第15話 秘密会談
ハリアーの要請を受けたヴァルツが一人で北方に赴いている間、ハリアーはまた仕事をしていた。
「ここに入るのが嫌なんだよ……」
扉をコンコンと叩く。中からけだるそうな声が聞こえる。
「何だよ」
「ハリアーです」
「ハリアーか……入れ」
ハリアーが中に入るとそこにはアースが座っていた。
部屋を見渡すとあちこちにゴミが落ちている。
来て数日でこんなに汚して……ハリアーは頭を抱える。
この建物は共用の者の為基本男メンバーは雑魚寝だ。汗臭くて辛いが冒険者からすれば雨風しのげる寝所があるだけ幸いなものである。
それをこの勇者は「他の奴らと違って偉いんだ!」と騒いだ結果一番広い部屋をアースの一人部屋とすることで落ち着いた。
むしろ一人部屋にしてよかったかもしれない。いつ出撃があるか分からない緊張の中でここまで汚されては同室と揉めるだろうから、それを避けられるだけでもいいのかもしれない。むしろ半ば隔離部屋のようなものかもしれないな。
ハリアーは内心笑った。
「早く要件を言えよ。俺は忙しいんだ」
何が忙しいだ。放っておいてもどうせ食って寝るだけだろう。そんなことがあるかと思ったが、すべて自分たちの目的の為だ我慢しよう。本当はやりたくないけど……
「ヴァルツとか言う人を知っていますか?」
「あぁ知ってるよ。昔の勇者でリコルドの親父だろ?その半隠居人がどうした」
「その人がここに来ましてね」
「はぁ?あんなのが役に立つのかよ。居ても厄介だろ」
「いや結構優秀ですよ。なんせ彼の書いた『魔導論基礎』は全魔法使いの必読書です」
「へぇ魔法かよ。あんなまやかしに頼っているようじゃまだまだだなぁ」
古来より続くハリアーの魔法をバカにされたことにハリアーは内心激怒する。
こちらが本気を出せばアース程度の勇者魔法で屠れる自信もあった。
「それでそのヴァルツ殿がいらっしゃいますので。ぜひとも部屋の共用を……」
「あ?!誰があんなジジイと同じ部屋にいるんだよ。介護者か」
「それなら三人部屋に移ってください。荷物を減らせばいけますしできるだけ穏やかな人を手配しますので」
しかしアースは首を振る。
「やだね。そのジジイを三人部屋に入れろ。もしくは外で野ざらしにしておけ。ほらこんなに広くて日が当たって空気もうまいじゃないか。アッハッハ!」
アースの傲慢さにハリアーの拳に籠る力が強まる。
「……すぞこの野郎」
「ん?」
「いえ何でもありませんよ。本当に何でもないです。と言うことで頭に入れておいてくださいね。部屋はコチラで調整しておきます」
「あぁ頼んだぜ」
ハリアーが部屋を去っていき、アースはまた寝転がる。そして枕元に置いてあった冒険者名鑑に手を伸ばしぺらぺらとめくる。そして一つのページに目を止めた。
「賢者ヴァルツか……これは面白いことになりそうだ」
当然アースが思いついたことはろくでもないことだったのだった。
そしてこれが連合軍に亀裂を生むことになってしまう。




