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TWO ONLY TWO 唯二無二・唯一無二という固定観念が存在しない異世界で  作者: VIKASH
【魔法学校篇】:XENO AND BRAVE

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200/219

200話 異質さと勇敢さ


―― Xeno And Brave ――



 ここに在ってはならない。



 その理屈は、誰よりも彼自身が理解していた。



 空は青く、雲は規則的に流れ、遠くの光塔は正確な間隔で脈動している。世界は整っている。秩序は崩れていない。



 だが、その秩序の中央に――異物が立っていた。



 胸元に、鎖で吊られた黒い箱。


 掌に収まるほどの小さな立方体。

 角は寸分の狂いもなく直交し、面は光を吸い込み、輪郭だけを冷たく浮かび上がらせている。



 それは「欠片」だった。



 完全体の一部。



 にもかかわらず、あまりにも理路整然としすぎているがゆえに、人はそれを欠落と認識できない。欠けているという事実を、脳が拒絶する。



 それが、彼――我王蘭丸の胸にあった。



 彼の隣に立つ男は、さらに異質だった。



 ユニト。



 ユニムの父であり、本来この地に存在しなかった者。



 セレスティアルは、完結した世界である。

 生態系は閉じ、空と海と陸は循環し、外部という概念すら持たない。



 そこに「外」から来た存在が立っている。



 理論上、ありえない。



 だが今、彼は風を受け、地面を踏み、確かに呼吸していた。




「……まだ視線があるね」




 ユニトが低く呟く。



 視線は物理的なものではない。

 世界そのものの観測だ。



 蘭丸は答えない。



 彼は胸の黒い箱に触れた。



 冷たい。



 脈動はない。



 だが確実に、何かを封じている。



 それが開けば、世界は変質する。

 そう直感できるほどの静かな圧力があった。



 二人は旅を続けている。



 放浪か、冒険か。



 名付けるならばそのどちらでもよかったが、実際にはもっと単純だ。



 探しているのだ。



 権物――オリペドロゴンを。



 その名を知る者は少ない。



 知ってなお口にする者は、さらに少ない。



 それは地図だと言われている。



 だが、ただの地図ではない。



 球体。



 セレスティアルそのものを模した小宇宙。



 空、海、陸。

 気流の癖。

 生態系の循環。

 未来に起こり得る分岐。



 そして――



 我王蘭丸とユニトの生態データまでもが、内包されているという。



 もしそれを手にすれば。



 セレスティアルを、手中に収められる。



 少なくとも、そう語り継がれてきた。




「世界を握る気はある?」




 ユニトが問う。




「ない」




 蘭丸は即答する。




「だが、知らずに支配される気もない」




 風が吹く。



 遠くの浮島群が、ゆっくりと軌道を変える。



 セレスティアルは、生きている。



 だが同時に、演算されてもいる。



 オリペドロゴンがなぜ作られたのか。



 誰が。



 何のために。



 答えはない。



 ただ一つ、賢者たちの言葉が残されている。



 ――我王に由来する者、もしくはユニトに由来する者のみ、その在処を汲み取れる。



 血か。



 系譜か。



 あるいは思想か。



 蘭丸は時折、考える。



 自分は“由来”なのか、それとも“例外”なのか。



 この黒い箱は、導きか、それとも枷か。




「怖くないの?」




 ユニトが問う。



 蘭丸は少し考えた。




「怖くないわけがない」




 異質であることは、孤独だ。



 勇敢であることは、代償を払うことだ。



 この世界に本来存在しない二人が並ぶとき、そこには常に選択が伴う。



 退くか。



 壊すか。



 進むか。



 空の一部が、わずかに歪む。



 観測の焦点が、二人に合う。



 蘭丸は一歩、踏み出した。




「行くぞ」


「根拠は」


「ない」




 だが彼の瞳には、確かな光があった。



 異質であることを否定しない光。



 この世界に在ってはならないと言われながら、それでも立つ意志。



 勇敢とは、恐怖の不在ではない。



 恐怖を抱えたまま進むことだ。



 足元の大地が微かに震える。



 遠く、水平線の彼方で、球体の影が一瞬だけ浮かび上がった。



 見間違いではない。



 あれは。




「……感じたんだね」


「ああ」




 胸の黒い箱が、初めて熱を帯びる。



 オリペドロゴンが、呼応している。



 それは地図であり、鍵であり、記録であり、選別装置でもある。



 世界を握るための道具か。



 それとも、世界に握られぬための盾か。



 まだ分からない。



 だが確かなのは一つ。



 彼らは、存在している。



 ここに。



 否定されながらも。



 観測されながらも。



 それでも。



 異質は、消えない。



 勇敢は、折れない。



 そしてセレスティアルは今、

 その二人を中心に、わずかに軌道をずらし始めていた。



 世界が揺れるとき、

 揺らしているのはいつも、在ってはならない者たちだ。



 蘭丸は胸の箱を握りしめる。




「俺たちは地図を探しているんじゃない」




 静かに言った。




「世界が、俺たちを探しているんだ」




 風が止む。



 空が、わずかに色を変える。



 セレスティアルはまだ完璧だ。



 だがその完璧さの中央に、確かに亀裂が入った。



 それが終焉か、進化か。



 答えは、まだ誰も知らない。



 ただ一つだけ確かなこと。



 在ってはならない二人は――

 それでも、ここにいる。



 そして進む。



 勇敢に。






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