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歴史の陰 無口が世界で愛されるのには理由がある  作者: かづ


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16/59

2.1

これだけ色々試して、それでもだめで、なけなしのエネルギーさえなくなった。

もうどうしたらいいか分からなくなった。

空腹で堪らず、薄暗い路地の片隅で膝を抱え腰を下ろした。


やっぱりここは地獄で、俺は罰を受けているんだ。


そう思うと納得した。

嫌だ!とか、違う!と今まで否定していたが、なんだか霧散した。

ただただ受け入れ、そうだよなと納得した。


そんな時に初めて声をかける人が現れた。

「おい、坊主。そこで何してる。行くところねぇのか」

もう限界で、頷くことしかできなかった。

大きなため息を吐き、頭を抱えた青年がいた。

「ついてこい。飯を食わせる」

そういって、部下に指示を出す。

その人は身形のいい服を着ていた。


すぐそばの建物の主のようで、使用人と思われる人が手際よく肩を貸してくれて、中へと入れてくれ、食事を出してくれた。


レオナルドはなんだか施しをされた気分で、憐れみを向けられた感覚に苦いものを感じる。

だがそれでも体の欲求には克てない。


出された食事の臭いにつられてしまう。

「食べていいんですか」

「おう、食え」

「いただきます」

口に入れた瞬間、今まで堰き止められていた涙や鼻水が自然と溢れた。


口の中では何かドロドロした塩気の効いた味がした。


ひとしきり泣き、食事を済ませ、落ち着いたところで、青年から話があった。

「お前、貴族だろ、なんでこんなところで座っている」

助けられた恩も感じ、正直に追い出されてからのことを全て話した。


もう自分ではどうしたらいいか考えられなかったから。


「はぁ。・・・お前は馬鹿だな」

「はぃ。」


凄く呆れられたのだが、その人は親身になって今後の行動を教えてくれた。


「まず、お前は監督官に謝罪しに行け。そして許してもらうまで、そこを動くな。そして反省していることを伝え、もう一度チャンスを貰えるよう懇願しろ」

「でも中に入れないし、それに他の奴らだって俺のことを笑うんじゃあ・・・」

「中に入れるようにはしてやるが、他は全てお前の撒いた種だ。耐えろ。・・・この期に及んでまだ変なプライドがあるのが、逆に笑えるわ。ったく、これだから貴族は・・・。まあ、とにかく、お前はしっかり謝罪しろ」

その睨んだ眼は有無を言わさない冷ややかさで、声につまり、頷いて了承した。


それから馬車に乗せられ、王城に行くと顔パスで中に通される。

青年と監督官であるジーク・デオンの部屋の前まで一緒に行った。


「ここからはお前が何とかしろ」

「でも、許してくれないかもしれないし」

ここにきても、まだ決断ができないでいた。

プライドを捨てると頭で思っても本当は捨て切れていない。

そういう覚悟の無さが伝わり余計イラつかせた。

「っち、さっきも言っただろ。許されるまで動くな。簡単に許されると思う方がおかしいだろ。はぁ。兎に角、こっからはお前で何とかしろ、お前の問題だからな」

「・・・分かりました。あの、お名前を伺っていませんでした」

「お前に教える気がないから言っていなかったんだ。勘の悪いガキだ。察しろ馬鹿」

「・・・すみません。でもありがとうございました」

「おう、じゃあな」

そういうと帰っていった。




緊張しながらドアを叩く。

扉の向こうから「どうぞ」と声が掛かり、扉を開けた。

執務机の向こうで腕を組みこちらを見ていた。

ジーク・デオンは眼帯を付けた黒髪の長髪でいつも厳しい目つきをしている。

「レオナルド・バーンベルクです。・・・今まですみませんでした。どうか私にもう一度ペイジとしてチャンスを下さい!お願いします‼」

「・・・お前は本当に分かったのか」

「自分の無力さと傲慢さを認識しました。反省します。だから・・・」

「足りん」

「え」

「お前は言っていることが軽い。だからすべてが上辺だけに聞こえる」

未だ一歩も部屋に入っていない私に、椅子から立ち上がり目の前のソファーへ座るように誘導する。

ソファーに向かい合って座って話し出す。

「今まで言っていた言葉を簡単に変える。それはお前に覚悟がないからだ。ただ単に自分の欲望で言っていた。その汚さが分かるか」

「はい。私の傲慢さがいけなかったと思っています」

「違う。欲望は誰でもある。それを我慢もせず、言葉を発する。恥ずかしげもなく皆に訴えたことが汚く醜い。そういう感覚はお前にあるか」

良く分からず、言葉が出ない。

「・・・『傲慢』とか言う概念で自分を誤魔化そうとしている。はっきり自分の内情を本気で考え、大きな概念や観念で捉えず、もっと自分をよく見ろと言っている」

何か探るように顎に手をやり、整えられた顎鬚を弄ぶ。

「・・・お前は確か、人権を阻害されたとか言っていたが、本当はこうだ。俺の好きにやらせろ。長所を伸ばす教育も訴えていたな、あれはこうだ。嫌いなことはやりたくない。楽しい事だけやらせろ。それから暴力をふるうのを止めろだったか、それの本当の声は痛いのは嫌だ、助けてくれ。そう言いたかったんじゃないか。それをお前は誤魔化し続けていた。違うか。さも自分は誰かの代弁者のように気どり、自分の気持ちを隠し誤魔化していた。そうだろ。だから未だに傲慢だとか言っているのも、本当は自分のことをまだ分かっていないんじゃないのか?」

今まで見て見ぬふりをしていたことを全て掘り起こされた気分になる。

どこかでまだ「俺はそんな汚くない!」と叫ぶ声が聞こえるが、言われたことは全て正しいと思えた。

「お前は年の割には大人びている。だから何か勘違いを、自分は頭がいいから本当にそれで分かったと思っているのかもしれない。でもな、そんな上辺の言葉だけで反省した奴は今まで居ないんだ。これは私が監督官として30年やってきた事実だ」

そこで監督官のデオンはため息を吐き、姿勢を変える。

「じゃあ、質問しよう。私がお前の言葉を代弁したんだ。お前もやってみてくれ。なぜ我々がお前たちを殴ったのか」

「それは・・・私たちを教え導くためです」

「そうだ。でもな。これは心外だったな。お前が暴力という言葉を使ったことだ。暴力という言葉をお前はどう定義している」

「・・・・殴る蹴るなどの危害を加える行為です」

「そうか、・・・・でもな。それは間違いだ。そしてお前は知っているはずだ。暴力という言葉はもっと()()()()()()()()だと」

そう言った時のデオンの眼には激しい怒りがあった。

「私は暴力という言葉は、()()()()攻撃、()()()()()攻撃と定義している。つまり、こっちには何も過ちは無かった、()()()()()()()()()()時に使う言葉だ。お前も分かっているだろ」

また胸を引き裂かれ全てを出された感覚に襲われた。

「お前は俺たちの行為を教え導く為と分かっていながらも、この暴力という言葉を敢えて使ったのだ。それがどれだけ虚飾にまみれ、人を貶める行為にしたか、分かるか」

絞り出すように「はい」と伝えた。

そして今まで言われた言葉を味わい飲み込む様に「申し訳ありませんでした」と深々と頭を下げた。

傷ついて、恐ろしくて、不安で。

そんな思いからか息が詰まり、眼が熱くなり、嗚咽と共に涙がこぼれた。

「言葉は武器だ。誰彼構わず切り付ける。善く使えることもあれば、最悪を招くこともある。だから・・・沈黙を大切にする。よく考えてからモノを言え。実際これが悪かった、あれが悪かったと簡単に言って、それを反省しますと言っている奴と、どう行動するかを心に決めた人間とでは、明らかだった。・・・お前はどうだ」

「私は今他のみんなに謝罪して、・・・一から全てを学び直したいと思っています。・・・もう、一人で、外に行くのは・・・嫌です。・・・今までの自分を捨てて、一から学びます。学ばせてください!お願いします!」

涙が止まらなかったが何とか最後まで伝えた。

もう一人で放り出され、寄る辺もなく、歩き続け、疲れ果てる、そんなのは嫌だった。

夜があんなにも寒く、冷たいとは知らなかった。

じっとしていたら、どんどん体温が奪われる。あんな夜を過ごすことは二度とごめんだった。

だから全て本心だった。それだけしか今は思っていなかった。

「・・・そうか。その言葉忘れるな。次はないからな。・・・あとあれだ。お前は休みが欲しいと言っていたな。それは私も賛成だ。だがな。お前は王が王でない場面を見たことがあるか?」

一瞬王様のプライベートを想像しようとしたが、どんなことをするのか分からなかった。

「王とは周りの者に常にそう振舞うことが求められている。それが王であり、また貴族だ。下に従えるものが増えれば増えるほど、眼は多くなる。それに対処し続けなければならない。つまり爵位とは、そのまま生き方であり、生き様になる。取って付けたような付属品ではない。その者の真ん中に、中心の核として一心同体でなければならないものだ。そしてそれを学ぶためにお前は今ここにいるのだ。・・・自分勝手に休めない理由が分かったか」

「・・・はい」

「フン・・・行け」

「ありがとうございます・・・」

頭を下げたら、また止まらない暖かいモノがこぼれ落ちた。



バタリとドアが閉められた。

するりと横の扉からノックもなく訓練教官のジョー・ボリスが入ってきた。

ボリスは私の3つ上で戦場経験もある本物の騎士だ。

「少し甘いんじゃないのか」

「・・・そうかもしれません。でもバーンベルクの人間ですし、大丈夫でしょう」

「ああ、まあ、そうか、・・・でも意外だったな。バーンベルクの人間であんなのがいるとは思わんだ。あそこは伝統や家にもっと敬意を思った奴が多いんじゃが」

「ええ、父親も頭は良かったですが、あそこまで軽率に言葉を出すような奴ではありませんでした」

「当主、いや、前当主のクラウディオ殿はバーンベルクを体現したような方だったからな、ちょっとした反動かもしれんな」

「ふふ、そういうのもありますかね。・・・・現当主が変わっていなければ、心配ないでしょうが、あれを送り出したのですから、もしかしたらバーンベルクも変わっていくのかもしれませんね」

「ハハハハ、それはないだろ!あそこは騎士になるのに相当しごくからな。戦場でのバーンベルクの騎士の行動は異常だと思った。あそこはそういうところだ。お前も一回でも戦場を共にしたら何が違うか分かるわ。坊主もペイジの今のうちに変わろうと思えたことが幸せと思えるほどだ。間違いない」

「話には聞きますが、そこまでですか?」

「お前の聞き方が、緩いんだ。お前が聞いた話は全て本当だと、逆に少し小さく伝えている部分があると思った方が良い位だ。凄かったぞ、1万の軍を見て笑いながら、一人で向かっていく様は」

「・・・そうですか」

「3万年無敗は伊達じゃないってことだ。ハハハハハ」

「確かに・・・そうかもしれません」




最後まで読んでくださり、誠にありがとうございます。

大変うれしく思います。

読者の皆様が幸多からんことをお祈り申し上げます。

レオナルド編はひとまず終えて、次回は辺境伯に舞台が変わります。

楽しんでいただけると幸いです。


もしよろしければ、評価やブックマークをつけていただけると大変ありがたいです。

どうぞよろしくお願い申し上げます。

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