season2-209 第11話 センチネル
第7章 中編 グリーンランド地区が開幕しました。いよいよデングリーヅ連邦との再戦が始まります。今後の構成としては
グリーンランド地区→ニュージーランド地区・キューバ地区・ハワイ地区の順で進めて参ります!
2030年10月11日20:00(日本時間12日8:00)アメリカ合衆国・ホワイトハウス
対デングリーヅ連邦の作戦開始が決定したことを受けてマルティネス大統領はホワイトハウスの地下にある危機管理センター(PEOC)にあるシチュエーションルームでは重苦しい空気が漂っていた。大型スクリーンには、ハワイ沖、グリーンランド地区、キューバ地区、ニュージーランド地区の戦況図が同時表示されている。赤く点滅するデングリーヅ連邦軍戦力表示は、依然として広範囲に及んでいた。
ハワイ沖では海上自衛隊艦艇がデングリーヅ連邦海軍が交戦を継続中である。キューバ地区やグリーンランド地区では「トライデント」ミサイルと思われるミサイル部隊と戦略航空隊が依然健在と報告されていた。
会議室中央にはジョセフ・マルティネス大統領、その左右には、ニック・ジェームズ副大統領、ウォーレン・ジャクソン国防長官、アンソニー・グレイ国土安全保障長官、アリエル・ジャック中央情報局(CIA)長官、ロバート・ケイン退役軍人長官らが席に腰を掛けている。さらに、日本国首相・宮崎夏帆や国際同盟軍主要加盟国首脳も、安全保障回線を通じて接続していた。
緊迫した空気感の中、統合参謀本部議長のマイケル・ロドリゲス大将が報告を始めた。
「現時点における敵主要戦力ですが、グリーンランド地区軍は陸上戦力より海空戦力が主力として依然機能していると思われます。また、100近くの滑走路やミサイル発射拠点を現時点で確認しているため敵は継続的な戦略航空作戦を実施可能です。また、長距離攻撃能力により、日本本土、西海岸への攻撃能力も保持しています」
さらに別の画像が映し出される。分析衛星が捉えた「トライデント」移動式ミサイル発射機群だった。
「推定では、グリーンランド地区には少なくとも20万人規模の兵力と兵器がある可能性があります」
ジャクソン国防長官がロドリゲス統合参謀本部長の報告に質問を投げかけた。
「通常戦力での破壊は可能か」
「困難です。敵基地は滑走路のみが地上にあることからほとんどが地下化されており、陸海空戦力の即時投入は非常に戦力の損失に繋ります。また、防空網も極めて強固であり通常侵攻を行った場合、数週間から数か月単位の戦闘になります。その間にハワイ戦線、キューバ戦線で同盟軍被害は急増するでしょう。
大型スクリーンには、予測被害シミュレーションが表示された。通常侵攻時予測損害での国際同盟軍戦死者 11万〜18万人、民間被害予測は数十万人規模と表示され室内の空気がさらに重くなる。マルティネス大統領は腕を組み、画面を見つめ続けていた。
「戦争を短期終結へ持ち込むには、グリーンランド地区を真っ先に無力化し、キューバ地区・ニュージーランド地区・ハワイ地区に地上戦力を投入するべきだと考えています。よって統合参謀本部は、限定的な戦略核攻撃を提案します」
その言葉に、日本側回線の空気も変わる。宮崎夏帆首相は無言のまま資料へ目を落としていた。画面には、作戦名が表示される。
《Operation Frost Fall》
標的はグリーンランド地区連邦軍基地である。使用兵器欄には、明確に記載されていた。
《LGM-35 Sentinel》
センチネルは昨年の2029年に順次配備が進められていたアメリカ軍の次世代大陸間弾道ミサイルである。最新鋭の核戦力の実戦使用に会議室に沈黙が流れた。誰も軽々しく言葉を発せなかった。核兵器の使用は人類史において最も重い決定の一つだったからである。マルティネス大統領が低い声で問いかける。
「民間被害は?」
「目標は全て軍事施設です。グリーンランドであるためキューバやニュージーランドとは違って人口が密集していません。ただし、完全なゼロは保証できません。放射性降下物については風向き計算済みです」
宮崎首相が慎重に口を開いた。
「核兵器使用は、戦争そのものを変えます。今後の世界秩序にも計り知れない影響を与える」
「承知しています」
「しかし、デングリーヅ連邦は既に全面戦争段階へ移行しました。ハワイでは貴国の艦艇が攻撃を受けている他、キューバ地区では大規模増援が確認されています。このままでは被害は拡大する一方です」
「つまり、ここで止めるか、長期戦でさらに多く死ぬか……ということか」
するとホーキンス副国防長官がが追加報告を行った。
「新たな情報です。グリーンランド地区において、連邦軍が「トライデント」ミサイルの長距離攻撃準備を進めている可能性があります」
「確度は?」
「高いと判断しています」
「もし攻撃が実施された場合、日本本土、アラスカ、西海岸が射程内となっており、これまでの「トライデント」ミサイルの威力から見るに被害は甚大なものになるでしょう」
マルティネス大統領はゆっくり目を閉じた。重い沈黙が静まり返る会議室に広がった。壁面モニターには、グリーンランド地区の熱源が徐々に赤くなりつつあった。もし先に撃たれれば被害はどうなるのか。誰も、その先を口にはしなかった。
やがてマルティネス大統領は、静かに立ち上がった。
「私は...。私は、大統領として、この国を守る責任がある。そして同盟国を守る責任もある」
彼は机の上に置かれた発射承認ファイルを見つめた。赤い表紙と核発射承認文書。その重みは、世界そのものの重さだった。
「限定核攻撃を承認する」
「了解しました」
「LGM-35センチネル発射シークエンスへ移行します」
その瞬間。アメリカ戦略軍司令部、地下ミサイルサイロ、原子力潜水艦隊、早期警戒網、全てが一斉に動き始めた。ホワイトハウス地下では、新たなスクリーンが起動する。
《NUCLEAR AUTHORIZATION CONFIRMED》
核兵器使用承認。その表示を見つめながら、宮崎首相は静かに呟いた。
「……世界が変わる」
誰も返答しなかった。なぜなら、その場にいる全員が同じことを理解していたからである。人類は今、再び核が使用される時代へ足を踏み入れようとしていた。
次回もよろしくお願いします!




