同族
控室にいるがかなり緊張してきた。なんと言っても相手も魔道具使いだ。どのような魔法を使うのか、どういう戦略で来るのか。
もし俺と同じような魔道具の作り方をしていれば火、水、土、風などはもちろん毒ややけどなどかなり多様な魔法を使えることになる。
とはいっても俺はただ初めに一発魔法をぶちかますだけだ。
いつもどおり、落ち着いて……。
そう自分に言い聞かせる。
試合が始まったらまずスモーキー・クォーツを付け替える、そしてビルディング・コンストラクションを放つ。
それで相手が落下ダメージをくらい、HPがゼロになる。このシュミレーションを頭の中で何度もする。
もし相手が死ななかったらそのときはその時。逃げるか斬りかかるかして勝機を探す。
よし、行ける!
「入場してください。今から5分以内に入場しない場合棄権とみなされます。」
俺と相手がフィールド上に立ったのはほぼ同時だった。観客席は半分以上埋まっており、大きな歓声が上がった。
相手は――
漆黒とでも形容したくなるようなローブを着て、同じ色をした大杖を両手で持っている。杖の先には何やら黒い宝石が埋め込まれているようだった。
身長は俺よりも高い。大学生くらいの年の細身の男だ。
距離があってここからではその宝石が何なのか見えない。だがもしかするとあれは相当質の高い、水晶シリーズ以上の宝石なのではないだろうか。
しかしいまいくら相手を見たところで俺が強くなるわけでもない。落ち着こう。
「対戦、楽しみにしていました。よろしくおねがいします。」
「こちらこそ、ふふふ、まさか私以外にも魔道具使いと呼ばれるプレイヤーがいるとは思ってなかったよ」
それはこっちのセリフだ、と心のなかで思う。
そして俺たちは互いに所定の位置につく。
「さあー! いよいよ始まるバトルトーナメントどうぐ使い第九回戦!! 実況は私、レメント王国放送局所属アナウンサーのクストです。」「解説はレメント王国騎士団軍事戦略部門兵器部部長のサートです、よろしくおねがいします」
「今回の試合はぁーーーー!! なんと仮名『魔法道具使い1』VS仮名『魔法道具使い3』の勝負だぁーー!!」
「魔法道具使い同士の対決、大変楽しみですねえ。両者ともどうぐ使いには見られない多彩な魔法を駆使してここまで勝ち上がってきました。どちらかというと1の方は正当な魔法使いより、3の方は支援系魔法使い寄りの行動が得意なように思われます。」
「試合開始まで10,9,7,6,5,4,3,2,1――」
「バトルゥスタートォーーーー!!」
「ビルディング・コンストラクト!!!!!!」
始まった。とっさに宝石を付け替えた俺はすぐさま魔法を口に出してビルディングコンストラクトを使用する。
相手は全く動じずに開始から一切動かずに立っているだけだ。
フィールドの地面の色の円柱がかなりの速さで上昇していく。途中で飛び降りようとしても致命的なダメージを喰らうことは確実だろう。
円柱が上昇する途中、相手が杖を大きく上に掲げた。
「エア・スカッフォード」
やられた。ビルディング・コンストラクトの円柱が消えたあとも空中にとどまり続けた。
一向に落ちてくる気配はない。
「魔道具使い1はまったく落ちてこないーーーー!! 魔道具使い3、攻撃手段はあるかーー!?」
まずい、このままでは相手から一方的に魔法を撃たれて終わりだ。
MPはすでに0%、完全に魔道具は使えなくなっている。
ああ、なにか手は――
「ダーク・アステロイド」
相手が唱えた瞬間、俺の周りに正方形が現れ、更にその内側を曲線が描き――
俺のHPがゼロになった。
ほんの一瞬だった。自分の視界が闇に覆われ、おれのHPゲージだけが視界に映っていた。
本来HPゲージは緑色の部分が左にスライドするように消えていく。しかし今は違った。
HPバーが消えたのだ。
ああ、負けた。一瞬だった。
試合後、俺と相手は近づきあった。
「実はあの『エア・スカッフォード』って効果時間一分しかなかったからかなり危なかったんだよね。だから隠してた上級魔法使ったのさ。それでね、君には特別にこれを見せてあげる。」
そう言って彼は自分の首にかかっていたネックレスを俺の目の前に吊り下げた。
「なっ……、俺もですよ。」
俺もネックレスを防具の上に出して、相手に見せる。同時にブレスレッドも。
お互いが見せあったアクセサリーには似たような魔法陣が書き込まれていた。
「それじゃ、いつかまた会おう!! バイバイ!」
ああ、俺は負けたんだ。試合に負けたのはもちろん悔しい。俺より高位の魔道具を既に作られていたことが悔しかった。
それと同時になぜか少しだけ嬉しい気もする。俺と同じようなことをやるプレイヤーが他にもいたのだ。そしてやっぱり強かった。
その相手は自分のやっていることが至極当然のことであり、それに疑問を感じていないようだった。
ならば俺だってそこに何も疑問を持つ必要はない。寧ろあのプレイヤーといつか対峙するときには今度こそ勝たなければならない。
俺こそが本当の「魔法道具使い」だと思い知らせてやらなければいけないのだ。
そんなことを思いつつスタジアムのロビーに行くと、エリウムが待っていた。
「いやあまさかティウと同等くらいの魔法を使ってくるやつがいるとはなあ」
「そうなんだよ、本当に全く予想していなかった。やっぱり俺もっとしっかり魔道具について研究するわ。」
「まあ、ロージェは魔道具もいいけどやっぱりダンジョンで使えるアイテム作るほうが向いているんじゃねえの? 実際それでこれまでかなりダンジョン攻略が進んできたわけだし。」
「そうだなあ。」
本音を言うと俺もただあの闇魔法のような強烈なやつを使ってみたい、という羨望があるだけでなにか戦略があって魔道具を作ろうとしているわけではない。
しかし、たしかに一時的な強さよりダンジョン攻略で使える恒久的な力のほうが何倍も重要だろうな。
「まあまあ、とりあえずなんでもいいからノブラックの応援行こうぜ! あいつはベスト4進出だってよ!」
「お、マジか! よし行こう!」




