プレイヤースキル
「今回の試合はぁーーーー!! 仮名『魔法道具使い3』VS仮名『球使い』の勝負だぁーー!!」
今回の相手はかなり軽装をしている。おそらく防具は全て革製のものではないだろうか。そして手には何やらボールのような物を持っている。
間違いなく20歳よりは上で、かなり体格もいい。
「実況は私、レメント王国放送局所属アナウンサーのエダーです!!」「解説はレメント王国騎士団軍事戦略部門兵器部のツェンホートです、よろしくおねがいします」
「魔法道具使い3は魔法道具を駆使して魔法を巧みに使い敵を圧倒してきました。使える魔法は初級魔法から中級魔法まで多岐にわたります。今回もその活躍が期待できそうですね。一方の球使いは他の選手には一切見られないタイプの武器を用いる戦略が見どころです。」
俺と球使いと呼ばれる相手は互いに対峙して挨拶をする。
「よろしくおねがいします。」
「ああ、よろしく」
相手はいかにも慣れているという雰囲気だ。緊張のかけらも見いだせない。このような勝負に慣れているかのような堂々とした姿勢が伺える。
「試合開始まで10,9,7,6,5,4,3,2,1――」
「試合開始ィーーーー!!」
「アクセネーション・トキシン!!」
俺はいつもどおり相手に毒を付加するが……相手は全く動揺する素振りすら見せない。
そのすぐあと、相手は不敵な笑みを浮かべたかと思うととある素振りを見せた。
声を発するまもなく俺は少し角度をつけて逃げ出した。
そう、相手はそのボールのようなものを投げてきたのだ。投げるときの動作は完全に野球のピッチャーのそれである。本来人に当てるのは言語道断なはずだが。
「出ましたー!! 球使いの『投擲』」
逃げるのが遅かったのか俺のプレートアーマーにボールが当たる。
まるで鐘を鳴らしたかのような鈍い音がスタジアム全体に響き渡る。
「くそっ」
自分のHPバーを見て思わず声を上げた。一回で7%ほど削られてしまった。これでは単純に計算して14回喰らえば死ぬ。
しかもスキル「投擲」はいっさいMPを消費せず、クールタイムもかなり短く設定されている。これでは俺のHPが切れるのもそんなに遠くはない。
だが、実は前の試合の時間にボーロンがこのプレイヤーを観察していて、ある程度の情報は事前に得ていた。だから戦略も見えている。
このトーナメントでは消費アイテムは一切持ち込めない。したがって相手が投げたあのボールも回収しなければならない。
そして、回収するためには必然的に走らなければならない。
あとはブーメランのときと同じだ。流石に相手の足も相当速く俺が先にボールの回収をするのは厳しそうだが。
転がっていくボールを全速力で追いかける相手にスタンブル・ストーンを放つ。
相手も事前に俺の情報を得ていたのか転ぶことこそないがそれを警戒してかなり走るスピードは遅くなる。
直径30cmもある石――岩と呼べなくもない――がいつ出てくるかわからない状況では流石に全速力では走れない。
そして俺は相手がボールを投げるときに逃げても無駄だと判断し、少なくとも一番防御力の高い胴体でボールを受けることに徹した。
相手の毒がHPを削り切るのが先か、相手がボールを14回投げるのが先か――
ひたすら繰り返されていく単調な試合にスタジアムの観客は飽き始めたところだろう。しかし俺は相当緊張していた。
少しでも相手のボール拾いを妨害し、ダメージの少ないところで攻撃を受ける。MP切れが怖いため転移は全く使えそうにない。
スタンブル・ストーンに対する慣れが次第に相手に余裕をもたらす。
ああ、これでは間に合わないかもしれない。
試しに相手がボールを投げる瞬間に横に飛んでみるがやはりボールはあたってしまう。読みが的確すぎるのだ。
あれ? 待てよ? ボールは俺に向かって一直線に飛んできて、俺が止まってさえいればこっちもその軌道くらい読める。ってことは……
再び相手がボールを投げるその直前、俺は高く足を上げてスタンブルストーンを生成する。
すると相手の投げたボールはスタンブルストーンに当たりそのまま敵の方向に帰っていった。
「っっしゃああ!!」
いける。これはいけるぞ。これで一回分浮いたんだ。あとなんどかこのカウンターを成功させれば勝てる。
時間的にもあと2分ほどで相手のHPはゼロになるはずだ。俺の残りのHPは15%だからギリギリ2回は耐えられるはず。
「スタンブル・ストーン」
何度目かわからない魔法を相手の投げるボールの軌道上に生成した。その直後、再び鐘のような鈍い音が会場に響き渡る。
……何が起きた?
実況の声が耳に入る。
「おおっとぉーー? これは変化球かー? 球使い、ここにきて初めて変化球を使ったぁーーー。」
おいおいまじかよ、リアルスキルを持ち込むにも程があるって。
お、とはいっても変化球が俺に当たったせいかボールは明後日の方向へ転がっていった。
相手は全力で走り取りに行っている。
途中何個もスタンブル・ストーンを生成し相手の邪魔をした。
再び相手がボールを投げ、自分の鎧に当たる。
残りのHPは1%――そう思った次の瞬間、相手が倒れた。
「決まったァァァァ!! 魔道具使い3、なんとか状態異常の付与で相手を倒したァァァァ」
「今回はかなりギリギリでしたね―、生き残った『魔道具使い3』の残りHPもわずか1%です。あと少しボールを投げるのが早ければ球使いは逆転していたかもしれないですね。」
「ロージェお疲れ!」
「お疲れ様」
おや、エリウムとボーロンがここに来ている。
「オレ負けちまったよ、ハハハハハ」
「あ、今さっき、ティウも負けた。だからもう勝ち残っているのはロージェとノブラックだけだね。」
「えっ、まじか、ティウも負けたのか」
「いやーまさか飛び入り参加したロージェがこんなに勝ち残るとはなあ!」
「あ、それでね、次の対戦相手なんだけど……」
対戦相手は予め伝えられておらず、次の試合の相手しかわからない。次の試合の相手がわかるのは前の試合が終了した瞬間だからボーロンはかなり解析が早いということになる。
「相手の名前が、魔道具使い1なんだよね。」
「えってことは……」
「掲示板の様子だと、ロージェ以上に多彩な魔法を使っている。完全に戦闘特化だ。今まで確認できただけで6種類の魔法が使われているかな。」
「マジかよ……」
「多分魔法攻撃力に極振りしていて、装備も魔法使いみたいな感じらしい。だから勝てるとすれば……」
「俺が前に使った『ビルディング・コンストラクト』か。」
「そう、あれを開始早々に使って勝てるかどうか……」
「なるほどな。分かった。それで行こう」
まあもともとここまで来る予定もなかったわけだ。行けるところまで頑張ってみよう。
「じゃ、僕は急いでノブラックに次の相手の情報伝えてくるねっ」
「あ、ああ、行ってらっしゃい」
「オレはここに残って次のロージェの戦い観戦するわ。」
エリウムはこっちを見てくれるようだ。
ティウは魔法使いに似た戦い方をするノブラックを観戦したいようで、ベリリーもそっちについていっているからな。
さて、いよいよ次に勝てばベスト8だ。慎重に冷静に頑張っていこう!!




