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元勇者パーティーの最強魔導士も隠居後は気ままに過ごすようです  作者: UMA未確認党


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第7話 静止

 それは先ほど老いてきたはずの老人、ヴァルツだった。


「だから不必要に奥へ入らぬ方がよろしいと申し上げたかったのですが。聞く間もなく行ってしまわれて……」



「な、何でアンタが。生き埋めになったはずじゃ」


「生き埋めになった程度で先生が死にますか」


 トテトテと歩いて来たのは眼帯を付けた壮年の男、ゲオルギウスだった。背後には黒髪の長髪の少女とスキンヘッドの大男もいた。


「お怪我はありませんかな。まぁあの二人は怪我を確認するまでもないでしょうが」


 ヴァルツの表情が消え、大蛇に視線を移した。


「だから刺激するなと申したのに……」


「バカには分からんのですよ。悲しいことにね」


 ゲオルギウスがヴァルツの前に立ち、杖を前に構える。


「私が前衛をやりますから、先生は背後からごゆっくりどうぞ」


「やってくれるか」


「私を誰だと思ってんです。数十年前からアンタにみっちり扱かれた弟子ですよ」


 そのままトンと軽く踏んでから大蛇に飛び掛かる。


 真上に飛びながら大蛇の気を反らす。


「嘘よ。ルークは代々伝わる伝説クラスの剣を用いても勝てなかったのにあんな杖ごときで相手になる訳が……」


「どんなに強い武器だって使い手がゴミなら三流にしかならないわよ。見なさいその伝説の剣とやらはあの大蛇の圧力の中でも呑気に生き残ってるわ。本人は肉塊だけれどね」


 アイリスは剣に目線を向ける。持ち主が死んでなお、その剣は傷一つついて居なかった。


「そこ邪魔だから退いて。ヴァルツ先生が撃てないでしょ」


 そのまま雑にレベッカを範囲外に引きずり出す。




 レベッカが振り返るとそこで杖を床に立てていた。


 その瞬間、洞窟の空気が変わった。


 レベッカにも分かる周囲の魔力量がこの老人を中心に異常に変化していることを……


「ま、まさかこの状態で術を!」


「おっ撃ちますか。じゃあ俺は退かせてもらいますよ」


 ゲオルギウスはそそくさと退却していった。


「むやみに騒いで悪かった。すぐに帰るからしばらく休んでいてくれますかな」


 大蛇が突進していくが、ヴァルツの寸前に来た時点でピタッと止まった。そしてその巨体を横たえる。


「静止」


 小さく唱え終わるとそこには暴れていた大蛇の面影はどこにもなかった。まるで糸を切られた人形のように動かなくなっていた。ヴァルツは大蛇の呼吸を確かめ、頷いた。


「これで当分は大丈夫でしょうな」


「流石俺たちの先生!俺たちにできないことを平然とできてしまう」


「注意を引いたのは俺なんだけどな。早く後処理をしなさいな。バドス」


「はいはい」


 バドスは袋をむんずと掴むと大蛇の前にバサバサとルークたちが採取した薬草を落としていく。


「餌をこれだけ撒いておけば当分は大人しくしているでしょうね。それでも出てきたら今度こそアンタの責任よ。ヴァルツ先生に手間ばかりかけさせて」


 アイリスは針のような視線をレベッカに突き刺す。




「まぁまぁ無事でよかったではないですか」


 ヴァルツはそう温かい視線を向ける。


 レベッカは何も答えられなかった。


 先ほどまで荷物持ちとして扱い、挙句の果てに置き去りにした老人。


 その老人が三人がかりでもどうしようもなかった魔物を赤子の手をひねるように制圧してしまった。


「あなたは一体……」


「ただの隠居老人ですよ。知り合いが多いだけのね」


 レベッカは顔を覆った。自分たちが忠告を無視してまでどんな危険な賭けに出ていたのか。そして自分たちが誰を軽んじていたのかを……

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