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その306〜その310
帰って来たら家が二重にブレていて、わたしにそっくりなうっすら透けて見える子が「ただいま」と入って行った。
月夜の晩、立ち並ぶ電柱が全て背の高い人の姿となり、道を歩く私をじっと見下ろしている。
そこに確かに姿が見えているのにどうしても顔が見えない、男かも女かもわからない人物が、一家心中のあった家の跡にただ立ちつくしている。
タピオカの粒に混じった小さな目玉が、ギョロリと私を見つめている。
人っ子一人いない雷雨のビル街を、笠を目深にかぶった僧形の者が濡れることなくさまよい歩いている。




