3.2
ガチ勢の30人とはそこでお別れして、馬車でハーメルン商会へと向かう。
近いところに依頼人がいるのは助かる。
まあ、ゴロツキを30人集めたのだから、影響力のある人が動かなければ、容易い話でもないはずだ。
ゴロツキに声をかけても、信用や地位がない人であれば、お金だけでどうにかなることは無い。
そんな人間について行くのは、自分を貶めるだけだと分かっているのだ。
一寸先は闇だと分かっている人間は言葉や利益だけでは動かない。
この世界ではゴロツキもゴロツキであるプライドを持っているのだ。
信用があり、影響力がある。
商会を大きくしてきたのだから、根っこはしっかりした人間であるはずだ。
樹木であれば、現実に見える実りを多くつける樹は、下の見えないところでは根は深く広く張っていなければならない。
商会も同じだろうと思っている。
世の中、良い物だけで出来ているモノは無いのである。
ただ家との関係で合わなかっただけなのだろう。
どういう経緯でそうなったかは分からないが、肚を割って話せば、強力な味方にもなってくれるのではないかとも思った。
駄目なら、駄目で、向こうか私か、どっちらかが滅ぶだけである。
ハーメルン商会の前に着いた。
店構えは立派だ。立派過ぎて唖然とした。
我が家ともめるのであれば、かなり離れた領地まで店舗展開していないとできないのだからそうなるだろうとは予測していたが、それにしてもデカい。
だって大通りすべてがハーメルン商会の店だというのだ。
これは商会というよりも領主と同じ地位と言っても過言ではない気がする。
ここの領主と商会長がよほど仲が良くなければ、こうはならない。
ただこれはあんまりよくない行為だと思える。
だって船頭が二人いる状態になるから。
船頭多くして船山に登る
間違った方向へと向かう事もある。
私が見てきた領主像とここの領主ではかなり違うのだと理解した。
なるほど。こういうことを許しているからここら辺は治安が悪くなったのかな。
このやり方なら確かに我が家なら徹底した排除をするだろう。
ただ店を物色していても、適正価格を維持しているし、そこまで悪質な感じはしなかった。
庶民向けには適正価格で販売しているという事だろうか。
なんとなくどんな人間か見えてきた気がする。
私が商会の本店に入ろうとすると、門番に誰何される。
「止まってもらおう。どういったご用件でしょうか」
「商会長に挨拶に来た。ステファン・バーンベルク様だ。通してもらうぞ」
レオンが率先して執事のようなことをしてくれる。
中々気が利く元騎士だ。
表立って貴族に歯向かう事はしないだろうと思っていたが、予想通りである。すぐに通してくれた。
中では大勢の商人たちが色々な相談事などを持ち寄ったしている。
受付嬢や部門別の担当などがブースを作り、相談や案件処理している風景が広がっていた。
これだけ信用を集めているのは流石である。
少し中の様子に圧倒されていると、すぐに秘書と思われる女性が私たちの前にやって来た。
目つきは鋭いが、髪をアップにしていて、タイトな服装だ。
出るとこ出ていて、なかなかである。
こちらは成長期という免罪符を盾に先祖を信じている段階である。
「ハーメルン商会へようこそ。ステファン・バーンベルク様商会長の元へご案内いたします」
二階を超えて三階にある応接室へと案内された。
そこにはもうスタンバっていて、出迎えてくれた。
「ようこそ、ステファン・バーンベルク様。私が商会長を務めますマルコ・メルカンテです。本日はどういったご用向きで?」
見た目は若く、お父様と同じ40代くらいの男性だった。服装も煌びやかではなく、すっきりとした見た目でありながら、質の良い上品な服装である。
応接間のソファーへと誘導されて、お茶をすすめられてから話を始めた。
「私は回りくどいことが大嫌いです。だから率直に申し上げます。今回の嫌がらせの件は許します。だから我が家への恨みもやめにしませんか?私は最後まで戦いたいと言われたら受けざるを得ないのですが、別に望んではいません」
「それをすぐに信用することは出来かねますね」
「そうですか、では最後までやるのですね」
そういわれたら、仕方がない。
そう思って、着いて早々立ち去ろうとすると引き留められた。
「・・・・ちょっと待ってください。最後までとは・・・」
少し腰を浮かせて、慌てた感じがした。
「一族郎党皆殺し。それが分かるまで終わらない戦争でしょ。お望み通り受けて立ちます」
「いや、ちょっと・・・それはいくら何でも・・・・」
「はぁ、わたくし、メルカンテさんはできる商人だと思っていましたが、なんだか期待外れです。優柔不断の上、私の言葉を疑い、我が家の行動の裏を読みたがる。しかも待ってくれなどと戯言を言う。私の最初の言葉を聞いていないとしか思えないのですが。・・・まだ言葉を重ねますか?」
驚き、目を見開いて、急ぎ頭を下げた。
「申し訳ございません!商人としてのやり取りに慣れて間違えました。もう一度チャンスを下さい」
「あなた、本当に商会長ですか?替え玉ではありませんか?もしそうならば、とても心外ですね。先ほどの許すという言葉は取り消させていただきます」
「ま、待ってください!すぐに父を呼んできます!私には荷が勝ちすぎていますので、もう少し時間をください」
「二度目は無いですからね」
バタバタと最初の人が出て行き、しばらくすると、先程の彼と共に老年期に入るくらいの人が入って来た。
彼も質素な服装でありながら上品さがあった。
二人がソファーに座ったところで話が始まった。
「バーンベルク様申し訳ありませんでした。私が本物の商会長のルカ・メルカンテです。見ての通り私も、もういい年なので、そろそろ譲ろうと思っていたのですが、どうやらまだ修行が足りていないようで、ご面倒をおかけしました。この度は重ね重ね申し訳ございませんでした。息子から簡単にではありますが、経緯は聞いておりますが、良く分からないところがございます。何を根拠に我らがあなた様に嫌がらせをしたと思われたのでしょうか」
はぁ。こういう会話が面倒だから嫌だったのだが、商人とは見えるものでしか判断できないのだろうか。
「初めまして。私の名前はステファン・バーンベルクです。私もあなたが何を聞いてそれを判断したか分かりません。詳しく聞かせてください」
その言葉で、縮み上がったのはマルコだった。
「え、いや、あの、それは」
「どうやら不手際があったのはこちらだったようですね。一体何があったのでしょうか」
「私が本日30人ほどに強襲を受けまして、問質したら、ハーメルン商会の依頼で来たと自白しました。我が家への恨みもあった様だったので、今後はお互い水に流してほしいと願い出たのですが、私の言葉を信用ならさらいようで、何とも優柔不断な対応も含めて、本当に商会長かと確認させていただきました」
私の言葉を聞いてどっと疲れが出たかのような仕草を見せるルカ商会長が大きくため息を吐き、持っていたステッキで隣のマルコをどついた。
バキンとステッキがへし折れ、マルコは頭から真っ赤なモノが飛び出した。
「お前は!未だにメルカンテの家訓が分からないのか!あれほど言って聞かせたのに!面汚しも甚だしい!」
今までのおっとりした商会長の動きが演技だったのかと思えるほどの激怒の姿勢に、こちらも胸が跳ねた。
事態が騒然としたが、商会長は私に向かって深々と頭を下げ謝罪した。
「ステファン・バーンベルク様、申し訳ございませんでした。ハーメルン商会は未来永劫このようなことをしませんので、どうぞお許しください」
私はこの光景に似たものを前世で見ていた。
上司がどうしようもない部下のミスを謝り、相手に謝罪を受け入れさせるための手荒な手法だ。
相手の前で部下を怒鳴り散らしたり、頭を叩いたりして、派手に部下を叱り、私はあなたの味方ですと思わせると共に、これだけ叱ったので、許してくれませんかと問いかける、そんな感じが伝わってきた。
今見たのがそうであるのかは分からないが、ふとそれが頭を過った。
心の中で大きなため息をしたが、「二度目はありませんよ」
そういって一応謝罪を受け入れた。
最後まで読んでくださり、誠にありがとうございます。
大変うれしく思います。
読者の皆様が幸多からんことをお祈り申し上げます。
ちょっとこれからは時間が一定にはならないかもしれません。
なるべく一日一話を目標に励みたいと思っております。
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