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歴史の陰 無口が世界で愛されるのには理由がある  作者: かづ


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19/59

2.4

お母様に言われた言葉を思い出す。

「自分だけで動くと、その力が使えないどころか小さくしてしまう。逆にあなたが周りを頼れば、それは大きな力に変わるのです」


これは、これからは私はしゃべる側にならないといけないという事だ。


言われたことに反応するのは大抵問題ないが、自分から提案するという事はやってこなかったように思う。


それは一言で言えば面倒だからだ。


でもお母様の話からすると、それは実は楽に変わるという事であった。


とてもすぐには納得できない自分がいる。


しかし、先日のカミーラがやった市場でのことを思い出す。

私はカミーラに伝えただけ。

それでも多くの人がカミーラを通して動き行動した。


そういう事か、とそこでようやく腑に落ちた。


お母様は気をつけろとも言っていた。


力が大きい分、大事(おおごと)になると。


力があれば使いたくなるのが人情。

しかし、怖がるあまり行動できないのは生きているといえるのか。


そういったせめぎ合いで、一つ閃く。


今まで通りやって転んだら起き上がろうと。


何か新しいことができたり、素晴らしい能力があるみたいだ。

だから、それを眠らせる様ではもったいないと感じる。

それでも、そのことで自分の人生を、生き方を変えることをしたら、よっぽど馬鹿らしいと思った。


自分の人生は自分の生まれに沿って、精一杯行動すればいい。


そこで、小手先で上手くやろうなどと、できもしない完璧を求めるなんて、傲慢(ごうまん)である。


できることを出来る範囲でやろうと思ったのだ。



という事でまたカミーラと一緒に森に来た。

細かなことを言えば、広いところだから、毎回場所は違う訳だが、どうでもいいだろう。


ただ今回は護衛がアレクサではなく、珍しい女性騎士だ。

前回、山菜を交換してもらった際、アレクサは頑張ってくれた。


しかし、頑張り過ぎた。


その頑張りが、お母様の眼に留まり、女性騎士ならば、こんな重い荷物をそもそも持つことができず、山菜は持てる分しか採ってこなくなるのではないかという(はか)らいである。


そして女性騎士は数が少なく、基本お母様の護衛にいる2人だけである。

外出が最近はほとんど無いこともあり、私に付いてくれることになった。


アレクサは嬉しかったのか、アントニオの訓練に鼻息荒くして望む様子だった。



クリっとした大きな目が印象的で、後ろに縛ったポニーテールもあって、リスのような印象を受ける彼女の名前はエル。代々騎士爵の家系で、長年我が家を支えてくれている大切な家門の一つである。

年齢は16歳で、まだスクワイアである。だから正式には騎士見習い。従騎士という立場だ。


「いや~、いきなり姫様の護衛って驚きましたが、来てよかったですよ~。こんな仕事だったら私大歓迎です」

「そりゃ訓練よりは楽かもね、姫様も我儘(わがまま)や無理は言わないし、いい子だもん」

「はい、後姫様はとっても真面目だから護衛もしやすいって聞いています」

「フフ、今日はムサイ男もいないし、もしかしたら薬草が見つかるかもね」

「え、それって何か関係があるんですか?」

「んー、はっきりとした話はないが、迷信の類さね、調合は昔から女の仕事と分けられているからね。確率というか、偶然の出会いというか、そういう見えないところがあるんじゃないかって」

「そういえば、薬を作る男性っていないですよね」

「そうだね、私の息子も何度か挑戦したが、年齢問わず、失敗していたから、間違いなく女性でないと作れないよ」

「手順が・・とかではないんですね」

「そう、不思議なことに。あと、薬草も採ってきたのが、男か、女かでもちょっと出来が変わるのさ。3万年あっても誰も知らない。もしかしたら、隠されている何かはあるかもしれんが、秘密にしておいた方が世の中の為ってことだったんだろうね」

「はいはい、ありますよね。触れない方が良い事って」

「我らの歴史で消された、隠されたという事は、きっとろくでもない事だでいいのさ。歴史に合わせて生きるのが、我らの務めさ」

「それはそうと、私あんまり薬草を見たことがないんですけど、どんなのですか」

「そりゃそうさ、薬草は採った時にすぐに潰して刻むからね。それしか作り方を知らないってのもあるけど。あと、普通の森に行っても生えてないからね。領主が管理している土地でしか手に入らない。多分余所でもそうだろうさ」

「えー、そうなんですか。やたらに探し回ってもお小遣い稼ぎはできないんですね」

「・・・まあ、そうだね」


雑談かと思いきやうちの既得権益を聞かされる羽目になるとは。

あといつもアレクサが鍋を背負っていた理由が今日分かった。

今日も付けているからてっきり防具の一種だと思っていたよ。


「今日向かっている場所はどんなところですか」

「ちょっと小さな湖があるんだよ、その近くに生えていることが多いのさ」

「えっと、同じところで採れるってことですか?」

「ああ、不思議なことにほとんど同じところにしか生えない。息子が以前研究というか観察していたけど、種も飛ばさずに出てくるし、球根とかもないから、どういう理屈で出てくるかは分からないって不思議がっていた」

「穴を掘って、物理的に場所を無くしたらどうなるんでしょう」

「あんた恐ろしいこと言うね。確実にあんたの首が物理的に飛ぶよ」

「あははははは、そうですね。領主様に飛ばされますね」

「土を持って帰って実験した人はいたよ。ダメだったけど」

「姫がしゃべった!」


失敬な。たまにはしゃべるよ。


「家にある本に夫人の為に鉢に土を移したけど駄目だったて書いてあったの」

「へー、姫様は本読むの好きですよね。そういうことが書かれている本読んでたんですね」

「いいこと聞いたわ。今日帰ったら息子に教えてあげなきゃ。ありがとう」


そんなことを話しているともうすぐ目的地である。

湖というか池が見え始めた。それと少し水の音が聞こえる。


そこは森の中ではあるが開けているから光が差し込み、とても気持ちいいと感じた。

その湖に光が当たりキラキラと反射する。


そして真ん中には水浴びをしている人がいた。


別に許可さえあれば、誰もが入れるのだし、悪くはない。

ただ、この季節には異常に思えるのだが、その姿は森と湖と一体となっていて、とても自然な絵に見えた。


二人も見えても見ないふりなのだろう、特に気に留めず、下の草を見て薬草を探している。


「おお、これじゃこれじゃ。姫様ありましたよ」

そう呼ばれたので私もそっちに向かう。

「へー、こんな草見たことないですね。もみじと同じくらい赤い」

「そうそう、葉の形は違うが、赤いのは紅葉したもみじと似ているね。あとよく見ると筋のところが青いだろ。だから紅葉した秋でも見つけやすいんだ」

「これはどんな花が咲くんですか」

「花は白から黄色に変わる花びらで、中心が闇のように黒いんだ。なんていうか闇から放たれた光って感じの奴だ。とっても美しいんだけど、本当に数分花が咲いた後、みるみる内に枯れちまう。もったいないから花が咲く前にとって刻んだ方が良いと思っとる」

「押し花とかは出来なんですか」

「ああ、無理だ。花にすべてを使い切ったように枯れるのさ。だから乾燥するより先に枯れる。もともと摘むと見る見るうちに干からびてしまうんだから、駄目さね」

「え、じゃあ、これからするのは時間との戦いですか」

「そういう事。それが薬師の腕の見せ所の一つ。手早くやる。隣に鍋を置いてそこに摘んだ薬草を入れて、棒ですり潰す!」

勢いよくカミーラが鬼の形相で叩き出した。


うおおおおおおぉぉぉぉぉぉ


これはかなり重労働だ。


まんべんなく潰してその後切り刻んでいくようだ。そしてそれを別の鍋に移し、蓋を閉める。

完璧な密封ではないが、光を遮断することが重要らしい。


私もやってみる。

潰す方の鍋はジンギスカン鍋のようになっていて、汁で薬草が潰しにくくなるのを防いでくれている。


~~~~~~~~っ

唸りはしなかったが、力が小さいのと、カミーラのように手早くまだできない。


「うんうん、それでいい。そのうちなれるし、これは本当に序盤じゃ。ここにある薬草ある程度刻んだら帰ろうかね」

「姫様、まだ沢山出来ますよ。どんどんやりましょう」

私は頷き作業に取り掛かる。私がやるのは叩くのと刻むことだけ。




そしてそれに集中していたら、いつの間にか水浴びをしていた人はいなくなっていた。




最後まで読んでくださり、誠にありがとうございます。

精鋭の読者のお陰で続けられています。

本当にありがとうございます。


喜怒哀楽の何か感じたら、評価、ブックマークをお願いします。

今後ともどうぞよろしく申し上げます。

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