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日米転生   作者: 照山
season2 第7章 ゲームチェンジャー編 中編
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season2-205 第7話 対峙 Ⅲ

ハワイ沖での被弾報告からおよそ20分後。日本国内では事態が一気に国家レベルの危機対応へと移行していた。

首相官邸地下の危機管理センターには、内閣総理大臣・宮崎夏帆をはじめ、官房長官、防衛大臣、外務大臣、統合幕僚長らが緊急招集されていた。大型スクリーンには、海上総隊から送られてきた状況図が映し出されている。


停戦海域外縁部における国際同盟海軍艦艇の消失、海上自衛隊護衛艦の被弾。、不明艦隊の接近継続。それらの情報はすでに断片的ながらも「武力衝突が発生した可能性」を示していた。大島防衛大臣が簡潔に状況を説明する。


「現時点で交戦意思の明確な確認には至っていませんが、火器管制レーダー照射および対艦ミサイル攻撃を受けている以上、偶発事案の範囲を超えています」


青海外務大臣も続ける。


「デングリーヅ連邦側は現在のところ公式な声明を出していません。停戦条約違反である可能性が極めて高く、国際問題化は不可避です」


数秒の沈黙の後、宮崎首相が口を開いた。


「現場は既に武器等防護で対応しています」


「はい。現地部隊は防御的措置に限定して対応中です」


「しかし、それでは不十分です」


その言葉に、室内の空気が変わる。宮崎首相はモニターに映るハワイ沖の状況図を見据えながら、はっきりと指示を出した。


「これは我が国そして全世界の信頼を揺るがす事案であり、国民の生命・財産にも影響する可能性があります。この脅威を排除するべく現場海域で活動する海上自衛隊に対し、武器等防護から海上警備行動へ切り替えます。また、全自衛隊部隊に対して防衛出動待機命令を発令し、あらゆる事態に備えるよう防衛大臣、お願いします」


海上警備行動は自衛隊法第82条に基づき、警察力では対応困難な海上における事態に対処するため、防衛大臣が命じる行動である。武器等防護よりも広い権限での武器使用が可能となり、実質的に準戦闘状態への移行を意味していた。防衛大臣が即座に応じる。


「承知しました。直ちに命令を発出します」


榊原統合幕僚長もそれに続く。


「海上総隊に対し、交戦規定の拡大および必要な武器使用の許可を通達します。また航空自衛隊に対し、警戒監視および戦闘機の前進展開準備を命じます」


宮西官房長官は国内対応へと意識を向ける。


「国民への情報発信は慎重に行います。現時点では事態発生として速報を出し、詳細は精査後に発表とします」


緊急で行われたNSCでの一連の指示は数分のうちに各機関へ伝達された。


その頃、太平洋上では「なかすかぜ」では新たな命令が暗号通信で届いていた。海上警備行動の発令によりこれまでの防護のための限定的武器使用から一歩踏み込み、状況に応じた実力行使が可能になった。「なかすかぜ」CIC内では、その意味を誰もが理解していた。すでに艦は被弾し、デングリーヅ連邦海軍艦艇はなお接近している。もはやこれは偶発的な接触ではなく、明確な武力衝突である可能性が極めて高かった。そして、島川艦長は新たな命令を受け、短く指示を下した。


「各艦に通達。海上警備行動発令を確認。交戦規定更新、迎撃および反撃を許可する」


静かだった海は、完全に戦場へと変わろうとしていた。海上警備行動の発令から数分後。艦隊を取り巻く状況は、さらに急速に悪化していた。「なかすかぜ」のCICでは、更新された交戦規定に基づく戦術指示が各コンソールへ配信され、射撃管制システムも段階的に制限解除が行われていた。これまで防御に限定されていた対応は脅威の排除を含む段階へ移行していた。レーダー上では、接近していた6隻の不明艦隊が隊形を展開し始めていた。先頭の大型艦2隻は左右に分かれ、その後方に中型艦が広がる形で扇状の陣形を形成している。明らかに包囲・圧迫を意図した動きだった。


一方で、「なかすかぜ」の被害は依然として深刻だった。右舷後部の火災は鎮圧に向かいつつあったが、CIWS1基が使用不能となり、対空防御能力は低下している。さらに通信系統の一部にも断続的な障害が残っていた。それでも艦隊は崩れていなかった。3隻の護衛艦はなおも補給艦と多用途支援艦を中心に輪形陣を維持し、損傷艦をカバーするように位置を調整していた。「あまつかぜ」と「たちかぜ」は前方へやや突出し、防空の主軸を担う配置へと移行している。


そのとき、新たな脅威が接近していた。ハワイ方面から探知された航空目標は、すでに複数編隊となって艦隊へ向けて高速接近を続けていた。高度・速度ともに戦闘機または攻撃機と推定され、対艦ミサイルを搭載している可能性が高かった。同時に、水上脅威も変化を見せる。6隻の不明艦隊のうち、中型艦2隻が前進を開始。距離はすでに30km台へと縮まりつつあった。海上・空中の両面から圧力が強まる中、艦隊の行動は一つに絞られていく。防御しながらの離脱はそれは容易ではなかった。西方へ後退を続ける艦隊に対し、敵性艦隊は速度を上げて追随し、距離を詰めようとしている。加えて、空からの攻撃が始まれば、艦隊は同時多方向からの攻撃に晒されることになる。


「なかすかぜ」の艦橋では、状況が分単位で更新されていた。損害、敵位置、味方配置、航空脅威、弾薬残量それらを統合した上で、次の判断が求められていた。


「島川艦長、一か八かで交信してみるのはどうでしょうか?」


「話し合いが通じる相手ではないには確かだがやってみよう」


副艦長の提案に島川艦長は可能性は低いがデングリーヅ連邦海軍側と交信する手段を取った。


「こちら日本国海上自衛隊護衛艦「なかすかぜ」艦長の島川だ。返答願う」


『我々はデングリーヅ連邦キューバ地区海軍第9強襲揚陸艦隊「グアンタナモ」艦長のバリス=レスターである。交信目的を答えよ』


「繋がりました!慎重にお願いします!」


「返答に応じてくれて感謝する。貴艦らは国際同盟海軍に対して攻撃を実施しているほか、我々にも危害を加えようとする一連の行為はヴェルス停戦条約に違反する。臨検を実施するため速やかに停船を実施せよ」


『そちらの要求は受け入れられない。これより我々はあらゆる手段を用いて貴艦らを排除する。以上だ』


言葉を交わすことはできたが臨検のための停船は当然ながら拒否された。別の要求をしたとしても彼らは攻撃を継続するだろうという考えに至ったため全艦に対して命令した。


「全艦へ通達、敵艦を排除せよ。繰り返すー」


デングリーヅ連邦の一方的な行動によりヴェルス停戦条約は紙切れと化した。

次回もよろしくお願いします!

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