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35:アヤカ、無双する

 アヤカが神殿から戻った翌日、街の近くにある森に狼型の幽獣の群れが出た。

 幽獣退治の要請を受けた第二騎士団は、急いで森へと駆け付ける。

 その中には、片手にハンマーを持ったアヤカも混じっていた。


「ようし、アヤカ! いいぞ、やっちまえ!」


 副団長マルクの掛け声に応えたアヤカの振り回すハンマーが、狼型の幽獣の群れを滅多打ちにする。

 ユスティンに武器の使い方を習ったアヤカは、ハンマーを壊すことなく良い感じに扱うことができるようになっていた。


「武器が壊れないって、いいね!」


 騎士達は、アヤカの振り回すハンマーに当たらないよう、少し離れたところから弓で加勢している。

 狼型の幽獣は、異様なハンマー使いの登場に尻尾を丸め、後ろ足の間に挟んだ。

 しかし、アヤカのハンマーは、逃げる幽獣に容赦なく迫る。

 聖人であるアヤカの足は、狼型の幽獣よりも早いのだ。

 そして、数分後――


「お疲れ様〜。退治完了しました〜」


 ハンマーを背負ったアヤカが、森の奥から帰還した。

 指揮をとっていたユスティンが、アヤカに駆け寄る。


「アヤカ、怪我はありませんか? 深追いのしすぎは禁物ですよ?」

「大丈夫、すぐに追いついたから!」


 普段は幽獣退治で怪我人が大量に出るのだが、アヤカが加わったことで負傷者はゼロになっていた。


「アヤカ、よくやったな!」


 近づいてきたマルクが、乱暴な手つきでアヤカの髪をわしゃわしゃと撫でた。

 瞬間、ユスティンの目がキラリと光る。


「そうだ。今日は、皆さんに大切なお話があるのでした」


 団長の言葉に、騒いでいた騎士達が静まる。


「アヤカのことで、黙っていたことがあるのです。この通り聖人であるアヤカですが、彼の――彼女の性別は女です。騎士団の風紀が乱れるかもしれないと思い、今まで黙っていてすみません」


 騎士達の間に、動揺が走った。


「あと、彼女は私の恋人です。余計な手出しはしないように」


 割とあっさりしている団長の恋人発言に、騎士達は疑いの目を向ける。

 そんな中、唯一アヤカを女だと疑わない人間がいた。副団長、マルクである。

 彼は、女装したアヤカが美人だったことを覚えていたので、ユスティンの言葉を素直に受け入れたのだ。しかし、内心では思っていた。


(団長、俺達にはアヤカが男だと言っておいて……ちゃっかり自分が恋人の座に納まっているなんて、ズルくないか? 風紀を一番乱してるの、アンタじゃね?)


 アヤカの性別が女だと知った騎士達は、困惑しながら帰路についた。

 どう見ても、アヤカは男にしか見えないキワモノだ。その上、団長の恋人だという厄介な物件である。

 誰も手出しをしようなどとは思わなかった。

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