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13 遥佳と真琴はドリエータで囲まれた1



 ドリエータにある治療院は、医師こそハミトとレイノーの二人だけだが、手伝いの人が増えたことでかなり楽になっていた。

 病院は白というイメージがある遥佳はいつも白いエプロンに白いフードをつけて働いている。食事の用意、配膳、食器洗い、洗濯、掃除、片付け、お金の管理などと、治療以外の様々な雑用をこなしている遥佳は、治療院における午前中だけの女主人だ。

 そうして今日も遥佳はハミトの診察を横で手伝っていた。診察時のお手伝いは、白い帽子に白いマスク、白い割烹着スタイルである。


「えーっと、ちょっと棚の上に避難っと」


 遥佳がポケットから取り出したスケッチを棚に置くのは、ハミトとレイノーにとって見慣れた動作だ。街角に貼られていたものを遥佳の父親が真似して描いてお守りにしていると説明したら、なるほどと頷いて、スケッチ避難用スペースをどの部屋にも作ってくれた。

 だから汚すことなく、いつもスケッチは遥佳と一緒なのである。


「えーっと、黴菌(ばいきん)が死ぬまで沸騰させ続けて、と」


 片隅にある小さな流しでぐつぐつと煮沸(しゃふつ)消毒をしたら、消毒用の容器に移す。

 かなりひどい炎症を起こしていた患者に、ハミトは切開するしかないと考えたところだった。

 

「ハールカ。腕の炎症以外にも気づくことはあるか?」

「お腹が痛いの、飲んだお薬のせいかも? 傷口を綺麗に洗わなくて、だけど腫れて赤くなってきたから、びっくりして慌てておうちの人のお薬を飲んだのかも。それ、腫れを治すお薬じゃなかったかもしれない」

「そうなると腹痛と腕の痛みは別ものか。ありがとな、ハールカ」

「うん。スカルペル、消毒できた。あと、これ、下に敷くのも用意できた」

「ありがとう」


 ハミト達にとって、遥佳が助手をしてくれるのはとても有り難い。患者が言いたがらないことを察してくれるので、判断する時間が短縮されるからだ。

 指示を出す前に用意していることも多かった。

 だから遥佳が手伝ってくれる時はレイノーと取り合いになる。

 そうして治療をひとしきり終えたハミトは、遥佳とお茶の休憩をとった。


「ここ数日、ハールカはこっちの手伝いばかりだな。俺達は有り難いが、大丈夫なのかい? 変な気を遣ってないかってレイノーも心配してた」

「あのね、えっと、内緒にしてくれる?」

「いいよ。何があったんだい?」


 遥佳はハミトの耳を手で覆うようにして小さな声で囁く。


「あのね、二階の一番端っこに入ってきた人ね、騎士様らしいの。独身で真面目でお金持ちでとても人気があるんですって」

「ああ、そうだったね。支払いもきちんとしてくれるし、いい患者さんだ。見舞客が多すぎてうるさいことを除けばね」

「その人ね、ちょうど怪我する前、好みの女性を聞かれて、怪我や病気をしても嫌な顔をせず支えてくれる人って答えたらしいの」

「職業柄かな。うん、それで?」

「それでね、あの騎士様への配膳とお洗濯、お掃除だけ手伝わせてくれって、マリーさんって人から頼まれたの。個人でやる分にはご自由にって答えたの。だけど騎士様、

『赤の他人のお嬢さんを使用人扱いできない。ここはまとめて治療をする場所だし、世話もまとめて行われているよ』

って、マリーさん、断ったらしいの」


 人見知りが激しい遥佳だが、ハミトには長く喋るようになった。

 順序立てて説明する遥佳の話を、ハミトは目を細めて聞くのが常だ。

 イスマルクもそうだが、ハミトも遥佳を見つける度に頭を撫でる癖がある。

 周囲に遥佳のことを聞かれた時には妹だと答えている為、遥佳はこの治療院における経営者側の人間だと思われていた。


「外堀埋められるのが怖かっただけだろう。ハールカ、君も分かってて騎士の苦難を見捨てたな?」


 ハミトがニヤリと笑い、おどけた顔で尋ねてくる。


「え、・・・えへ。だけどあの騎士様もひどかったのよ。お見舞いの人達もいたのに、ちょうど通りがかった私を引っ張りこんで、

『お兄さんを少しでも手伝おうと、皆に分け隔てなくお世話する君は素敵だ。私が10才若ければ求婚したよ。実際、私の見舞いに来た筈が、君のことを聞く奴ばかりだ』

なんて言ったんだもの。おかげで私、マリーさんに睨まれたんだから」

「やられたことをやりかえしただけじゃないかな。迫られて困ってる自分の苦境を見捨てたハールカに、騎士は復讐しちゃったか」

「う。・・・でね、今度はローゼさん、フィリシラさん、ミーネさん、デリラさん、アンナさんがやってきたの。私がしてるお料理と配膳、お洗濯、お掃除、他の人の分もまとめてやるから代わってって言うから、今、任せてるの」

「なるほどね。ただ、その五人のお嬢さんは騎士の部屋の窓から見えるお仕事はするようだが、見えない所では連れてきた使用人に仕事をさせてるようだ」

「だから任せられるの」

「なるほど」


 ちゃんと説明できた遥佳は満足そうだ。


「私ってばとってもしっかりしてるのよ。五人ものお手伝いさんを使って動かしちゃってるんだから」

「天才じゃないか。どんなお屋敷でもハールカがいれば完璧だ」


 大きく()()って驚いてみせたハミトだ。


「これでも人を見抜く目はあるんだから」


 威張(いば)ってみせる遥佳にハミトはちょいちょいと指先で手招くと、近寄ってきた耳元で尋ねた。

 人を疑わずに寄ってくる遥佳は、ハミトの目にはすれていなくて愛らしいと映る。


「で、その騎士とはどんな密約を結んだのかな? そのお嬢さん達と連れてきた使用人を実質管理してるのは彼だろう?」

「・・・な、何故それを」

「君はけっこう顔と行動に出るからね。患者の家族が君からお礼にもらって帰る野菜の量を増やしてるんじゃないかって、気になってたんだ。だから浮かない顔をしてたんだろう? そのお嬢さんの家で働いている使用人なら真面目に仕事するし、そういう人達が出入りしていたらハールカの目を盗んで野菜を持ち帰ることもできない」


 ハミト達もそこは患者に注意していたのだが、入院するような自分達の為に来てくれる家族には強く言えないと、そんな感じで効果はなかった。


「どうして分かっちゃったのかしら。えっとね、そりゃ手伝ってくれたなら少しはって思ってたんだけど、お手伝いしないで持って帰る人が出始めちゃったの。マーコットも、病気の人に食べてもらう為に持ってきてたからそれは違うよねって言ってくれたんだけど、そうしたら私達がいない時間帯に持っていくようになったの」

「そうだな。ごめんな。俺達がちゃんと注意すべきだったのに」


 遥佳は首を横に振る。


「ううん。ハミトさん達はお仕事中だったでしょ。だからしょうがないの。・・・でね、騎士様もね、お嬢さん達にお見舞いだって病室に居座られるのが嫌だったらしいのよ。どうせお嬢さん達は使用人を連れてくるだろうし、だから私は騎士様にお嬢さん達を誘導してもらって、騎士様は私の仲介でヴィゴラスとお見合いするってことで手を結んだの」


 そこでハミトは変な表情になった。


「ヴィゴラスとお見合い?」

「そうなの。あの騎士様、恐怖に耐える訓練したいって、ベンチに座った状態でヴィゴラスと無言で見つめ合ってたわ。マーコットなんてすぐに飽きちゃって欠伸(あくび)してたの」

「変な人種もいるんだな」

「あんな可愛いヴィゴラスじゃ何の訓練にもならないのにね。ヴィゴラスにご飯をあげるのを手伝ってもらったら、それだけでお礼にって、お見舞いに来た人達にお水の汲み上げやお湯を運ぶのを頼んでくれるようになって、だから体を拭くお湯もかなり楽に用意できるようになったの」

「やれやれ。あの騎士が退院する時にはこっそりハールカを荷物の中に入れてないか、ちゃんと見張っておこう」

「そこは大丈夫っ。なんかね、騎士様はとても敬愛してる方がいるらしいの」

「おやおや。恋の相談にも乗っていたのかな、このお嬢さんは」

「うふふー、そこは内緒なの。だって大切なことでしょ?」


 ほのぼのとした時間が流れる。


「おー。やっと終わった。俺も茶ぁもらっていいか? マーコットはまだ戻ってないのか? また寄り道して変な玩具を買ってこなきゃいいんだが」

「レイノーさんのならそこよ。イスマルクの特製ブレンド健康茶」


 見慣れない玩具(おもちゃ)を見つけるとつい買ってしまう真琴だが、それの対戦相手をするのはレイノーだ。

 文句を言いつつも、レイノーがのめりこんで真琴が治療院で泊まりこむこともあったりする。

 要はどっちも()けじ(だましい)なのねと、遥佳は思っていた。


「ああ、あれか。だけどその健康茶って何が入ってるんだって、聞き出したら肌が綺麗になるとか言ってたぞ? あいつ、しれっとハールカのことしか考えてねえよな。送ってくる荷物も女の子用ばかりだし、マーコットのこと忘れてねえか?」

「そ、そんなことはないと思うんだけど。単にイスマルク、マーコットの好みが分かってないだけだと思うの」


 一体どこへ何しに行っているのかと言いたくなるぐらいに、あちこちからイスマルクの荷物が届く。

 けれどもそれが、彼が元気で無事なのだと遥佳に伝えてくるのだ。


(早く無事に帰ってきてね、イスマルク。私達、待ってるから)


 そんな風に、多少のトラブルはあっても遥佳達の日常は続いていた。






 治療院の毎日は忙しい。

 けれども真琴は畑と家畜の世話がお仕事なので、牛を使って芸が出来ないかと考え始めた。

 裏庭の柵の中で草をもしゅもしゅと食べている山羊は今日も元気そうだ。


「3+4は7って、ちゃんと犬が7回吠えてたんだよ。それなら牛だって7回モーとか言ってくれたらどうにかなる感じするよね」

「サーカス団で仕込まれた動物と一緒にするのはどうかって思うの。この間、牛の上で逆立ちしてたので十分じゃない」

「できれば牛の上に山羊が乗って、その山羊の上に私が乗るぐらいを目指したい」

「牛も山羊も可哀想すぎると思うの」


 けれども真琴はぷぅっと頬を膨らませる。


「遥佳はそーやって私がいじめっ子みたいに言うけど、私は知っているのです」

「何を? 私、別に何もしてないもの」

「ヴィゴラスに花の冠と花の首飾り、そして尻尾に花の輪っかをつけてたことをっ」

「そ、それは・・・っ」


 まさか真琴に知られているとは思わなかった遥佳は、後ずさった。

 自分にご褒美の穀物他入り特製バーをくれるのではなかったのかと、牝牛が悲しそうな顔をする。

 慌てて遥佳は引っ込めてしまった栄養たっぷり特製バーを、牝牛に与えた。


「可哀想に。ヴィゴラス、男の子なのに。しかも遥佳が可愛いって言うから我慢してさ」

「だ、だって、だって可愛かったんだものっ。男の子か女の子かなんて見た目じゃ分からないし、お花で飾ってあげたら、プリンセスな鳥さんみたいで可愛かったんだものっ」


 びしぃっと、真琴は遥佳に人差し指を突きつける。


「そんなヴィゴラスはしょんぼりとした顔で図書室に行き、『男として意識させるには 口説き方編』を私と読んだのですっ。・・・どうだっ、幼気(いたいけ)な男の子の心を傷つけたことを、これで認めるがいいっ」

「ごめんなさい、その本のチョイスが分からない。というより、ヴィゴラスは文字を読めるの?」

「さあ? 私が読んであげたんだよ」

「それって真琴が読みたい本をヴィゴラスに聞かせただけじゃない。私のせいにしないでよ」


 所詮(しょせん)は真琴の言うことだったと、遥佳は取り合わないことにした。

 自分にも欲しいと寄ってきたもう一頭の牝牛にも特製バーを食べさせる。


「本を選んだのはヴィゴラスです。・・・可哀想なヴィゴラス。男の子扱いされなかったことに傷つき、だから男の子として見てもらえるように頑張ろうって思ったんだね。哀れだよね」

「哀れなのはそんな本を読むあなただと思うの。どうしてそんな本が図書室にあったのかしら。あそこ、けっこう専門的な本が揃ってたと思ったのに」

「私が買ってきたからじゃない? 本屋で勧められたから買ってみた」

「そんなの買わないでよ、真琴」


 肝心のヴィゴラスは治療院に二人を送り届けると、いつもの通りどこかに行ってしまった。


「ヴィゴラス、せっかくジンネルに来たんだからって色々お勉強中なの。変なこと教えないでね、真琴」

「そうなんだ?」

「毎日、どんな建物を見たけど何のためにあるのかとか、こんな格好をしていた人は何してる人かって、私に訊いてくるもの。心がわくわくキラキラぽんぽんしてて、とっても可愛い」

「いっけどね。遥佳はヴィゴラス可愛さのあまり、グリフォンの本質を見失っていると思うな」

「そうかしら。黄金も宝石も幸せそうに眺めてるし、ヴィゴラス、グリフォンの本質は見失ってなんかいないと思う」


 広い裏庭でそんな会話をしていた二人だが、なんとなく治療院の前庭の方が騒がしい気がして振り返る。


「なんか騒がしくない? 馬が沢山いるっぽい?」

「そうね。凄く興奮している感じがする。山賊とか、大勢の被害でも出たのかしら。だけど怪我してる感じはしないわ」


 ガヤガヤしている物音と言い争うような声に気づいた二人は、治療院の前庭へ様子を見に行った。

 入院していた患者達も病室から出てきたらしく、不安そうな顔で、前庭の様子を見ている。

 嫌な予感がした真琴は、遥佳の前に出るようにしてその人達を掻き分けて前へと進んだ。遥佳もまた真琴の後ろに続く。

 馬に乗った騎士達がいて、物々しい気配は槍を持った兵士達のものか。


「ハミトさんっ」


 遥佳が真っ青になって悲鳴をあげる。

 そこには兵士達に囲まれているハミトとレイノーの姿があった。






 先頭にいた騎士は、ハミトとレイノーに何やら問い質していたようだが、遥佳と真琴の姿を認めると、二人には興味をなくした様子だった。


「いるではないか。つまらぬ嘘をつくものではない」

「だからっ、その子は大事な預かりものなんだっ。何かあったなら俺が代わりにっ」

「何を愚かなことを。代わりになるとかならぬとかの問題ではないのだ。まあ、いい。こちらも手早くすませたい。・・・そこの少年、前へ出てこい」


 真琴は、ハミトとレイノーの様子を確認すると、遥佳を背後へと押しやる。


――― いいから下がってて。どうにかなるって知ってるでしょ?

――― え、ええ。

――― ヴィゴラスか馬で逃げて。大丈夫。

――― うん。


 そんな二人から人がどんどん離れていくが、遥佳は言われた通り、後ろへと下がった。


「僕に何か用? こんな風に囲まれる覚えないんだけど」

「確認がとれたらすぐに解放される。少年、マーコットという名前だそうだな。聞きたいことがある」


 槍を持った兵士達が真琴を取り囲んだが、そこに殺気はないと判断した真琴はその理由を考える。


(私達の素性がばれたなら、遥佳を見逃すのはおかしい。じゃあグリフォンを手に入れたいって考えた人がいたかな。そうなると一度は連れていかれて、適当に脱出した方がいっか)

 

 その騎士は、あまり体力とは無縁そうな男も連れていた。


「何? それよりお医者さん達、解放したげてよ。僕に用なら関係ないでしょ。ここ、少ない人数で格安治療してるから忙しいんだよ」

「少しは恐れ入ったらどうなんだ。まあ、いい。少年、君は以前、貼り紙を真似して描いたスケッチにコードバンの額を作ったそうだな。そのスケッチを見せてもらいたい」


 びくっと遥佳の肩が跳ねる。

 真琴はその焦げ茶色をした瞳を(けわ)しくした。


「悪いけど、もうここにはないんだ。あれ、欲しいって言う人がいたからあげちゃった。それなりにお小遣いももらえたしね」

「それは誰だ?」

「知らない。この街の人じゃなかったと思うよ。馬に乗ってたもん」


 なるほどと、先頭にいた騎士は考えた様子である。

 何人かの騎士達がこそこそと話し合った。

 そうして少し後ろにいた騎士が前に出て真琴を睨みつける。


「では、君の家を捜索することになる。街にある部屋にはあまり帰ってこないそうだな。どこで寝泊まりしているのか、その場所も吐いてもらわねばなるまい。また、そのスケッチが出てくるまで君には色々と思い出してもらうことになるだろう、牢でな」

「ちょっと待てっ。こんな子供を拷問にかける気かっ。たかが絵だろうっ」


 レイノーが思わずといった様子で叫び、兵士達を押しのけるようにして真琴を背に隠した。


「その少年を(かば)うのなら、お前らも盗賊の一味として捕縛するだけだ。子供とは思えぬその金の出所についても詳しく話を聞く必要がある」

「てめえら、なんてことを・・・」

「レイノーさん、気にしないでいいよ。別に僕、盗賊でも何でもないし。それにうちの別荘に行きたいっていうなら勝手に来ればいいだけだもん」


 真琴はへらっと笑うと、レイノーの背中をぽんぽんと叩いて前に出た。


「お医者さん達は関係ないよ。毎日おうちに帰れないぐらい朝から晩まで働いてる人にどんな冤罪かける気なのさ」

「口の減らぬ小僧が。まあ、すぐに素直になれるだろうよ。その小さな背中が血に染まればな。・・・連れていけっ」


 その号令に、兵士達が真琴へ槍を突きつける。


「待ってっ! ・・・待って。その絵ならここにあります。だからマーコットにひどいことしないで」

「駄目だよ、ハールカッ。僕は大丈夫だってっ」

「そんなわけないでしょうっ。あなたが怪我でもしたらっ」


 遥佳は白いポケットから焦げ茶色の革で覆われたスケッチを取り出した。


「だから、マーコットに乱暴なことしないで」

「最初からそう素直に出せばいいのだ。・・・安心しろ。ちょっとした確認をすれば終わりだ。すぐに解放されるし、牢にも連れていかない。全く子供のそれを取り上げたいわけじゃないのだ」


 ぽろぽろと涙を流す遥佳に罪悪感が疼いたか、牢に入れると言った騎士は唇を歪めてその場に不似合いな男を振り返る。


「どうぞご確認を」

「そうですな。・・・お嬢さん、泣かないでいい。こちらはとある絵を捜しているだけなのだよ。すぐに返してあげるから。騎士様方もこれがお仕事でね、本気で怒っていたわけじゃない。ほう、なかなかいい額じゃないか」


 そう言いながらも騎士から絵を受け取ったその男は、スケッチをまじまじと何度も見返し、信じられないといった顔になる。


「こ、これは・・・」

「どうした、画家殿?」


 わなわなと震える手で、画家と呼ばれた男は一つ一つの線を確かめるようにして身を震わせた。


「これは、・・・本物だ。聖神殿で見つかり、王城に飾られ、そうして盗まれたスケッチと相違ない。線の一本一本まで見たのだ、間違いない。これこそが盗まれた絵だっ」

「なんだとっ!?」

「勘違いじゃないのかっ、画家殿っ? それこそ貼り紙を真似して描けば同じ絵になるだろうっ」

「それこそあり得ないっ。私が貼り紙用に描かなかった花もここには描かれているっ。これこそが本物の女神様と神子様方を描いたものだっ」


 ざわざわっと、騎士達や兵士達が顔を見合わせる。


「その少年を捕らえよっ。王城から絵を盗み出した犯人だっ」

 

 騎士が号令をかければ、そこに真琴の姿はもうない。


「ああっ」


 画家と呼ばれた男が叫んだかと思うと、その手の中にあったスケッチは、奪い取られていた。

 兵士達の槍よりも高く跳んだ真琴がその手から絵を奪い返すと、更に人間業とは思えぬ動きで治療院の前庭にある来客用馬小屋の屋根に跳んだからだ。


「誰が盗んだって? 生憎とこれを持ってていいのはお前達じゃないんだよ。じゃあねっ」


 さて馬小屋の屋根からどう逃げようかと考える真琴は、この絵こそが彼らの欲しいものだと理解している。

 

(これをまた渡してしまったら、今度はどこに仕舞いこまれるか分からない)


 そこへ騎士達の号令が飛んだ。


「逃がすなっ。矢、構えーっ。女神様の絵を盗んだ大犯罪人だっ。逃がすなーっ」

「なんで僕が大犯罪人なのさ。全くもう」


 たかが父の描いたスケッチ如きに大袈裟なと思った真琴は、小屋の屋根から大木の枝に跳び、更に山へと逃げ込むことに決めた。

 シャツの中にスケッチを隠すと、体全体をばねにして腕の力も使い、大きな枝へと車輪を回すかのような動きでくるりと巻きつき、そうして次の離れた枝へと移る。


(あとは走ってくしかないか。馬が入りにくい道はイスマルクといつも行ってたから分かってる)

 

 そんなことを考えた真琴の背中に何か熱いものが走った。


(え? 痛い・・・)


 続いて肩に刺さった矢が、そして刺さらずに飛んで行った矢の数々が、真琴にその現実を教えてくる。


(やばっ。本気で逃げないとっ)


 それまでの大胆ながらも余裕のあった動きが嘘のように、真琴は素早く地面に降り立つと、山に向かって疾走を始めた。


「真琴ーっ!! いやああーっ!」


 そこへ遥佳の大きな悲鳴が空を裂く。


(泣かないで、遥佳。大丈夫だよ)


 けれども捕まったら終わりだ。彼らは本気で真琴を殺してでも絵を奪う気なのだから。

 だから真琴は山に向かって全速力で走った。




 それは遥佳にとって悪夢の時間だった。

 自分達が渡した絵を、彼らが本物だと鑑定してしまった時から。


(嫌よ、嘘・・・。こんなのって・・・)


 矢を構えた兵士達は本気だ。

 真琴は暢気(のんき)に構えているようだが、彼らは女神シアラスティネルに対して不敬を働いた少年を許す気などない。


「絵は渡しちゃっていいからっ。この人達は本気よっ」


 皆が指を差して言い合う声、がちゃがちゃと鳴り響く槍や剣の音、それらに紛れて、怒鳴る遥佳の声は真琴に届かない。


「ハールカ、君だけでもっ」

「だけどハミトさんっ、マーコットがっ」


 駆け寄ってきたハミトに縋りつくようにしながら、遥佳はそれを訴えようとした。


「いいから逃げろ、ハールカ。興奮した奴らなんて聞く耳もたねえ。ヴィゴラスは裏庭だなっ?」

「それが、いつも通り遊びに行っちゃって」

「使えねえ」


 レイノーもまた遥佳を支えるようにして、肝心な時にいないグリフォンを嘆く。

 そこへ兵士達が矢を構えた。


「やめろーっ! その子をぜってぇっ傷つけんじゃねえっ!」

「邪魔するなっ」

「そいつを押さえつけろっ」


 地面を蹴って慌てて駆けていったレイノーは、兵士達の前で手を広げて止めに入ったが、他の兵士達に取り押さえられる。


「レイノーさんっ」


 遥佳がそれを止めてほしくて名を呼べば、矢が一斉に放たれた。


(え? 嘘・・・)


 その内の一つが真琴の背中に鮮血を広がらせる。

 遥佳に理解できたのはそこまでだった。


「真琴ーっ!! いやああーっ!」


 いつも一緒だった自分達。


「真琴っ、真琴っ、真琴ぉーっ」


 城から父の形見を取り戻してくれた、優しい姉妹。この世で一番大切な二人の一人。


「いやあーっ」

「落ち着けっ、ハールカッ」


 錯乱する遥佳を止めようとするハミトの声も、今の遥佳には届かない。


「放してっ、真琴ーっ」


 どうして。どうして、どうして・・・。

 こんなこと、あっていい、はずがない・・・。


 ぐらりと、地面が揺れる。風が、大きくうねった。


「うおぉっ」

「うわあっ、ぎゃあっ」

「ぐぉおおおっ」


 大きく揺れた地面に馬が足を取られ、何頭かはドサッと横倒しになった。

 凄まじい突風が、兵士達をまとめてなぎ倒す。

 馬に乗ろうとしていた騎士達はバランスを崩して地面に転がり、持っていた剣で手や足を切ってしまった。

 何人かは落馬し、兵士達の持っていた槍も手から離れて転がったものだから、それで怪我をする者が続出する。


「止血をっ」

「女神様のお怒りだっ」

「大罪人を逃がした女神様の怒りだっ」

「少年を追いかけろっ。何があろうと捕らえるんだっ」


 そんな声を聞きながら、遥佳はふらりと倒れた。


「ハミトッ」

「気を失っただけだ。恐らく心が耐えられなかったんだろう」


 駆け寄ってきたレイノーに、ハミトが答える。

 レイノーを押さえつけていた兵士達も、突風で飛ばされた剣や槍で腕や足をざっくりと切ってしまった。そうして拘束が緩んだのだ。

 ちゃっかり逃げてきたレイノーだが周囲は混乱し、収拾がつかなくなっていた。

 遥佳を逃がそうにも、逃げ場はない。


「大罪人の妹を牢にっ」

「無事な者は追跡せよっ」

「城で手当てした後、捕縛に向かうのだっ」


 ハミトが抱えている遥佳を兵士達が取り囲んだ。

 騎士達は既に追跡もしくは手当の為に城へと向かい、残されたのは遥佳を捕らえるように命じられた兵士だけだ。


「先生方は無関係と分かってます。その子を渡してください」


 顔見知りの兵士が、辛そうな顔でハミトに告げる。


「この子に触るな。連れていくと言うのなら俺も連れていけ。気絶している女の子に何ができるっていうんだ」

「ハミトの言う通りだ。この子を連れてくってんなら俺達も連れてきな」

「先生。それじゃ先生達も大罪人の仲間になっちまう」


 できれば見逃してあげたかった兵士の気持ちは、時間が勝負だった。


「何をぐずぐずしてるっ。さっさと牢へ連れていけっ」


 兵士達を監督する兵士長が、ぐずぐずしている部下を叱りつける。


「はいっ。ですがこのお医者様方は・・・っ」

「そいつらも連れていけっ!」


 そうして医師二人と遥佳は、城の地下牢へと連れていかれた。






 ヴィゴラスは今の暮らしが気に入っていた。

 女神の息吹に溢れた第7神殿で眠るのは幸せな気持ちになる。

 しかも第7神殿に広がる畑はとても多くの果実や野菜が実り、食べ比べをして味の違いを伝えるだけで遥佳はとても喜び、いかにヴィゴラスが賢いかを褒めてくるのだ。

 

(治療院との往復で、ハルカが俺の背中から落ちないことをマコトも認めるようになった。このままいけば、ハルカとマコトを乗せてもっとあちこちに飛んで遊びに行けるだろう。魚の干物とやらは塩が多すぎたが、新鮮な魚は塩も多くないと言っていた)


 山や川、人が多く住む街、寂れた村、そういった地理を頭に入れる為、ヴィゴラスはあちこちを飛び回っていた。

 

(俺に乗るようになって、ハルカもマコトも馬に乗りたいなんて言わなくなった。俺がいかに素晴らしい幻獣であるかを知ってしまえば当然だ。いずれ俺さえいれば他の動物なんて何もいらないと言い出すに違いない)


 そんなことを考えていても、心を読める遥佳の前では、

「尖塔に鐘が取り付けられていてうるさかった」

「深い緑色をした川がとても綺麗だった」

などといった「今日の出来事」を心で語っては、

「なんて凄いの、ヴィゴラス。そんな遠い所まで飛んで行けちゃうのね」

と、感心されては褒められる夜のひとときをヴィゴラスは満喫している。


(子供の頃は仲良しな幼馴染で、大きくなったら一気に男を感じさせればドキッとすると、本にも書いてあった。マコトはすぐに逃げてしまうが、翼をパタパタさせると近寄ってくるし、やはりグリフォンの魅力は最高なのだ)


 今日はかなりドリエータから離れた街までやってきたヴィゴラスは、道行く娘達の格好をじっと見下ろしていた。


(どうやらあの縞々模様が人気らしい。だが、ハルカとマコトに着せるならば、あのレースは多すぎる。少なめの方があの愛らしさが引き立つ。イスマルクの買い物は悪くなかったが、ハルカもマコトも普段に着ないのでは意味がないではないか)


 そんなことを考えていたヴィゴラスは、遠くから響いてきた波動に気づく。


 どおおおーんっ、ぐああああーんっ。


 それは幻獣だからこそ気づいたと言えるだろう。道行く人々は全く気づいていない。

 ゲヨネル大陸に暮らす妖精や幻獣は、自然と共に生きる種族だ。


(大地がっ、大気がっ、怒りを発した・・・・・・っ!)


 ヴィゴラスは、凄まじい速度で空へと上昇した。

 そうしてドリエータへと向かい、全力で翼を動かす。


(なんという、・・・なんてことだ)


 ヴィゴラスの目に映ったのは、扉に板が打ちつけられ、無人となった治療院だった。

 

 




 聖神殿が建つ聖山を擁するギバティ王国。

 女神シアラスティネルが暮らすといわれたこの国は、聖なる国として他国から敬意をもって扱われてきた。

 全ての神殿から聖火が消え、聖神殿が崩れ落ちたことによる混乱は凄まじい。

 女神シアラスティネルの残した神子達にしても、厳密にはどういった存在であるかが分からず、そしてその身柄をギバティ王国及び大神殿、双方共に確保していない事実が痛い。


――― どんなに偉そうにしていたところで、結局は幼い神子様方すら保護できていないのではな。聖なる国も神殿も、その立場を返上した方がいいのではないか?


 その一点をもって皮肉や当てこすりを投げかけられる屈辱に、ギバティ王国の民は耐えていた。


「兄上。絵を店で加工させたのも、かなり以前の話と聞きました。仮にその少年が盗賊の一味だったとして、普通の店に持ちこむものでしょうか。何より、本物の絵ならばとっくに誰かが大金を積んで手に入れていることでしょう」


 ギバティ王城の奥にある私室で、国王ブラージュは末の弟であるラルースと向かい合って座っていた。どちらも黒髪なので、落ち着いた部屋の内装に溶けこんでいる。


「誰も本心では期待しておらぬ。少しの手がかりでも動いておかねば言いがかりをつけられるだけのこと。ドリエータとてあまりにも報告することがないから書いてきたのだ。形ばかり調査し、子供が描いたものだと判明したと報告してくるであろう。会議など自己満足に過ぎぬのだ。それでも国は歩み続けねばならん」


 ブラージュは灰色がかった青い瞳が神経質そうなイメージを抱かせる国王だった。反対に、兄よりもがっしりした体格のラルースは外で動くのを好むだけあって青い瞳が爽やかさを感じさせる。

 気楽な立場のラルースは、今回もとある地方で神子らしき幼児がいたというので、その確認に行って空振りで戻ってきたところだった。


「お疲れでいらっしゃいますね、兄上。今日も何かありましたか」

「ああ。既に神子様方を殺害したとして、ギバティが各国に攻め入られることもあり得るとなればな。場合によっては偽物の死体を用意してでも事態の打開を(はか)らねばならぬ。無辜(むこ)(たみ)をどうして死なせられよう。諸外国連合が戦の狼煙(のろし)をあげたなら、ギバティは終わりだ」


 疲れて城に戻ってきたものの、兄の心労を思いやるラルースである。

 その言葉が決して杞憂(きゆう)ではないことを察して溜め息をついた。


「何故、こんなことに・・・。ですが神殿も疑心暗鬼に陥っております。聖神殿と共に亡くなったことにして幼い神子様方を連れ去った神官がいるのではないかと、改めて調査をしているようですが、あまりにも情け容赦ないとか。兄上、あれはあまりに異常です」

「ここで止めれば、やはり王族が幼い神子様方を軟禁しているのだと気炎をあげよう。我々とてどこぞの貴族が神子様方を秘密裏に監禁していると疑っているように」

「そうですね。子供の足で、あの聖山からそう移動できるものではありません」


 そこでブラージュは親指と人差し指で瞼を押さえると、小さく首を振る。


「どうなさいました、兄上?」

「パトリスの教師をしていた男が行方不明だ。間諜(かんちょう)だと分かっていたが雇った。こちらの潔白を晴らす為にな。思った通り、この城に小さな女の子がいないかを探っていたようだが、いきなり姿を消したのだ」

「何かしらの情報を得て逃げたのでは?」

「いや。恐らく探っている様子を他の間諜に気づかれ、知ってることは全て吐かせようと(さら)われたのだろう。パトリスの食事にも毒見役を増やした。神子姫様と年回りの近いパトリスが真っ先に婚約発表をするだろうと、あの子の周りは間諜だらけだ」


 パトリスとは、国王ブラージュの第二子にして長男にあたる王子だ。次の国王となるであろう幼い王子である。


「パトリスは風邪だったのでは、なかったのですね」

「あの子もそう信じている。・・・誰もが()れているのだ。神子様の手がかりを(つか)む為ならば、幼いパトリスにすら危害を躊躇(ためら)うものではない。パトリスなど神子様を日の当たる場所に出させる為の尊い犠牲だと叫んで自害した。ここまで来ると誰が糸を引いているのか、候補が多すぎて見当もつかぬ。いっそ神子様方はお三方とも亡くなっていてくださる方がまだ収拾がつく。不明だからこそ、これではいつまで()っても死の行列が終わらぬ」


 ラルースは甥の小さな体を思って唇を噛んだ。


「兄上。私をお使いになればいいのです。私なら毒をもられたところでパトリスより軽症ですみましょう。出先で食べるのであれば毒殺の危険性も減ります」

「ラルース、何を言い出すのだ」

「次の国王を損なうわけにはいきません。兄上は、もしも神子様が見つかったならば、かなり年は離れているものの独身の私をあてがう気なのだと、あえて国王よりも下の立場に置くつもりなのだと、におわせるだけでいいのです。同じ年頃のパトリスよりは現実味がありましょう。どこも神子様をまずは取りこまなくてはならないのですから」

「息子の為に弟を切り捨てろというのか。お前は私の弟なのだぞ」


 愚痴(ぐち)をこぼさずにはいられなかっただけのブラージュが気色(けしき)ばむ。

 だが、ラルースは甥に危険が及ばぬ方法を選んだ。

 

「パトリスは私の可愛い甥です。万が一、本当に神子様が見つかったなら私の婚約者に据えてお守りし、いずれパトリスと恋を育んでいただければいい。兄上、パトリスとその周囲を何十人も殺され続けるより、私を前面にお出しください。そして兄上が神子様をあてがおうとしている私が国内を捜しまわっている内は、他国も手出しをしない筈です」

「お前を使い捨てる兄になれというのか。お前の幸せをこの兄が望んでないとでも思ってもいるのかっ。それではお前が道化ではないかっ」

「それが王族というもの。国よりも優先する幸福など存在せず、唇から語られる愛には繁栄が付属しなくてはならないのです。・・・ですが子供達が、神子姫様とパトリスが可愛い恋を(はぐく)めるならば、それでいいではありませんか」


 兄の激高をラルースは微笑と共に受け止める。


「この私の為に兄上は心を砕いてくださいました。国の舵取(かじと)り、少しでも兄上のご負担を減らすべく努力するのが王子たる私の役目でしょう」


 ギバティ王国の王子としてはいささか問題ありとされるラルースだが、その欠点こそがブラージュには好ましかった。

 だが、そこで廊下を慌ただしく早歩きする靴音が響き、けたたましく、コンコンとノックがされる。


「失礼いたします、こちらに陛下はご在室でしょうか。緊急の連絡が入りました」

「何事だ。入れ」

「はい」


 扉を開けて入ってきた役人は、一礼する。

 共にいるのが末の王子であることから、そのまま報告してもいいと判断したのだ。


「陛下。ドリエータ領から早馬が到着いたしました。ドリエータに暮らす少年の持っていた黒一色の絵は王城から盗まれたものと思われ、更にその少年は絵を持ったまま逃走中とのことです」

「何だとっ」


 ブラージュばかりか、ラルースも立ち上がる。


「あり得んだろうっ。まさか犯人を仕立て上げねばならぬからと、その少年に罪を押しつけたのではあるまいなっ。兄上、それはあまりにむごいことでございますっ」

「うむ」

「ラルース殿下。さすがにそこまではこちらも・・・」

「いや、ラルースの言う通りだ。地方に暮らす平民の少年が、どうやってこの厳重に警備された城に入りこみ、しかも大金に化ける絵を持ち続けていたなんてことがあり得るのだ。なんと哀れなことを」


 ブラージュもまた調査だけで終わると思っていただけに、あまりにも予想していなかった報告だった。


「兄上。どうか私をドリエータに行かせてください。その少年が拷問で嘘の自白をせぬようにはできましょう」

「そうだな。私とて無実の者をあたら傷つけたいわけではない。立場上は盗まれた絵の捜索隊を率いていくことにせよ、ラルース。精鋭を連れていき、現地でその少年の無実を証明してやれ」

「かしこまりました、陛下。それでは私、王城より盗まれた絵の捜索隊を率い、急ぎドリエータに参ります」



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