第25話【意味が分かると怖い】思い出のポケカ【怖いショート】
二〇二六年、十月。
テレビから、ポケモンカードが三十周年を迎えたというニュースが流れていた。
五十代の坂口は、テーブルに古いカードファイルを広げた。
青い表紙の角はすり切れ、布の下から白っぽい芯がのぞいている。それでも、中のカードは驚くほどきれいだった。
炎をまとったドラゴン。青い亀。背中に大きな花を咲かせた生き物。
透明なポケットの中に、三十年前のカードが並んでいる。
坂口はスマホを横向きに構えた。
「『#ポケカ30周年』『#思い出のポケカ』っと」
撮った写真に文章を添えて、投稿する。
『小学生の頃から大事にしてるファイル。
三十年たっても宝物です』
すぐに、いくつも反応が付いた。
『保存状態エグい……!』
『ファイルごと当時物? すご……』
『これは本物だ……』
坂口は満足そうに画面を眺めた。
同じころ、別の家で、七十代の女性がタブレットを見ていた。
部屋の壁には、色のあせた紙が貼られている。
笑っている男の子の写真と、大きな赤い文字。
『さがしています』
『山田たかしくん(10)』
『一九九六年十月から行方不明』
その下には、家を出たときのことが書いてあった。
『最後に見かけたのは、「近所のお兄さんとカードを交換しに行く」と言って、青いカードファイルを持って家を出た時』
女性の指が止まった。
タブレットに映っているのは、坂口の投稿だった。
写真の中には、青いカードファイルが開かれている。
女性は二本の指で、ゆっくりと写真を広げた。
きれいなカードが、画面の外へずれていく。
すり切れた青い表紙の端が、大きくなった。
もう一度、指を広げる。
眼鏡の奥で、女性の目が見開かれた。
画面に触れた指先が、細かく震え始めた。
(この先に解説があります)
【解説】
坂口が「小学生の頃から大事にしている」と紹介した青いカードファイルは、行方不明になった少年のものではないか、という話です。
写真に写ったファイルの端が拡大されます。その反応を考えると、何か手がかりがあったものと考えられます。
坂口の年齢にも食い違いがあります。
二〇二六年に五十代なら、三十年前の一九九六年には二十代です。
この年に発売された初期カードを収めたファイルを、「小学生の頃から大事にしている」という説明は、そのままでは成り立ちません。
一方、子供はは一九九六年に十歳の小学生でした。
その年の十月、「近所のお兄さんとカードを交換しに行く」と言って、青いファイルを持ったまま行方不明になっています。
当時二十代だった坂口は、その「近所のお兄さん」だったのではないか。
そう考えると、懐かしいコレクションの自慢が、三十年前の失踪につながる写真に変わります。
同じ名前だけで事件の全容を断定できるわけではありません。少年がその後どうなったのかも、作中では明かされません。
ただ、女性が三十年待ち続けた手がかりを、坂口は「宝物」として見せてしまったのかもしれないのです。
登場する人物・失踪事件は創作です。




