第13話 侵攻会議
レベッカが戻って来た時ビビット王国は夜だった。
「私よ入れなさい」
「こ、これはレベッカ様!今すぐ入れます」
すぐに衛兵が返事をして入れる。その途中で衛兵が尋ねる。
「ところでルーク様とアゴラス様は?」
「ここ」
レベッカは後ろに引きずっている馬車の中にある袋を指で指した。
「そうですか……」
「そうよ全く役に立たなかったと言えるわ」
広間には人々が集まって熟議をしていた。
「レベッカか。どうかしたか?」
「ランゴ王国でルークとアゴラスが……あのヴァルツとか言う爺さんのせいで!」
レベッカはそう泣きわめく。当然本心ではないウソ泣きだ。本心ではルークもアゴラスもあの国を攻略するために役に立たないと侮蔑していた。
「何と勇者ルークが敗れただと。恐ろしいことだ」
「しかもヴァルツは生き残っているという。勇者が亡くなったのにだ」
「恐らくヴァルツを庇わされたのでしょう。優しさに包まれた連中でしたから」
タダの自滅なのにも関わらず貴族たちはあえて事件を大きく扱う。それは勇者ルークが死んだことを利用し国内の不満を反らそうとする魂胆だった。
「陛下かねてより領土の拡大をもくろんでいる我々にとってこの状況を利用しない手はありません。あの小国に目に物を見せてくれましょう。すぐにヴァルツの引き渡しの指示を」
「あの国が認める訳無いだろうな。ヴァルツはあの中でも英雄扱いだ」
「それならランゴ王国を攻撃するしかないか。こちらは大国何も怖れることはない」
軍部の責任者がそう意気込む。
しかしビビット王国の冒険者連盟の責任者ラックは難色を示す。
「しかし私は反対です」
「何を弱気なことを言うか。ただの老害の魔法使いだろう」
「いえいえいえそんなことは無いかと」
責任者は首を振って否定する。
「ヴァルツ殿は全盛期の力を喪ったとはいえ今でもAランク相当の実力。並の冒険者では歯が立ちませんよ」
「冒険者の端くれなのにその程度で怖気づいたか。レベッカよ貴様から見た様子はどうだ?何とかしてヴァルツに勝てないのか?」
強硬派の貴族が尋ねるとレベッカは首を振る。
「ラックさんが言う通りサシでは厳しいかもしれません。しかし普通に洞窟が崩されても脱出できなかったことを鑑みるに身体能力は相当落ちているはず。そこを突けば何とか……」
「そうだぞ。ワシは別に一対一で相手しろとまで入っておらん。あの時の話を聞く限りわざと落としただけで死んだと思って放っておいたのが良くなかった。集団で囲い込んで追い詰めれば今度こそ討ち取ることが出来よう」
いつの間にか勇者が死んだことに対する責任の話からヴァルツを討ち取ることに話がすり替わっている。
「仮に一対多数で半ばリンチのような形で討ち取れたとしても後が怖いぞ……」
ランゴ王国にはヴァルツ以外にも人材ならいくらでも溢れている。その連中が全員で牙をむいたとするならば……あちらの冒険者事情を熟知している彼からしたら決して小国と舐めることはできない。
ラックはそう苦虫を嚙み潰したような顔をするが誰も話を聞いてなどいなかった。




