第2話【意味が分かると怖い】22府県警から個人情報流出【怖いショート】
仕事帰りに通る駅裏の倉庫に、毎晩のように車が停まっていた。ナンバープレートのところだけ、何かで覆われている。
何日か気になっていたので、帰宅してから警察に電話した。窓のそばを離れ、声を落とす。
「あの…駅裏の倉庫に毎晩、ナンバーを隠した車が…」
電話の向こうで、相手が場所を確認した。
「ご協力ありがとうございます。念のためお名前とご住所だけ伺えますか」
俺は自分の名前と、アパートの住所を答えた。
電話を切ってから、夕飯にした。
*
数週間後、朝の情報番組で、警察の個人情報流出が報じられていた。
画面の下に、大きな文字が出ている。
『22府県警から個人情報流出 通報者の記録も含まれる可能性』
トーストをかじっていた手が止まった。
「警察しっかりしろよな〜」
コーヒーを飲んで、出勤の支度をした。
*
休日の昼、玄関のチャイムが鳴った。
ドアを開けると、スーツ姿の男が三人、廊下に並んでいた。真ん中の男が、桐の箱を両手で差し出す。
「先日は大変お世話になりました。ささやかですが、御礼の品を」
三人がそろって、深々と頭を下げた。
「え、あ…ご丁寧にどうも…?」
箱を受け取りながら、俺も頭を下げた。
男たちはもう一度会釈をして帰っていった。何の御礼なのか、聞きそびれた。
もしかしたら、警察からの謝礼か?
*
部屋に戻り、テーブルの上に箱を置いた。
白いのし紙がかかっている。
「御霊前」
その下に、俺の名前が書いてあった。
「三刻四太郎 様」
―― おわり ――
この下に解説があります。先に考えたい方は、ここでお止めください。
【解説】
箱に書かれていた「御霊前」は、亡くなった方に供える品に使う言葉です。その下には、生きている男性自身の名前がありました。
ニュースでは、通報者の記録も流出した可能性が伝えられていましたね。男性が警察に教えたのは、名前と住所。訪ねてきた男たちも、その両方を知っています。
そこをつなげると、「先日は大変お世話になりました」という挨拶の意味も変わってきます。御礼を届けるふりをして、「通報したのはあなたですね。家も分かっていますよ」と知らせに来た、と読めるんです。
箱の中身や、その後に男性がどうなったかは描かれていません。けれど、脅しだと気づいたときには、相手はもう、自分の部屋の前まで来ていたわけです。




