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ドサ回り系女性バンドを乗せたバンは走る―
「ねえ、なんで無視するの」
ボーカルさんが、運転席のベースさんの背中に言葉を投げつけた。
「私の歌、もうきこえてないの?」
運転に激しく気を取られ、それどころではない様子のベースさん。
「それとも、最初からきく気なんてないのかな」
返事をする余裕すらないベースさんの沈黙が、追い打ちのように車内を凍りつかせる。
その硬直を切り裂くように、助手席のドラムさんが片方のイヤホンを外し、わざとらしく笑った。
「喧嘩ですか、喧嘩ですか。このバンドの名物みたいなね。おふたりによる喧嘩ですか」
ドラムさんのあおりに、ボーカルさんは気持ちを削がれ、しらけムードとなった。
「しないんですか喧嘩。まあ、なんと言いますか、喧嘩するほど仲がいいってね。ほんとマジウケるー」
言うだけ言うとドラムさんは、袋の底に残ったポテチの欠片を、わざとらしく音を立ててかみ砕いた。
ヘラヘラと軽い、けれど温度のない空気が、密閉された空間を逆なでする。
これもやはり、彼女たちの音だ―




