205話 炎纏〈エンテン〉
―― Wildfire ――
これより炎の節の試験を始める。
ハヤタカの、その一言が静かに発せられた。
同時刻。
ゼルドとシンは、牙王ライオネルの前に立っていた。二人は自らがアルキメデス魔法学校の生徒であることを名乗り、炎の節の試験を受けたいと懇願する。
牙王ライオネルは、低く頷いた。
「致し方なし」
その一言で、試験は認められた。
ユニムは構えを取る。
海内女王拳の構えだった。
右手を強く握り締める。
左手は、水をすくい上げるように天へと向ける。
その動きは静かでありながら、海そのものの気配を帯びていた。
するとハヤタカが、藪から棒に口を挟む。
「炎の節の試験だぞ?」
ユニムは、少しだけ視線を動かす。
「海内女王拳は海に由来する拳なのだ」
言葉を選ぶように続ける。
「海洋のような大きな動き。
小魚のような俊敏な動き。
そして甲殻類のような鉄壁の防御」
ハヤタカは、口元を歪めた。
「おもしれえじゃんか」
興味を持った獣のような笑みだった。
あの炎帝を彷彿とさせる。
「また聞かせてくれ、な?」
ユニムは続けようとする。
「そこに炎を練り上げたならば――」
だが言葉が、そこで詰まった。
ハヤタカは、実力の知られていない教師だった。
しかしアルキメデス魔法学校の教師は、
例外なくトップクラスの実力者ばかりである。
その列に並ぶ存在なのだ。
只者であるはずがない。
ユニムは、センチュリオンとの戦闘を思い出す。
そしてイェリエルとの戦闘も、すぐ目前で見ていた。
試験で済むだろうか。
胸の奥で、鼓動がわずかに速まった。
ドク、ドク。と、小刻みに音を立てる。
先ほど聞いた話を思い返しても、どちらも化け物だった。
マダム・ウィッチおばあちゃん。
そしてハヤタカ。
二人は同じ技を使っていた。
紅炎〈プロミネンス〉。
あの技の威力は、もはや魔術というより災害だった。
ユニムは思う。
私たちの体内に宿る四元力を司る魔力。
それは、実に不確かな存在だ。
目には見えない。
触れることもできない。
だが確かに、魔術を使うためには必要とされる。
今までユニムは、魔力とは無限に近いものだと考えていた。
だが違う。
ハヤタカのプロミネンス。
ネイビスの蒼雷〈プラズマ〉。
あれらの技には必ずインターバルがあった。
放出すれば、必ず回復が必要になる。
無限ではない。
確実に消費される。
そう考えれば、ゼルドの変化も理解できた。
あの時、ゼルドは魔人となり、
狼へと姿を変えた。
そして戦いのあと、深い眠りに落ちていた。
三日三晩。
それほどの時間を眠り続けた。
つまり魔人に必要な魔力量は、
桁違いということだ。
人の領域ではない。
その結論に、ユニムは静かに至る。
その時だった。
『炎纏』
声が響く。
届く。
澄み渡る。
まるで水面にかかっていた霧が、
ゆっくりと晴れていくようだった。
その一言とともに――彼は、炎を纏った。
揺らめく紅。
だがそれは暴れる炎ではない。
制御された炎。
身体の外側に薄くまとわりつき、彼の存在そのものを包み込んでいた。
『覚えてるか?』
軽い声音。
『まあ、復習はいらねえよな』
それは、強者の発言だった。
ユニムの呼吸が、わずかに深くなる。
仕掛けるべきか。
それとも炎で迎え撃つべきか。
だが――ユニムは炎が使えなかった。
理由は、あまりにも単純だった。
氷の反対は何かと問われれば、人はたいてい炎と答える。
それは常識のように語られる。
そして、その通りだった。
炎は氷の弱点。
つまり――ユニムが最も苦手とする魔術だった。
焦りが胸を締めつける。
思考がわずかに揺らぐ。
その時、マスタングの言葉が脳裏に蘇った。
――「どっしりと構えるんだ」
続いて、ゴジョウの声も思い出す。
――「勇者か?」
その言葉が、静かに胸の奥へ沈んでいく。
ユニムは、ゆっくりと息を吐いた。
海のように。
揺れながらも、崩れないように。
拳を握り直す。
海内女王拳の構えは、まだ崩れていなかった。
こんばんは!VIKASHです!
お目を通していただき、ありがとうございます。
炎の節の試験の開始ということで、TWO ONLY TWOの主要人物とされているユニムとゼルド、シンに焦点が当てられています。
そして、披露される炎纏〈エンテン〉――とある漫画から影響を受けていて、漢字こそ違いますが、名前は全く同じです。
ちなみにその漫画様では、刀として登場します。
ところで、深く読み込んでいる方がいたなら、気づいたかもしれません。
ハヤタカは、センチュリオンそしてイェリエルとの戦闘の際に炎纏〈エンテン〉と発言しなかったが、炎を纏っていた。
ここで矛盾が生じますね?
その矛盾を解説していきます。
まず、言霊の話からになるのですが、言葉には力があります。
魔術に於いて、詠唱や呪文はその効果を指定しているんです。
あの魔法のこの効果を使いたいから、〇〇と言おう。の、ように。
また、描写的観点から、言葉を発するのと発さないのでは、圧が違います。
発した方が段違いに技としての威厳が生まれます。
少年漫画や面白いアニメでの、所謂必殺技的立ち位置にしたい時、私は言葉を発するという方法を持ってきます。
なによりわかりやすいですからね。
それ以外の下級の魔法や、今後インフレが考えられる高等の魔術に関しては、名前をつけるか決めかねています。
ある地点で、過去の技が登場した時、おっ。となるのか。それとも、なんだ雑魚じゃんとなってしまうのかは、今後次第でしょう。
少なくとも現在では、炎纏〈エンテン〉は高度な魔法です。
また、疑問に思われた方もいるかもしれませんね。
炎は熱くないのか?
答えは簡単です。
薄い空気の層を体表に作り、燃やさせるか。
皮膚の遺伝子元素もしくは、信号そのものを作り変えてしまうことで、熱く感じることはまずないでしょう。
ハヤタカともなれば、魔法の同時併用も容易いはず、こっそりと皮膚を冷却しているかもしれませんね。
さあ、こんなところでしょうか。
そういえば、最近ポケカにハマっているんですが、TWO ONLY TWOのカードがあったら、面白そうですよね。
すいません。完全に酔ってます。笑
飲んではいませんが、自惚れていますね。
次回の投稿はまだ、未定ですが、明日には間に合わせたいです。
小説家になろうは、投稿頻度が大事らしいですよ。
三年も書いてて何を今更という感じですが、これからは投稿頻度を増やしていければ、と思います。
それでは、また次回まで!
お楽しみに!
◀次回タイトル「自分を信じること」




