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第6話 発端

いよいよ文化祭が始まった。



一般の来場者や、他校からの参加者もあり、櫻丘第一高校は、この日、多くの人で賑わう。



軽音学部、神村サイゴ。


去年は、ピッカピカの高校一年生。

軽音学部に入った俺は、たった二曲だけど、弾き語りで歌う機会があった。

カヴァーではあるけど、想いを込めて歌った。

恥ずかしいけど、憧れの暮井ニカさんを想って歌った。あれから1年。まさか暮井さんと同じクラスになるなんて…!




「サイゴー!」


「ん?」


「軽音のライブ何時から?!」


「10時30からやってるけど、初めは一年と、毎年恒例の1年生限定の抽選ライブだ」


「去年、サイゴが弾き語ったやつか?!」


「そうそう笑。緊張しちゃったよ、アレ」


「けっこう好評だったけどな!俺も感動したし」


「ありがと!今年は俺は午後からだ、飯食ってからだなっ。それまで楽しもうぜ!」


「軽音はまだ行かなくて良いの?」


「当番の時間には行くけど、メインで音響やってくれてる先輩がいるから基本は大丈夫かな」


「そうなんだな。そろそろクラスの出し物んとこ集合時間だな、行こうぜ」


「そうだな!今年も、ちゃんと暮井さんのクレープも食いたいし!」


「だな!」



………


美術室、美術部。

小坂ナナコ、ニカと同じクラスの女子生徒。


「小坂さん、ちょっとこれ持ってー」


「あっ、はーい」


「この絵、やっぱり窓際がいいと思って」


「そうだね!外の風景とマッチしてるかも」


「小坂さんは、クラスの出し物あるんだよね?」


「ありまーす。クレープ屋さんやるので、先輩も買いに来て下さい。家庭科室前です」


「そうだったねー!暮井さんのクレープだよね?!去年、超美味しかった!」


「そうです!」


「憧れの暮井さんと、同じクラスなんて、小坂さん、良かったね!」


「そうなんです!」


「去年、暮井さん、美術部の絵を見に来てたって言ってたよね?」


「そうなんです、ビックリで…」


「また見に来てくれるかねー、誘っておいた?」


「え?!恥ずかしくて、誘ってません!」


「同じクラスなのに笑」


「はい笑。あ、そろそろ、クレープ屋さんの集合時間です。行ってきますー」


「そっか。あとで買いに行くね!美術部の当番の時間はお願いね」


「はい、もちろん!」




……



そして、

2年8組。

暮井ニカは、着々とクレープの準備を進めていた。


ニカ心の声「よし、仕込みと準備は大丈夫…あとは、作って売るだけ…去年よりすごい緊張するな」



「いよいよだねー!緊張するー」

「うまく、さばけるかなー」

「基本、お釣りとか気をつけよう。大きなお金の時もお釣りは焦らずにね」


クラスのみんなが集まってきた。


「みんな集まったみたいだね!よし!みんな!二度とない高校二年生の文化祭、青春満喫しよー!!そしてバンバンお客さん呼んで来てねー!ルカからは以上!!じゃあ、ニカから、一言!!」


「え?私?」


「当たり前でしょー!最強クレープ屋さんの意気込みを〜!」


「おいしいクレープ作るから、2年8組全員で大成功させよう!」


「OK!暮井さーん!」

「やるぞー!!」

「いえーい!」

「お客さんバンバン連れてくるぜ!」

「オレも食べるぞー!」

「おいおい」

「とにかく、がんばろー!!」



「はーい!じゃあ、あとは打ち合わせ通り!完売目指して、やったろー!」



教室には「2年8組のおいしいクレープ屋さん」→家庭科室前で200個限定販売中!との貼り紙が貼ってある。


教室自体は、机とテーブルを置いて、みんなで飾り付けをして喫茶店風に飲み食いできるスペースになっている。


去年は、13時から開始して、100食で完売。購入できなかった人たちの残念そうな声もこだました。


私は、今年も100食限定で販売して、あとの時間はみんなも文化祭自体を楽しめるようにと提案をしたのだけど、皆の意見で、去年大好評だったから倍の200売ろうとの意気込みで、午前10時から開始することになった。


マニュアル化して、普段からレシピ通りに作る練習をして、私以外にも分担を決めて、何人かで作れるようにした。



家庭科室前

「2年8組のおいしいクレープ屋さん」



クレープ売り場には、すでに行列ができていた。


「うわー、もう並んでるよー。すごいねー」

「さばけるかなー、もっと来るよねー」

「ニカちゃんいるし、大丈夫やろ!頑張ろー」



午前10時 開店。



「いらっしゃいませー!ご注文は?」

「チョコバナナ生クリーム1個」

「イチゴ生クリーム1個ください」


快調の出たし、はじめは、みんな緊張と不慣れさから、ある程度の乱れはあったけど、徐々に慣れ始めて、声も大きくなっていった。


「ありがとうございまーす!」

「お待たせしましたー!次の方ぁ」


「めっちゃ、おいしいー!」

「おいしいー!」

「何このクオリティー?!」

「インスタ載せよー!」


「おいしい」との声が上がるたびに、皆が笑顔になり、動きも良くなっていく。


「ニカちゃーん、大好評ー!」


「やったねー!」


部活や個人で出し物がない人達メインに回して、想像以上に大変な中にも、皆が声をかけあいながら、順調にこなしている。


200個限定といことも相まって、校内外問わず「暮井ニカ」のアイドル並の知名度もあって、大行列になってきた。


「ひゃー!すでに200人並んでんじゃないの?」

「いや、それはない笑。どこかで数えださないと並び損になっちゃうから100越えたら、チェック係出動だねー、ここまでですーってプラカード持って」



どんどん売れていく。

しかし、



「うわーん、ニカちゃーん、また生地がこびりついたー涙」


「わかったー、今行くー」


「ニカちゃーん、こっちもお願いー、クレープ少し崩れちゃったよー涙」


「大丈夫、直しにいくよ」


さすがに、本番は色々なアクシデントがある。想定内ではあったけど、予想以上の注文に、皆が焦りを見せている。


「そろそろ、冷蔵庫から生クリーム出しておかないと………よし。うーん、材料足りるかなー」


「ニカちゃーん!どうしても、暮井ニカさんの笑顔みたいって言ってる人いるんだけど、どうしよー、来れたりするかなー?」


「え、え〜?うーん、ちょっとだけならー」


「ニカちゃん!仲間も連れて買いにきたぜ!」


「鬼竜くん?あ、ありがとう」


「色んなガッコの奴ら来てっから、ちょっかい出してくる野郎とかいたら、オレに言えよな」


「ま、まあ…ありがとう」


「すげーおいしいよ!ニカちゃん」

「おお、うめー!プロ?」

「後ろ縛りのニカちゃんも美しい〜!」



「ニカちゃーん、また生地がー涙。ごめーん来てー!」


「わかった、行くよー」

「じょあ、鬼竜くんたち、ありがとうねー、ちょっと忙しくて」


「おう!頑張ってニカちゃん!」

「可愛いっすね〜、あれが暮井ニカか〜」

「バカやろー、テメーじゃ、釣り合わねーんだよ」

「いや、狙ってないすから…無理無理」




以前は、集団行動のなかでも、やることやらなくていいこと判断して、要領よく行動できたのに、選択肢が増えると頭が全てに反応して、判断や行動が鈍くなったことを感じる…。



ニカ心の声「落ち着こう、大丈夫。私は私の仕事をしよう」





「いま何個売れたー?」

「えっーと、もうすでに120くらいかなー!」

「こりゃ、昼前には完売しちゃうんじゃない?!途切れないもん」

「マジかー、オレたちも食べたいんですけどー」



午前11時30。

開店して1時間半。

「あと50個ー!」


行列も絶えない。昼までの完売も見えてきた。


正午。

「あと、18個!」


「すみませーん!ここからお並びのお客様ー、完売となってしまいます。申し訳ありません〜」


「え〜、残念。並ぶの遅すぎたー」

「昼飯ついでじゃ遅かったかぁ」


購入できず、残念の声も飛び交う。


「神村くん!ちゃっかり最後の18人に並んでる!」


「すまん!絶対に食べたくて!午後からの軽音ライブの活力に〜!許して。前半、けっこう呼びかけチラシ配り頑張ったからさ」


「ギリギリだったね。軽音ライブ頑張ってー」


「もちろんだ!13時30から第一多目的ホールで!クラスの人連れて、来てね!」


「オッケー、神村くん。またねー」



午後12時30。

完売。


「やったー!かんばーい!すごいねー!」

「疲れたぁ、ひっきりなしに売り続けてた感じ〜」


「ニカー!完売だってー!」


ルカが調理場に入ってきた。


「そっかぁー、やったねー。もうヘトヘト。調理組もよく頑張ったぁ」

「終わったのー?疲れたぁ。ニカちゃんごめんねー、迷惑ばっかかけてー」

「全然、全然!みんな、今日がはじめてと思えないくらい良くできたよー」

「ニカちゃん、去年1人で作ったのー?凄すぎ」



「お疲れ様ー!」

「完売!」

「おつかれー!すごいねー」



2年8組のおいしいクレープ屋さんは、怒涛の売り上げ、完売で幕を閉じ、感動の声がこだまする。



だが…





「お腹が痛いんです…」


体調不良者の対策として開けてある保健室に、「腹痛」を訴える者が続出してきた。



「なんか、お腹痛い…ちょっとトイレ行ってくる」

「私もなんか、気持ち悪い」



「小坂さん、ちょっとお腹痛いからトイレ行ってくる、席外すからお願いね…」

「え?大丈夫ですか?わかりました」



クラスの中でも。

「気持ち悪い…トイレ行く…」


神村サイゴ

「は、腹が痛ぇ…」


「どうしたサイゴ、緊張してんのか?軽音のステージそろそろだろ?」


「そ、そんなんじゃ…。シャレんなんねぇ。痛ぇ、トイレ行ってくるわ」


「わ、わかった。大丈夫か?!も、もしかして、クレープ?」


2年8組のクレープを食べた者たちから、腹痛と吐き気の体調不良が現れてきたのだった。



「ニカー!大変」


私は、クレープ屋の片付けをしていた。


「ん?」


「クレープ食べて、お腹痛い人が出てきたみたい!まだクレープが原因なのかわからないけど!」


「え?!うそ?!」


冷蔵保管はきちんとしたはず…。

まさか…。


「ニカの作ったの、私、はじめの方に食べたけど、全然大丈夫だから、神村くんがお腹痛いって言ってたから、最後の方のかも!?わからないけど!」


「そんな…。神村くんも?!神村くんどこ?!」


「2年8組の近くのトイレだと思う!」


「私、行ってみる!」


そんな、そんなずは…!でも、クレープが原因だったらどうしよう…





「あ、神村くん!」


「あ、暮井さん」


「お腹痛いってホント?!大丈夫?!」


「大丈夫…って言いたいとこだけど、気持ち悪くて」


「クレープ?!クレープ食べた?」


「食べたよ…すげー…美味しかったよ…」


「クレープが原因かもって!」


「え?」



学校中で、ほぼ同じ時刻に腹痛者があらわれ、集団食中毒の騒ぎとなった。













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