第18話 同士討ち
リコルドの報告を受け、他国の冒険者もすぐに支度を整えてやって来た。
「遂に魔族が出たか」
「だが恐れることはない。我々にはヴァルツ様がいる!」
完全にヴァルツ頼りだ。ハリアーはそんな自国を情けなく思ったが、実際ヴァルツに期待しているのも事実だった。
「頼みますよ。ヴァルツ殿」
しかしオリエンス王国の勇者と言えばそうもいかない。なんせ今まで自分が回していた現場に急にヴァルツが出現し、ランゴ王国、いや他国の冒険者を纏め始めている。
そんなの納得がいかなかった。
魔王軍との前線。
ヴァルツは杖を構え、迫り来る魔族たちを冷静に観察していた。
魔族にもいくつか種類があり知性の低い動物のような魔物と知恵を持つ人型の上級魔族がいる。すぐに向かって来たのは動物の様な魔物だった。
「サイモン!」
サイモンが立ち塞がりクロスボウから矢を放ち魔物を貫いた。しかしそれだけでこの流れは止まらない。
「ちっ数が多くて統率もある。飼いならされている奴で上級魔族が指揮してるなァ?」
リコルドが嫌味を言うとすぐにカレンが飛び上がる。
「私が打つ。『土魔法……弾雨!』」
カレンの周囲に小さい金属が出現する。
これらは全てカレンが精製した鉄の弾丸である。
「ファイア!」
叫ぶと弾丸が雨のように射出された。魔物を貫くがまだ安心はできない。
アニスが目を閉じて勢力を分析する。
「奥に強い魔力を感知。十人はいるよこれは前哨戦に過ぎない。問題は後方!」
「なるほど。この地形では、正面から押し返すよりも、右手の丘を利用して回り込んだほうがよさそうですね。そこには私とリコルドで行くのでサイモンはここでカレンと壁を……」
「何を悠長に話している!」
背後から怒鳴り声が響いた。
オリエンス王国の勇者、アースだった。
「この程度の連中に、いつまで時間をかけている! 貴様が本当にかつての勇者一行だというなら、さっさと魔王軍を蹴散らしてみせろ!」
「この程度の連中?敵を侮りすぎでは?一撃も入れていないのにイキらないでください」
カレンは明らかに不満そうな表情だ。すぐにヴァルツが訂正する。
「アース殿、今は敵の分析をしているのです」
「黙れ!」
アースは返事も聞かず、大剣を振り上げた。
「それで時間稼ぎしているだけだろう。役立たずの老人は、ここで死ね!」
次の瞬間、刃がヴァルツの身体をかすめ、衣服が裂けた。
「くっ……」
ヴァルツの身体に傷が走り、赤いものがにじむ。背後からの味方撃ちなど想定している訳もなくうずくまってしまう。
ほんの一瞬、戦場の音が遠のいた。
「…………あ?」
カレンが振り返った。普段から口が悪く、他国にも平然と嫌味を飛ばす彼女が、珍しく言葉を失っている。
「今……先生に何をした?」
その目にはあの光はなく、ただただ黒かった。




