第11話【意味が分かると怖い】自分の意見【怖いショート】
寝る前に、もう一度だけスマホを開いた。
「政府は隠している」
「マスコミはすべて嘘」
少し下へ送ると、別の名前で、同じような話が出てきた。
何万ものいいねがついていた。
「やっぱりそうだよな……みんな言ってる」
気になった投稿を保存した。
その下に勧められた投稿も読んだ。
明かりを消してから、ずいぶん時間がたっていた。
翌日、友人と居酒屋に入った。
注文した料理が来る前に、昨日の話を切り出した。
「その話、どこで見たの」
「ネット。すげー勉強になるYouTuberがいるんだわね」
友人が何か言いかけたので、先に続けた。
「俺は誰にも流されない。自分で調べて、自分で考えたんだ」
「お、おう……」
友人はビールを飲んだ。
俺は保存しておいた画面を見せた。まだ読ませたいものがいくつもあった。
帰り道、駅前で足を止めた。
さっきうまく説明できなかったことを、文章にしてみた。
〈日本の未来のために、今こそ真実を知るべきです。
メディアが報じない情報を調べて、わかったことをまとめました。
これは自分で調べて考えた結論です〉
投稿して、すぐ通知が来た。
「本当にその通りです!」
「よく言ってくれた!」
更新するたび、赤いハートの横の数字が増えた。
もう一度更新した。
また増えていた。
「ほら、わかってくれる人はちゃんといる」
*
暗い部屋に、パソコンが何列も並んでいた。
画面のどれにも、同じ男の投稿が映っている。
その前に座るロボットが、キーを押した。
隣のロボットも、同じように手を動かした。
別々の名前から、短い賛同の言葉が送られていく。
計算党事務所というポスターが貼ってある、誰も声を出さない部屋で、いいねの数字が増えていた。
―― おわり ――
この下に解説があります。先に考えたい方は、ここでお止めください。
【解説】
最初、彼は「みんな言ってる」と安心しています。
ところが翌日には、「誰にも流されない」「自分で考えた」と友人に話しているんですよね。
彼が何を根拠に結論を出したのか、少し戻って見てみてください。
画面に何度も似た話が流れてきて、いいねもたくさんついていた。そのことが、いつの間にか「正しい話だ」という確信になっています。
投稿したあとも、彼がうれしかったのは「わかってくれる人がいる」ことでした。
でも、最後の部屋で反応を送っていたのは、ロボットです。たくさんの別人から届いたように見える賛同が、一つの場所で作られていたわけですね。
ただ、誰が動かしているのか、どのような勢力の集まりなのかまでは、描かれていません。
そう考えると、最初の「みんな言ってる」も気になりませんか。
彼が読んでいた投稿や、そこで見た大勢の賛同も、同じ仕組みで用意されていたのかもしれません。
彼は、友人のためらうような返事より、画面の中の賛同を頼りにしました。
自分の考えが認められたつもりで、もう一度、投稿を更新する。
そのとき増えた数字は、誰かの意見だったのでしょうか。
それとも、彼に次の投稿をさせるための合図だったのでしょうか。
そもそも、このような物語もまた、あなたを動かす為の仕掛けの一つ。なのかもしれません。




