第12話 侮辱
北方の魔王軍に対抗するために編成された連合部隊。ランゴ王国側の責任者であるリコルドは勇者パーティーの賢者ヴァルツの次男である。
父譲りの身体能力は非常に高く自力でA級冒険者となっているが、その台頭をよく思わない一部からは両親の血統によるえこひいきでの出世と揶揄されていた。
「まったく親父はどこまで人に心配をかけるんだか。もう若くねぇんだよ」
そう呟きながら山を下り中腹に構えられた建物に入っていく。
その中には数人の武人が待機していた。各国から集められた英雄たちだ。
「どうでしたかなリコルド殿。魔王軍の様子は」
「いや目立った動きはねぇな。はるか遠くを魔獣が群れでうろついているくらいか。それもこっちに来るには時間がかかるだろう」
そう言ってリコルドは小さく椅子に座る。
その途端各国の噂話が始まった。座っていた勇者の一人オリエンス王国のアースがひっそりと口を開く。
「それよりも聞いたか?ヴァルツとか言うジジイが殺されかけたんだってよ」
「聞いた聞いた。何ともビビットの勇者ルークのパーティーが襲ったとか。互いに落ちぶれたもんだな」
アースの話を聞いて知り合いらしき戦士が侮蔑を込めた目でチラチラ見ている。
「ヴァルツは昔こそ世界を救いうる英雄だったのかもしれないけども、今は衰えて王国の隅で隠遁生活をしているというのだから、完全に終わった男だよ」
その瞬間バンっ!
カレンが机を思いっきり叩き威嚇する。
「我が国の英雄に対してその態度。当国への侮蔑と捉えても?」
「止め給えカレン殿。神聖な国際交流の場ですぞ!」
「一国の要人の陰口を言いあうのが国際交流か。先生の何も知らないのに」
確かにここにいる若い英雄たちは冒険者時代のヴァルツを知らないだろう。しかしランゴ王国にとっては勇者パーティー解散後に教師として国内で数多の冒険者を育て上げ、陰になり日向になり支えている存在、カレンの世代であれその名は轟いており決して外様の冒険者たちに軽んじられる存在では無いのだ。
「何も知らないね。むしろ知れるほど実績が上がってきてないって事だ。大体お前は態度がデカいぞ。見た目普通の冒険者でしかなさそうなのに勇者に指図するな」
「我が国は上級冒険者を十人も出している。ただでさえ小国な中で大国のあなた達の二倍の数の負担、少しはこの場で敬ってもらうのが筋だね」
カレンが脚を組みながら両手を広げて指で十を表現する。
「勇者を寄こしていないのに負担だと。笑わせるな」
アースはケラケラと笑う。
「言っておくが勇者一人と比べたらお前ら冒険者十人くらいカスみたいなもんだぞ?あ!そうかこの国は勇者一人連れてこられない弱小国家だったかい」
「その勇者の肩書とやらが本当に見合う力があるなら。もうこの時代名前だけならいくらでも詐称できるし価値なんてないよ。実際アンタはバカにしていたけれど、本気でうちの先生とぶつかったら普通に負けそうだ」
ランゴ王国で一二を争う戦闘狂のカレンは不要な挑発をする悪癖があった。アースは額に青筋を浮かべる。
「あ?やんのか。お前くらい剣の錆にしてやるよ」
「忘れていたけどアンタ私にも負けるから。逆にその兜の通気性を良くしてやる。その前にお陀仏だろうが」
カレンとアース、特に狂暴で知られる冒険者同士の一触即発……しかし血で血を争う展開とはならなかった。
「待てカレン。ここでやり合えば不利になる」
リコルドが立ち上がってカレンを制する。
「わ、悪いなリコルドさん」
リコルドはカレンを見た後でアースに向き直る。
「なら示して頂こうか。本当に勇者足る存在であるのかをね」




