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第7話 サイレントアラート

2年8組 教室。


「材料の管理、ちゃんとしたのー!?」

「私じゃないわよ!」

「管理って、ニカちゃんよね?」

「そうだよなー、俺たちは外で整備してただけだしなー」

「誰のせい言ってないで、落ち着いてー!まだわからないことだらけなんだから、とりあえず先生と、ルカ来るまで待とうよ」

「そんな落ち着けるかよ、2年8組のせいにされてんだぞ!」



教室に入ると、腹痛事件のことで皆が騒いでいた。


「ニカちゃん!クレープの材料管理は大丈夫だった?」


暮井ニカ

「しっかり管理してたとは思う…」


「ニカちゃん、おっちょこちょいだから、また何か忘れたりしてない?」

「暮井さんならありうるかも」


神村サイゴ

「おいおい、問題起きたからって、急に暮井さん1人のせいにしてんじゃねーよ」


「神村くんも、お腹痛いんでしょ?神村くん最後の18人に並んでたじゃん」


神村サイゴ

「ああ、それがどうしたよ。そんなんいいんだよ…ふざけんなよ。さっきまで…暮井さんに感謝しまくってたじゃ……ねぇかよ」


「無理すんなよサイゴ。サイゴだってこれなら軽音ライブだよな?その体調でやれんのかよ?」

 


神村サイゴ

「関係ねーよ。腹痛ぇぐれぇで…だいたい…クレープ原因かまだわかんねーだろ」


「食べた神村くんが、腹痛訴えてるんだから、そうに決まってるじゃん」

「あー、もう、せっかく頑張ったのにー!これじゃあウチら学校の悪者じゃん」

「暮井さん、本当に食材大丈夫だった?」


暮井ニカ

「大丈夫…のはず」


前までの私なら、大丈夫って言い切っていた。けど、いまは…


「のはず、じゃあダメなんだよ。頼むよ、こんな時くらいは」


暮井ニカ

「ドジなのは…最近自覚してるから、そこだけはしっかりやったつもり…」


「つもりって、暮井さん…」


神村サイゴ

「すまねぇ…とりあえず、俺は軽音ライブに…行ってくる。」


暮井ニカ

「神村くん、そんな体調で、歌うたえるの?」


神村サイゴ

「大丈夫、大丈夫。関係ねぇから。じゃあ、もう時間無いから…行ってくる」


「サイゴー、無理すんなよー」

「神村くん、少し休めば…」


神村サイゴ

「ありがとう…じゃあ!」




「行っちゃったよ。とりあえず、どこか出し物見て来よーかなー」 

「いま外でたら2年8組の奴らだって責められない?」

「そうかー、なんか面倒なことになったなー」


暮井ニカ

「私、神村くん止めてくる!あの体じゃあ」


「そりゃー自分のせいじゃ、サイゴに悪いもんな」

「どうしようか、疲れたし、ここで休んでよかな。ルカちゃんとかもそろそろ来んだろ」

「まだ文化祭中だし、終わったら集まることになってるし、それまでは自由でいいんじゃない?」

「あー、でもこれじゃぁ外、歩きにくいなー」

「だよねー」




まさか、私のせいでみんなに迷惑をかけるなんて…。最近の私の傾向なら、何か私、忘れてしまってたのかも。

去年も材料管理だけはしっかりやった。今日だって、いっぱい注意してたのに…

なんで、なんでこうなってしまうんだろう。


いままで、私は、何か抜けてる人、要領よく行動できない人たちを、どこか見下していたかもしれない。何でできないんだろうって…。

まさか、自分が、馬鹿なドジを重ねて、何度も何度も気をつけるようにしたのに…どうして…どうして…こんなことに…



第一多目的ホール

【軽音ライブ】


神村くん、いないな。

ここは、私、去年も来た…。



「お待たせして申し訳ない!5分ほど遅れたけど、聴いてください!神村サイゴ、今年も想いを込めて歌います!今年もG・Gから『サイレントアラート』」


暮井ニカ

「あ、神村くん!…追いつけなかった。もうステージに」


神村くんは、アコースティックギターを弾きはじめた。

少し、苦しそうに、顔をしがめながら歌い出した。一般の人には、そういう歌い方なんだってくらいしかわからないだろう。


暮井ニカ

「神村くん、やっぱりお腹が…」


その時


「なんか下手くそじゃねぇ?苦しそうっていうか」

「そーだな。声出てねぇし、緊張してるんじゃん?笑」


そんな…神村くんは、体調悪いの耐えて歌ってるのに…。でも…ステージで発表する以上、どんな理由も言い訳にはならない。それは、私もわかってる。でも、神村くんは、いま私が原因で…



ギター演奏は続けているが、歌が止まってしまった。


「おいおい、歌詞とんだのか?笑。緊張しすぎだろ笑」

「俺の方がうまいんじゃねぇ?笑」


何も知らない人達が、勝手なことを言う。

それがこんなにも耐え難いことなんて…!



神村サイゴ

「次の曲行きます。『望まれない奇跡』」  


神村くん、すごい汗かいている…きっと苦しいの耐えてるんだ…。



「この曲、好きなんだよなー、歌えんのか?」

「もうへばってない?頼むよー」


なんとか2曲目を歌い終えた。


神村サイゴ

「次の曲からバンドサウンドで聴いてください。次の曲は去年弾き語りで歌った曲です。『スターライト』」


エレキギターのクリーンな音のアルペジオで始まり、エレキギターに持ち替えた神村の歪んだパワーコードが重なる。そこに流れるようなベースが入り、また綺麗なアルペジオに戻る。そこから歌が始まる。


暮井ニカ

「この歌、去年もここで聴いた…。あの時、神村くんが歌ってたんだ…。」


曲を終えると、神村サイゴは一度ステージを降りた。



「どうしたー?大丈夫かー」

「なになにー、アクシデントー?」


暮井ニカ心の声「神村くん…大丈夫かな」


神村サイゴ

「すみません!お待たせしました。ハア、ハア、次が…最後の…曲になります。お聴きぐるしい歌声に付き合ってくださりありがとうございました!次の曲もG・Gからです『ドリームダスト・ウィズ・ウインドー」聴いてください」


こちらもエレキギターのディレイがかったクリーン音と、漂うようなベースラインから入り、ドラムのキック音のみが心臓の鼓動のようなリズムが入り込んでくる。


その中

油汗をかきながら神村サイゴは静かに歌っていく。


そして終盤。


サイゴのアコースティックギターも、バンドサウンドに合わせて、コードを奏ではじめる。


神村サイゴ歌

「これが最後さ 

もうこんな馬鹿なことしないよ   

力無い意志で今を閉じる 

うんざり もういいって 

まだやれそうか? 

掴めそうで また転がって

ここじゃないって立ち止まる

同じ過ちを 繰り返して…」


歪んだギターが掻き鳴らされ、一気にバンドアンサンブルが盛り上がっていく。


そして、サイゴが力を振り絞って叫ぶように歌う。

「君のせいじゃない…!君だけじゃない…!」



ニカの目からは涙が溢れ落ちていた。

「何だろう…この気持ち。勝手に涙が…」


バンド演奏が終わった。


神村サイゴ

「ありがとうございました!まだライブはあるので、楽しんでってください!」


「バンドは良かったなぁー、ボーカルなんか息切れしてたよな」

「さんざんだったなー」


「なんか一生懸命で感動した」


「この曲誰の曲?ちゃんと聴きたい〜」


様々な感想の声が溢れていた。


暮井ニカは急いで、神村サイゴの元へ駆けつける。



舞台裏から

神村サイゴは、お腹を抱えて外に出てきた。



「神村くん!」


「あれ?暮井さん?ひょっとして聴いてた?」


「うん!お腹大丈夫??!」


「え?ああ、こんなのどうってことないよ。大丈夫。それより、歌ダメダメだったね、あんなとこ見せちゃって…」


「そんな、感動したよ。本当に」


「はは、ありがとう。お腹痛いの気にして来てくれだんだよね、大丈夫だよ。気にしないでくれ」


「でも、私のせいで…」


「だから、大丈夫だって。クレープ美味しかった。また食べたいよ。暮井さんのクレープ」


「神村くん…」


「ちょっと、用事済ませてくるよ笑。そしたら軽音の手伝いあるから、それ終わったら教室内戻るからさ、行っててくれ」


「そうなんだね…ありがとう。じゃあ…行ってるね、無理しないでね」


「うん、ありがとう。暮井さん来てくれて良かったけど、ちゃんと見せたかったな、はは」


「また、今度聴かせてよ」


「そう?わかった、また何かの時にね!」


「うん…」



神村サイゴのライブは無事終わった。





2年8組 教室。


渡瀬ルカが戻ってきた。


「あー、ルカ!待ってたよ。食中毒?のこと聞いてる?」


「うん。山威先生に報告が来てるらしい。体調不良を訴えた人、ほとんどが昼前にクレープを食べてたって」


「……じゃあ」


「うん。クレープが原因なんじゃないかって、かなり疑われてるみたい」



そのタイミングで、ニカは教室に戻った。



そこにいるクラス全員の冷ややかな目が、ニカに向けられた。









  









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