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33:アヤカ、生まれて初めて告白される

 神殿の敷地を出たアヤカは、ユスティンと共に街の広場で一息つく。この場所は、前に鳥の幽獣が出た場所だった。

 空の上を確認したが幽獣らしき姿はなく、人々も普通に外を出歩いている。

 ハインは、準備があるため翌日騎士団へ来ることになっている。


「ミルからアヤカのことを聞いて、心配しましたよ。神殿に監禁されているのではと気が気ではありませんでした」

「迎えに来てくれてありがとう。実は、騎士団に戻ることで揉めていたんだ」

「そのようですね。三人の男が、あなたに纏わり付いていましたし」


 そう言うと、ユスティンは不満そうに顔をしかめた。


「あの三人は、全員私の夫候補なんだって。聖人の血を残せとか言われたけど、勘弁してほしいよ」

「あの様子では、諦める気もなさそうですね……ハインが神殿から来ることで、あなたの性別も露見してしまうでしょうし」

「困ったね」


 アヤカ相手に騎士団の騎士達がセクハラを働くなんてことはないだろうが、今まで男として振舞ってきたので気まずい。

 騎士達の方も、きっと困惑することだろう。


「アヤカ……なら、僕と付き合ってみませんか?」

「えっ!? 何が「なら」なの!? 今、そんな流れじゃなかったよね?」

「団長の恋人にセクハラするような騎士はいませんし、ハインや他の夫候補達からもあなたを守ってあげられると思うんです。良い考えだと思いません?」

「良くないよ! 大体、ユスティンの気持ちはどうなるの!? 私を助けてくれるつもりなんだろうけれど、そういうのはいいから!」


 アヤカがそう言い募ると、ユスティンは不思議そうにコテンと首を傾げた。


「僕、以前あなたに告白しましたよね? 気に入っていると……」

「ええっ!?」


 動揺したアヤカは、慌てて記憶を巻き戻した。


(そういえば、ハンマーを扱う練習をしていた時に、そんな話をされたような。でも、あれって告白だったのか!?)


「自然な流れだったし、てっきり騎士仲間として大事に思っているという意味かと……」

「……男相手にそんなこと言いませんよ、気持ち悪い」


 ユスティンは、本気で嫌そうな顔をした。


「本当に私のことが好きなの? 女として?」

「だから、前にも言ったでしょう? 初めて会った時から気になっていたと」

「……そういう意味だったんだ。私、言葉通りに受け取っていたよ」

「もちろん、アヤカの頑張り屋なところも好ましいですし、料理上手だという点も素敵だと思います」


 慣れない騎士団での仕事は大変だったけれど、自分の頑張りを見ていてくれた人間がいたことに、アヤカは少し心が救われた気がした。

 いつ帰れるかもわからない、弟とは離れ離れ、変な怪物は出る、自分が何者なのかわからない。

 図太いアヤカも、気がつかないうちに、そういった不安を受けてストレスを溜めていたのである。


「アヤカは、何もわかっていないようですけど……僕は男が幽獣に襲われたとしても、見舞いにわざわざ駆けつけたりしませんし、騎士団生活で細々と世話を焼くこともありません。あれらは全部、下心からの行動です」

「嘘……」

「信じられないのなら、ブリギッタやマルクあたりに聞いてみればいいですよ。それで、アヤカは僕との交際について、返事をしてくださらないのですか?」


 ユスティンは、少し悲しげに目を伏せた。美人が悲しむ様子を見て、アヤカの中に罪悪感が芽生え始める。


「……ユスティン。私、いずれ元の世界に帰るつもりだけど。それでもいいの?」

「嫌ですが……あなたとの約束ですから、仕方がありません」


 そういうと、彼は紫色の瞳でチラリとアヤカを見た。

 ……返事を急かされている。


「私、過去に男と付き合ったことなんてないし、付き合いとか良くわかんないんだけど」

「では、まずは僕と付き合ってみましょう?」


 ユスティンは、名案だとばかりにキラキラした笑みを浮かべた。


(よく思うんだけど、ユスティンって紳士的で穏やかに見えるのに、ものすごく押しが強いんだよね。真綿でグイグイ圧迫してくるような、謎のプレッシャーを感じる)


 そして、アヤカはそんな彼の威圧感に押され負けた。


「わかった、私でいいのなら。付き合おう、ユスティン!」


 男前にそう宣言し、騎士団長と握手するアヤカ。

 まるで、男同士が誓いを交わしているかのような光景である。


(考えてみれば、彼のことはそんなに嫌じゃないし。たまに、意味もなくソワソワしてしまうけれど)


 アヤカが自分の気持ちを自覚するのは、まだまだ先のことになりそうだった。

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