第5話 文化祭準備
5月の文化祭に向けて、各クラスが準備を進めている。
私のクラスは「クレープ屋さん」
去年、一年生のとき「暮井ニカのクレープ屋さん」て看板を掲げてクラスの出し物として出した。
私の父は、起業家で、そのひとつに「クレイクレープ」という事業をやっている。
「家でも誰でも作れる美味しいクレープ」を通販で売っている。
子供のころから、両親と美味しいクレープ研究につきあって食べたり、作ったりしていた。
だから、クレープは私の作れるスウィーツの中では最も得意とするものとなった。
看板や、飾り、チラシなどはクラスのみんなが協力して作っている。
私は、去年作成した資料をもとに、その日に合わせて材料発注、おおよその販売数と、それに見合った材料を用意しておくことと、クラスの何人かが作ってみたいということで、すでに作成したクレープ作りの手順を見ながら、家庭科室を借りて、少量で実際作ってみたりした。
「おいしー!!!」
「真っ先に、ニカちゃんのクレープを食べられるなんて幸せ!」
「実際作るの、慣れないとだね!」
「ニカちゃん、今年も文化祭でピアノ弾くの?」
「今年は弾かないかな」
「えー!ニカちゃんのピアノ聴きたかったなー」
「納得できる演奏じゃないから」
「さすがー!でも文化祭でそんなクオリティーみんなわかんないよ!」
「そうだよね笑」
「あっ!」
ボウルを持ち上げた瞬間、少量の生地が机にこぼれた。
「あ、ごめん!」
「え? ニカちゃんがこぼした?」
「そうみたい……」
「クレープの女帝なのに!」
「女帝?なにそれ?」
「おっちょこちょいニカちゃん炸裂?」
「あはは、今年はアタシたちが手伝ってるから緊張してるんじゃない?」
「そうかもね笑」
私も笑った。
皆、楽しみながら準備を進めている。
今回は、「暮井ニカのクレープ屋さん」という看板はやめてほしいとの私の提案が通り、「2年8組のおいしいクレープ屋さん」との看板を掲げることになった。
それでもみんなは、私のことを前に出したがっていて、「暮井ニカ監修」「暮井ニカのスマイル付き」など、チラシや、貼り紙などに記載するなどのアイディアを出して、準備を進めていた。
クラスの販売躍進のためになるならいいかと、私も何も言わず承認していった。
その中、ルカが話しかけてきた。
「まるでアイドルだねー、ニカ」
「え?ああいうの、私もあまり乗り気じゃあないんだけど…それで役に立てるなら」
「自覚してるんだね。自分の名前出せば、売れ行きがあがるって」
「そんなー。去年の効果もあるから」
「最近、勉強とかでは全然、『暮井ニカ』を感じなくて不思議に思ってたけど、やっぱりニカはニカだね。前よりも親近感あっていい感じよね」
「親近感?」
「そう、前まで近寄り難い空気だったもんね。それがまた良かったんだけど、手の届かない存在って感じで」
「そう、、かもね。ルカ、何か怒ってる?」
「別に、そんなんじゃないけど。ニカ最近、毎日、山威先生のところ行ってるよね?」
「うん。面倒なんだけど、毎日、金髪のこと言われてて」
「面倒なら、前の髪の色に戻せばいいじゃない?前の色でも十分可愛いし、赤いリボンも似合ってるし」
「そうしたいんだけど、そうもいかなくて」
「ニカやっぱり男できた?男に言われてるんでしょ?その色がいいって。ブリーチして、まっキンキンて感じじゃなくて、綺麗なブロンドの髪って感じだし」
「そんなんじゃないよ、ホントに」
「ホントに??ニカ、モテるのに、もったいないよー。先生たちからも、そういう目で見られてるのわかってる?」
「わかってるつもり、そういう目、気持ち悪くて」
「ふーん。羨ましいなあー、選び放題じゃん」
「ルカこそ、今日、少し変だね」
「そーお?アタシはいつもこんな感じじゃん」
「それならいいけど」
「ま、山威にも気をつけな。アイツ、近くでニカと話したいだけだと思うよ。それが心配になっただけ」
「え?あぁ、心配ね。ありがとう」
「じゃ!クレープ屋さん成功させようねー」
「そうだね」
山威先生の狙いは、そこにあること
何となく察してはいた。
もう髪の色の話しはしなくなっている。
そして、私の生活が奈落の底に突き落とされる。文化祭の日を迎える。




