表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
37/61

36:神官、肉食職員の罠にかかる

 神殿騎士団副団長のハインは、整った顔を青くして戸惑っていた。

 これは、一体どういうことなのか。

 自分は聖人の婿候補として、アヤカに仕えるためにアインハルド騎士団を訪れたはずだ。

 それなのに――


「ちょっとぉ、新人。お皿の洗い方がなっていないじゃないの!」


 偉そうにハインに指示を出すのは、銀髪におかっぱ頭の美少女メイドだ。

 腰に手を当て、ことあるごとに小言をぶつけてくる。


 なぜ、神官である自分がこのような目に遭わなければならないのか。

 非常に腹が立つが、聖人であるアヤカがそれを望んでいる。

 妻(予定)の神聖な言葉を無視するわけにはいかなかった。


 聖人アヤカは、変わった人物である。

 男のような格好をしているので、見た目は弟である聖人シュウジとよく似ている。

 中身はかけ離れている……というか、正反対なのだが。

 正直言って、アヤカはハインの好むタイプではなかった。

 聖人でなければ、一生関わることはなかっただろう女性だ。

 弟のようにすぐに異性に陥落するかと思いきや、なかなか手強く、三人の夫候補は彼女に頭から拒否されている。


「新人、何をボサッとしているの!? さっさと終わらせて、食堂の掃除に移りなさいよ!!」


 メイドの怒号が飛んでくる。

 洗った食器を拭き終わったハインは、ふらふらと食堂のテーブル席へ移動した。

 騎士達が来るまでに、台拭きでテーブルをきれいにしなければならない。


「もぉ〜、ブリギッタさんってばぁ〜! ハイン様に厳しく当たらないでください〜! かわいそぉじゃないですかぁ〜!」


 今にも倒れそうなハインに、救いの手が伸ばされた。

 それは、くるくるとカールした長い髪を持つ、おっとりとした女性からの言葉だった。

 彼女はミルという名で、騎士団の職員として働いている。


「大丈夫ですかぁ〜、ハイン様〜。ブリギッタさんってば、新人が入る度にいびるんですよぉ〜」

「そ、そうなのか……」

「更年期障害なんじゃないですかぁ〜? クスッ」


 どう見ても十代相手に、更年期発言。

 女同士のドロドロに慣れていないハインは、ただオロオロするばかりである。


「あ、そぉだぁ〜。ハイン様、後で私の部屋に遊びに来てくださいよ〜」

「え? あ、ああ……」

「やったぁ〜、嬉しい〜」


 そう微笑むミルの目が、ギラギラと輝いているのは、きっと気のせいだろう。

 夕食時にアヤカが食事を作る手伝いに訪れたが、ハインへの対応はあっさりしたものだった。

 しかも、頻繁にここの騎士団長に呼び出されており、彼女とあまり話をする事ができない。

 片付けを終えて、ぐったりしたハインの腕をミルが引っ張る。


「約束ですよ〜、私の部屋に来てください〜」

「そうだったな……」

「良いお酒が手に入ったんですよ〜、ぜひ神殿の方に飲んでいただきたくて……」

「そ、そうか。良い心がけだ……」


 神官は自由に結婚することは許されていないものの、飲酒はできる。

 酒を飲み、身を清めるのは神官として良い行いだとされていた。


(きっと、彼女は、その事を知っていて酒を献上する気なのだろう)


 ハインは、言われるがままに、ミルの部屋に足を踏み入れたのだった。

 女性関係に疎い真面目な神官は、最後まで肉食職員の陰謀に気がつかない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ