子供は勝手に育つ
「はぁ」
今日も無事乗り切ることができました。
この家の管理を任せられたのは、突然のことで、最初は目が回る忙しさでした。
今はようやく慣れてきました。
はぁ。それでも問題は尽きません。
以前からお義母様の仕事を拝見したり、手伝う事はありましたが、それはあくまで手伝いであり、責任者ではないという位置付けが私の成長を抑制していたのかもしれません。
ただ子育てが終わる頃の当主交代が一般的であり、交代後もお義母様が独り立ちできるまで面倒を見てくださることが多いのですが、私の場合それが突然だった事も重なり、最初アタフタしてしまいました。
この家に嫁いできた時にある程度の負担は覚悟していたのですが、今思えばちょっと甘い考えだったのでしょう。
しかし、私の中では嬉しい誤算としては、我が子は皆優秀で手が掛からなかったことです。
手前味噌になりますが、本当に優秀で落ち着きある子供ばかりでした。
幼い時から、一番上のレオナルドは物わかりよくて、助かりました。
比較的なんでも上手にこなす子でとてもいい子でした。
二番目のアントニオも我儘を言うことなく素直に育ってくれました。
幼いながらも謙遜しているのが良く分かり、もうすでに兄を立てることを知っているような、そんな兄思いの優しい子でした。
三番目のステファンは、物静かな子ですが、なんでも一生懸命にやってくれました。
ただ、どの子も最初から落ち着きがあるというか、・・・誰も甘えて来てくれないのが少しだけ、残念に感じました。
子供がまさか遠慮している訳ではないと思うのですが、誰も甘えてきてくれません。
何故か分からず、母親としてはちょっと悲しかったです。
それはこの度のことでは救われる結果にはなりましたが、やはりちょっと残念に思っています。
我が子の我儘を何度も言い聞かせたりしながら共に成長するというのが、親子の関係だと思っていたのですが、あれは幻想なのでしょうか。
こんなことを言うと世間では贅沢だという奥様が多いので他ではあまり言えません。
優秀という良い面もあれば、そうでない面もあるということなのです。
それでも今回女主人の交代と重なる形で、レオナルドがペイジになり、アントニオも領地の一角を任され、手が離れたのは助かりました。
元から手が掛かるわけではありませんが、それでも今の私には寂しさよりは助かるという気持ちの方が大きかったのです。
しかし、それも束の間、ある筋から通達が来ました。
レオナルドが問題を起こし、王都に放逐されたと聞かされた時には驚き、眩暈がしました。
家の子は優秀でそんな、問題を起こすなどとんでもないと思ったのですが、あの子は仕えるという事を良く分かっていなかったのかもしれません。私たちの教育の甘さが出たのだと割り切りました。
王都の商会に依頼してそれとなく助けることを指示しましたが、どうやら上手くいった様で、その後は上手く馴染んだと聞いています。
次男はとても大きく成長しました。
引っ込み思案で、前に出ることを嫌っていたあのトニーが、管理者という地位に立ち、本当に変わったと思います。
最後に少し失敗しましたが、街の変化を考えれば十分な実績を積んだといえるでしょう。
ただあの子、帰ってきてからは、ちょっと変わり過ぎと言いますか、性格が180度変わったと言いますか、なんだか突き抜けたように声を張り上げている姿を見た時、私の可愛いトニーがどこかへ行ったように思えて、悲哀を感じずにはいられません。
男の子は本当に成長が早いのですね。
ステファンは、兄たちがそれぞれ旅立ったという事もあったのでしょうか。
成長に貪欲なのです。
あの子は頑張りすぎという言葉よりは、死に急ぎ過ぎという言葉の方が適当に思える生き方をしていて心配が絶えません。
とてもよくやっているのです。
それだけは本当なのですが、数年かかる薬草を一年で全て覚えたと聞いたとき、優秀さを誇るより、体の方が心配になりました。
あの子は夜遅くまで部屋に明かりをつけていたことを知っていたので、特にそう思わずにはいられません。しかも、調合の研究までして、新薬も作り、治療するため色々な人と会っていると聞きます。
自分の仕事と比べても遜色ないほどの仕事量をこなしています。
もっとゆっくりと大人になってくれる子供でもいいのですが、これも他の奥様に話したら贅沢と言われてしまうのでしょうか。
これはこれで寂しいのですよ。本当に。
そしてこれは最近の話ですが、婚約者候補に挙がっている人を聞いてソワソワしているらしいのです。
こんなに早く異性に興味を持つとは思いませんでした。
女の子は早いと聞きますが、まさか4歳でもうっと、自分の時と比較しても早いと驚かずにはいられません。
あっという間に嫁いでいってしまうのではないでしょうか。
そう思うと今のうちにやってあげられることをやらずにはいられなくなりました。
歌や裁縫、生け花、まだまだ教えなければならないことは沢山あります。
でもそれを教えたら、あの子は必死でやるでしょう。
また死にそうになっても突き進む姿しか思い浮かびません。
あまり干渉しない方が良いのだと思い直し、ゆっくり教えることにいたします。
最後まで読んでくださり、誠にありがとうございます。
大変うれしく思います。
読者の皆様が幸多からんことをお祈り申し上げます。
面白ければ、評価やブックマークをつけていただけると大変ありがたいです。
どうぞよろしくお願い申し上げます。




