216話 今はなきアウエリオス
―― The Lost Auerios ――
「なあ、セレストよ」
「今はブルースカイじゃ」
「……そうか」
トルクメニウスは、思い耽るように遠くを見つめた。
沈黙が、数分ほど静かに流れる。
セレストは、その沈黙ごと夜の静けさに身を沈めた。
「なあ、聞いてくれるか」
トルクメニウスから自ら話を切り出すのは、極めて珍しい。
アセマトの賢者たる彼は、セレストにとって先達であり、いつもは問われて応じる側だった。
ゆえにこの言葉は、それだけで異質だった。
断る理由などない――だが同時に、言いにくい話なのだろうという予感がよぎる。
何が語られるのか。
身構えたその瞬間、トルクメニウスから異常な魔力が立ち上った。
(権物か……?)
否。
この果てのない魔力量は、その域を超えている。
セレストは反射的に視線を向ける。
――そこに、姿はなかった。
気づけば意識は、三世年以上も過去へと引き戻されていた。
三明賢者たちが、何かを抑え込んでいる。
当時としては異様なほど巨大な船。
そして、常軌を逸した規模の生物群。
船は漆黒。無機質で、存在そのものが異物だった。
海には、様々な等級の海洋生物がひしめき合い、縄張りを競っている。
クラーケンをも凌ぐ巨体。
人型の蟹。河童――いや、“水の者”たち。
「……見えたか」
セレストは、静かに頷いた。
「この魔法議会は――世界を繋げようとしている」
言葉を挟まず、ただ耳を傾ける。
「かつて、世界は一つだった」
トルクメニウスは続ける。
セレスティアルは、広大な大陸と海原を内包した“球”――言わば世界の雛形を創り上げた。
その儀体を操ることで、宇宙すら創造し得たという。
無論、現代のセレスティアル人にその力はない。
だが彼らはかつて創造主として振る舞い、種の繁栄と存続のため、多くの種族を生み出した。
その中で――機人は明らかに異質だった。
あれは“外”から来たのではないか、と。
ゼタの異質さ。
セレスティアルの力。
それぞれが必要不可欠であり、まるで鍵と鍵穴のように対を成している。
もし両者が交差すれば――神すら超える存在に至る。
トルクメニウスは、そう告げた。
そして、セレストが見た光景。
それは、かつて存在した国家――アウエリオスである。
時空の砂時計の在処は、すでに判明している。
問題は――アウエリオスの海戦で何が起きたのか。
三明賢者は口を閉ざし、真実を語ろうとしない。
本来であれば、アセマトの賢者が調べることもできる。
だがそれでは、確実に気取られる。
ゆえに条件がある。
海戦に関与していない者。
勇気を持ち、十分な魔術適性を備えた者。
三人まで。
時空の砂時計により、時間をわずかに歪め、往復が可能となる。
制約は、その力の限界ゆえだった。
セレストには、心当たりがあった。
アウエリオスの海戦を知らぬはずの三人。
彼らを呼ばねばならない。
それが――魔法裁判の後、あの夜に起きた出来事だった。
そして今。
セレストはフォーチュリトス王国にいる。
その意味は――もはや語るまでもない。
みなさんこんばんは! VIKASHです!
さてさて、今回はアウエリオスの深掘りですね。
明確な時代設定や、歴史を決めておらず、少しだけ不安がよぎりますが、アウエリオスは造語であるのに対し、意味を持った固有名詞でもあります。
「アウ(Au)」
→ ラテン語で「金(aurum)」に近い響き
「エリオス(helios)」
→ ギリシャ語で「太陽」
失われた文明を意味するアウエリオスですが、異なる言語を繋げ、ひとつの言葉として紡ぎ出すことで、黄金の太陽となります。
未確定要素なので、申し訳ないのですが、アウエリオスとは、太陽を神として信仰し、黄金の採れた国であったのではないか。と、自分なりに考察しています。
また、アクエだけ取ってみても、アクアと似ている言葉なので、水の都として栄えた国であったのではないか。と、想像もしました。
この私の勝手な考察から察するに、アウエリオスとは、アダマスとフォーチュリトスの連合国家であり、かつてひとつだった国が二つに分裂した。
ア ウエリオ ス
ア ダマス
フォーチュリト ス
頭文字と最後の文字が一致することからも、アダマスが北に位置し、フォーチュリトスが南に位置していた。もしくは、西と東。
以前から、セレスティアルの地図を作りたいという構想があり、アプリで作ってみたりはしたんですが、思うようにいかず……もし、オリジナルの地図が作成できるアプリやサイトを知っていましたら、教えていただけると幸いです。
セレスティアル論と私が勝手に呼んでいる。
三人の賢者の話。
※あらすじで読むことができます。
このセレスティアル論についても近々触れていきたいですね。
今回のバースでは、主にアウエリオスやら、アセマトやら、機人についての言及され、ユニムの第一段階覚醒、またあの二人の成長を楽しみにしていただけますと、幸いです。
アセマトに関しては、突如として現れていますが、今後大きく関わってくるでしょう。
ここからは、完全に余談なんですが、魔法学校篇の次は、海内女王篇になる予定でした。
ですが……今回、機の登場や、アセマト、アウエリオスの深堀りにより、今後の展望が不安となっております。
わかりやすく申し上げますと、寄り道をしている状況ですね。
ひょっとすると、海内女王篇の前に、もうひとつ別の篇が挟まれるかもしれませんし、バースは未決定のままなので、非常に身勝手ですが、私にもどうなるかわかりません。
過去の話を読み返していただくと、所謂匂わせ、アウエリオスの伏線がありますので、読み返しても楽しめるかもしれません。
度々、重複致しますが、いつも読んでくださっているみなさん。
新規の参加で、初めて読んでくださった方。
ブックマークをしていただいている方。
評価をしてくださった方。
これからもどうぞTWO ONLY TWOをよろしくお願い致します。
今回はこれにて失礼します。
以上VIKASHでした!
またね!
◀次回のタイトル「凍らされた歴史」




