るからに普段運動していないことが分かる体形をしていた。

年齢が結婚適齢期をかなり過ぎたメイドが責任者のようで、ロレンスの問いかけに応えた。


「今、丁度休憩時間でした。お出迎え出来ず申し訳ございません」

「なぜ、お前たちは客間を使っている?」

「本日は誰の来訪も聞かされておりませんでしたので、お嬢様に許可をいただいて使わせていただきました。申し訳ございません」

「・・・・そうか、では、ジュリアのところに案内しろ」

「それでしたら、リビングにてお待ちください、お連れ致します」

「よい、連絡なしで来たんだ、それだと準備に時間がかかるだろ」

「いえ、お嬢様も女性ですので、何の準備もなしに会うのは嫌がります。どうかお心を察してあげてくださいませ」

「・・・そうか、では待たせてもらう。連れて来てくれ」

「かしこまりました」


ロレンスをリビングに案内し、持て成すメイドとジュリアの準備を手伝うメイドに別れ行動を始めた。



「なんで今日に限って来るのよ、全く、ついてないわ」

「フフ、そうね。でも時間がかかることを伝えたんだから、しばらく待ってもらいましょうか」

「いきなり来るって、常識が無いのかしら」

「まあ、ボンクラのお陰様だからね、あたしたちがこんなことしていられるのは」


3人のメイドが寝室の扉をノックもなしに開けて入るとそこには金髪の女の子が机に向かい、何か描いている様だった。


「ジュリア様!ロレンス様が来ましたので、お着換えです。早くしなさい!」


この声にびっくりしながらではあるが、嬉しさいっぱいの笑顔ですぐに椅子から飛び降り駆け出した。

そして不思議そうにメイドの奥を見て、「誰?」と一言。


メイドたちが皆一斉に振り返り、私を見た。


「だれ?」

「あなた達の言うところの、ボンクラの婚約者です」



最後まで読んでくださり、誠にありがとうございます。

精鋭の読者のお陰で続けられています。

本当にありがとうございます。


喜怒哀楽の何か感じたら、評価、ブックマークをお願いします。

今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

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