202話 二王邂逅
―― Clash of Two Kings ――
一方その頃、ゼルドとシン。
彼らは行動を共にしていた。
セレストは、仕事があると言い残し、二人を置き去りにしていた。
途方に暮れていたゼルドだったが、シンが血相を変える。
「ゼタ=エルド、気をつけろ。何か来る」
ゼルドは、騎士王の剣に手をかけた。
構える、というよりも――腰を据え、静かに柄へ手を置く。そんな姿勢だった。
彼は碧色の瞳で、まっすぐ前方を見据える。
ステラロイドたちは変形を始めた。
まるで盾のように形を変え、ゼルドの前へ展開していく。
――何か来る。
だが、それが何なのかは分からない。
もし、この『騎士王の剣』が奪われようものなら、牙王ライオネルに顔向けできない。
牙王ライオネルという男は、必要に応じて躊躇なく暴力を用いる男だった。
それは紛い物の正義などではない。
人に恐れを植え付ける――純粋な恐怖。
恐怖を用いた政治。
恐慌すらも戦略として扱う。
そのすべてを誰よりも理解し、帝王学に基づいた思考から、人間の五感、さらには感情さえも操る。
彼こそが――世界皇帝、その人である。
『剣を預けた意味はわかるか?』
その問いが、いまだにゼルドの脳裏から離れない。
返せ、という意味なのか。
それとも――自分のものにしろ、ということなのか。
だが、ライオネルはそのどちらの言葉も口にしなかった。
牙王ライオネルという男は、人間を操ることに非常に長けている。
それがホモ=サピエンスであろうと、ホモ=セレスティアルであろうと、フォールの住人であろうと関係ない。
ましてや、ステラロイドのようなバタリアンでさえも、彼の掌の上に置かれてしまう。
実に恐ろしい男だ。
彼の所在は、誰にも知らされていない。
同じ「王」の名を持つ存在。
牙王ライオネルと、魔王シン。
もしこの二人が出会ったなら――何が起きるのか。
誰にも予想できなかった。
だが、現実は思いもよらない形で訪れた。
狙いは、魔王シンへと集中していた。
「禁忌である」
牙王ライオネルは静かに言い放った。
『いや、違う。話を聞いてくれ』
「聞かぬ。聞くに値せず」
『なら、拳で語り合うか?
噂は聞いている――世界皇帝、だったな』
「同じく、魔王よ。探したぞ」
「魔王さみゃ。やめたほうがいいですにゃ」
『ゼタ=エルド。どちらにつく?
俺か? それとも、あいつか――』
ゼルドは一瞬、迷うように目を伏せた。
「す、すいません。
契約を交わしていますので」
ゼルドの説明によれば、彼はユニムと共にメーラジャッロヴェルデに加わっていたが、現在は一度そこを離れ、K.W.B.という組織に所属しているらしい。
その組織のメンバーには、
武人闘王マカ=オルテガ。
竜騎士王アーサー・エルド・ドラゴニクス。
などなど――名だたる人物が名を連ねている。
話を最後まで聞いた魔王シンは、しばらく沈黙した。
やがて……。
「わかった」
と、一言だけ呟いた。
その後、彼らは舟に乗った。
牙王ライオネルと共に。
目的地は――インペリアルハーツ。
静かな水面を切り裂くように、舟はゆっくりと進んでいった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
今回の話は、実は「邂逅」というテーマを意識して書きました。
書いていて、自分でもこれでよかったのか。と反芻しました。
この選択が正しかったのか――
あなたはどう感じましたか?
もし少しでも面白いと感じていただけたら、
ブックマークや評価、感想などいただけるととても励みになります。
それでは、また次回。
◀「次回タイトル」―《玄丹皓三人衆》




