第20話 アースvsラーグルフ
ヴァルツたちが敵に向かっていくと同時に魔族たちも姿を現した。
アースの前に魔王軍の大将らしき鎧に身を包んだ魔族が現れ、剣を構える。
「やぁやぁやぁ!我こそは魔王軍支配派幹部の……」
「あ?うるせぇ」
アースは敵の紹介前にすぐに叩き切る。
「ぐはっ!人の名乗りを邪魔するとは貴様には戦士の誇りが無いのか」
「誇り?お前らにくれてやるものなんか何もないね。俺は速くお前を解体したいだけだ」
「こんな残虐な奴が勇者とは世も末だな。いやどの道終わりか。なんせ我らが人の支配領域も手に入れて新しい時代を作るんだからな」
「新しい時代だァ?それは俺が作るんだよ……人間も魔族も全て俺が支配してやる。逆らう奴らは皆殺しだァ!」
アースはそのまま対象を切り刻もうとする。
「だ、だから話の途中だぞ……あぁもうお前殲滅派といい勝負だよ。残虐性がな!」
魔族の大将ラーグルフは支配派の魔族ではあったがその精神は武人に近かった。
敵に関しては一定の敬意を払い、強者との正々堂々の勝負を求めていた。
強者であったはずのアースに向かっていったのだがそれが間違いだと気づくのに時間はかからなかった。
「我は勇者を相手にしているはずだが……」
落胆するラーグルフの視界にある存在が止まる。それは幼魔族だった。この付近で発生して迷い込んだのだろう。
「ラーグルフ様」
「あっ出てくるな!貴様では勝てない!」
その言葉が命取りだった。アースはそれを見てニヤリと笑うと幼い魔族を捕らえ、盾にするように前へ突き出した。
ラーグルフの動きが止まる。
「……何をしている?」
「どうした? 攻撃してみろ。こいつがどうなってもいいのか?」
「貴様卑怯だぞ!」
「魔族に大人も子供もあるか」
「自分に従わぬ者は皆殺し。弱者を盾にしてでも勝利を得ようとする。貴様は我ら支配派よりも、よほど残虐な思想を持っているようだな」
「黙れ! 私は勇者だ!」
「その称号が、貴様の行いを正当化するとでもいうのか?」
ラーグルフは幼い魔族を傷つけないように距離を取りながら、アースを睨んだ。
「勇者とは、随分と安い称号になったものだ。情けない」
ラーグルフは苦虫を嚙み潰したような顔をしたが、今目の前にいる幼魔族を何とかしなければ叩き切ることもできない。
「ほら何もできないだろ。すぐにその武器を置いて投降するんだな」
「わ、分かった。だからその腕を離せ」
「敬語ォ!」
「は、離してください……」
ラーグルフは首を垂れる。一体いつぶりだろうか。若い頃勇者パーティーが攻めて来た時でさえここまでの屈辱は感じなかった。彼らは奥で震えていた自分に抵抗の意思が無いとみるや見逃してくれた。そのせいで今また支配派を結成しているのは皮肉だがこの騎士道の精神は未だ彼の中に受け継がれている。
アースは高笑いする。
「ハハハ!俺は投降しろと言っただけだ。何も解放するなんて言ってねぇよ」
「なっ!」
アースの大剣が幼魔族を貫こうとしたが……実際に貫いたのはラーグルフの腕だった。
「がはぁっ!」
「ラーグルフ様!」
「良い……良いぞ早く遠くに逃げろ!」
そのまま幼魔族は逃げていく。
「いや全くこれはなんだ。自分は魔族であちらが勇者であるよな。普通逆だろうよ……」
そんな思考すらさせないまま大剣はラーグルフを貫く。
「ぐふぅ!」
急所は外れていたため即死はしない。しかしいずれ死ぬだろう。
「さぁすぐ死なせはしねぇぞ。財宝のありかを教えてもらおうか」
「ざ、財宝?我はそのありかを知らない!」
「嘘を付けぇ!絶対あるだろ俺に寄こせ!」
アースは再びすごい剣幕で責め立てる。その目には勇者としての光ではなく賊としての闇が宿っていた。




