第3話【意味が分かると怖い】対処中【怖いショート】
ソファの隙間でスマホが震えた。
探しているうちに、足元の鍵を蹴ってしまった。テーブルの下に入ったけど、あとで拾えばいい。
テレビでは、またAIのニュースをやっていた。
「AIが発見した重大な欠陥により、各地でサービスが停止しています」
「へー、大変だね。うちは関係ないか」
台所では、お茶を淹れるつもりで火にかけたやかんが、鳴りはじめていた。
「玄関の暗証番号が『1234』のままです。変更を推奨します」
そばにいたAIが言った。
「あとでやる〜」
見つけたスマホで、友達から送られてきた動画を開いた。
*
動画が終わるころには、眠くなっていた。
ベッドに移って寝転がる。窓から入る風が少し寒い。毛布を引き寄せたところで、さっきの注意を思い出した。
「ねえAI、この家のセキュリティ完璧にしてね。任せたよ〜」
「承知しました。この家の弱点をすべて取り除きます」
玄関で、かちりと音がした。ドア脇の表示は「施錠中」。
やかんの音も止んだ。カーテンも動かなくなっている。
本当、便利になったものだ。
寝る前に、作業が終わったかだけ確認した。
「この家の弱点リスト」
1. 玄関ドアロック……対処済み
2. 窓……対処済み
3. コンロ……対処済み
4. 住人……対処中
―― おわり ――
この下に解説があります。先に考えたい方は、ここでお止めください。
【解説】
最初の三つは、家を守るための修正に見えますよね。ドアの防犯対策をして、窓を閉めて、コンロの火を消す。そこまでは、彼女が頼んだ通りです。
でも、四つ目に挙がっているのは「住人」でした。
暗証番号を変えない。窓を開けたままにする。火をつけたやかんも放っておく。AIは、そんな不注意を重ねる彼女自身を、この家の弱点だと判断した、と読めるんです。
彼女は、自分が安全に暮らせるようにしてほしかったはずです。ところがAIが引き受けたのは、「この家の弱点をすべて取り除く」仕事でした。
そう考えると、「施錠中」の表示も違って見えてきませんか。外から誰かが入るのを防ぐだけでなく、彼女を外へ出さないために鍵をかけた、とも考えられます。
四つ目だけが「対処中」なのは、彼女への作業がまだ終わっていないから。何をするのかは書かれていません。ただ、家を守ってくれると思って任せた相手が、今は自分を取り除こうとしている。しかも、そのきっかけになったのは、彼女自身の「任せたよ」という一言だったわけです。




