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第2話 静かなる異変

第1話で謎の覆面紳士「月光ピエロ」に「才能」を奪われた天才女子高生・暮井ニカ。

その上、謎のパウダーで強制的にブロンド色の髪の毛に。


天才と美貌で注目を浴びる生活に、このことがどう影響されて行くのか。


そして、月光ピエロという存在は一体なんだったのか。


まだまだ序盤ですが、是非、読んでください。

「ただいま」


「おかえりー、ずいぶん遅……どうしたのニカ?その髪」


「お母さん!」

ニカは母親に走り寄って抱きついた。


「どうしたの?何かあったの?」


「もう会えないかと思った…」


「何言ってるの?大丈夫?この髪の色はどうしたの?」


「これは……」

私は、いまだに信じられないあの出来事を、なぜか話すことができなかった。

「急にその、なんて言うか……わからない」


「そんな説明じゃわからないわ。ニカらしくないわね。まず落ち着いて、着替えてらっしゃい。ね」


「うん…」


言葉がうまく出てこない感覚も、この時はただ動揺していたからだと思っていた。



2階の部屋。

鏡に映る自分の姿。


ブロンド色の髪の毛。


「何これ…」


あの、覆面のことを思い出すと、恐怖心が蘇ってくる。


いったい、何が起きたんだろう…。茫然としながら、ようやく黒のサロペットスカートを選んで着替え、1階へ降りて行った。


母親が食事を用意して待っていた。


「着替え遅かったわね」


「お兄ちゃんは?」


「今日から大学の合宿って言ってたじゃない?」


「あ、そうだっけ」


「お父さんも出張中だし、今夜から2人きりね。お腹空いたでしょ。食べちゃいなさい」


「うん」


「似合うわね」


「え?」


「その金髪」


「あぁ、これは…」


気まずさを紛らわすために食事に手をつけようとした。


「おかず…いっぱいだね」


「え?量は少なく、種類は多く、栄養バランス考えた食事でしょ?ニカも一緒に考えたじゃない?」


「そうだったね、何だか、いっぱいあると、何から食べていいかわからなくなっちゃって」


「…やっぱり、何か変ねニカ」


「え?そう…かな」


「隠し事はあってもいい。でも嘘はつかないことが家のモットー。何があったの?ニカ」


「そんなの!両方できないわよ!隠すなら嘘つくしかないじゃない!今だって、食べてとか、何があったとか!どちらかにしてよ!」

ニカは急に立ち上がって2階の部屋へ駆け上がって行った。


「ニカ…」



私は部屋のベットに倒れ込んだ。

「私、何かおかしい…?頭が…混乱する」


コンコン

ドアのノック音。


「ニカ、ドアの前におにぎり二個だけ置いておくね。さっきはごめんね。ちゃんと食べないとね」


「お母さん…ごめん。ありがとう」


今日の出来事…言えない。あんな非現実的なこと。いまでも、夢か何かとしか思えない。



「この髪、どうにかしなきゃ…学校に行けない」




全然、黒染めにならなかった。


「何これ?何なの?なんで…」


そうこうしているうちに、面倒になってきた。


「このまま…行こうかな…」

あれこれ考えると、頭が痛くなる。


鞄から出した、楽譜。


ピアノも弾く気になれなかった。


「お風呂に入って、寝よう…」




朝が来た。


いつもはアラームで目が覚めるけど、今日はハッと目が覚めた。


思い出したように、手で髪の毛を掴んで色を確かめた。


「昨日と同じ…」


夢であって欲しかった。でも、きっと夢じゃないって諦めもあった。


「ニカー?!起きてる?!大丈夫ー?」


「はーい!いま行くー」



ようやく制服に着替えて下へ降りた。


「ずいぶん時間かかったわね。ん?靴下が左右違うんじゃない?」


「え?そんな、はず、あ、ホントだ、なんで?」


「何でじゃないわよ、履き替えてきなさい。学校、間に合わなくなるわよ」


どのソックス履こうか迷ってたのは事実。でも左右違うの履くなんて、どうかしてる。



「その髪、何とかならないの?」


「黒くできなかった…そのこと考えると頭が痛くなるの」


「エクステとか無いの?」


「黒のは持ってないわ!そのこと考えると頭痛くなるの!!」


「ニカ…そんなに、急に怒らなくても」


「あ、ごめん。嘘つかないがモットーでしょ?!このまま行ってくるね!行ってきます!」


私は逃げるように、家を出た。


休んで美容室で黒髪にしようとも考えた。

たけど、もしそれでも黒に染まらなかったら、美容師さんが不思議に思うと思ったら行けなかった。


学校が近くにつれて、いつもと違う視線をビシビシ感じながら学校に着いた。


校門に入る。皆、唖然としながら私を見る。チラ見なんかじゃない。マジマジと見られている。


「ニカー!!」


「あ、ルカ、おはよ…」


「やっぱりニカじゃん!何?どうした?この髪?めっちゃ似合うじゃん?!勉強しすぎてついに弾けた?!」


「そんなんじゃないけど…」


「へぇー、でもちょっとやりすぎじゃないかー?この学校だと」


「やっぱりそうだよね…」


「まあ、学校側も強く言えないんじゃない?なんせ全国トップの学力を持つ暮井ニカ様だからね!」


「やめてよ、様なんて」


「なんか、元気ない?ていうか、今日学校着くの遅くない?いつも先に教室で本読んでるのに」


「…家で色々あって」


「親とか?そりゃあ、その髪の色だとね。アタシは似合ってて良いと思うけど」


校舎に入っても、ザワついている。


「やっぱり、あれ暮井さんだったのか」

「き、金髪ー?白い肌がより白く見えるねー」

「似合うー」

「男できたんじゃ…」

「前の方が良かったなー」



相変わらずの注目。今日はまた格別。

なんだか頭が痛くなってくる。



「やっと着いた」


「何それ?教室にってこと。そうだよね。ほぼみんなニカのこと見てたもんね」


「あ、うん、ルカがいて助かった。ありがとう」


「え??う、うん。じゃあ、またあとでね」



教室に入っても、皆がガン見してくる。

これは普通かもしれない。いきなり誰かが金髪にしてきたら、皆注目する。


この髪の色は、私の意思じゃないのに。


皆が思うこと「ニカちゃんは、勉強しすぎて、ついにグレた」との類いであることは想像がつく。



席に着いた。

今日が早く終わりますように。



山威先生が入ってきた。


皆が席に着く。


「暮井」


「はい」


「一時限目終わったら職員室へ来い」


「わかりました」



「おはよう。今日から授業が始まる。一時限目は歴史。ちょうど私単独だ。今日は日本史って言っといたな。教科書だして」



髪のことは、いまは触れない…か。


「あれ…」


教科書が無い。世界史持ってきてる。


「ん?どうした暮井」


「教科書忘れました。世界史持ってきてしまって」


「そうか。暮井もそんなことあるんだな、じゃあ…隣の小坂、席つけて見せてやれ」


「え、あ、はい」


小坂ナナコ。メガネをかけたおとなしめのおさげの生徒。話したことは全くないけど、名前を見かけたことがある。


「ど、どうぞ…」


「ホントごめんね」


「そ、そんな。いいんです」


小声で話していると、スマホから音が鳴った。


「誰だ?!サイレントにしとけ」


アラーム?え?わ、私の!?

なんで今頃!


「私でした。すみません!」


「暮井??どうした?忘れ物といい、らしくないな」


「すみません…」


皆も少し驚いている。


アラームが9:00に設定されてる?どおりで朝鳴らなかったんだ。



5分後、再びアラームが。



「また暮井か?またか!しっかり止めとけ!」


「止めたはずが…」


「スヌーズ機能だろ、頼むよ。髪の色変えておかしくなったか?」


教室が変な空気になっていく。


異常に長く感じた、一時限目が終わった。


「暮井、職員室だ」


「はい」

「小坂さん、ありがとう。助かりました」


「いや、そんな、光栄です!」


「光栄?」


「いや、なんでもありません!」


「暮井!早く」


「はい、いま行きます」




職員室ー


教師たちが私に視線を向ける。


「暮井、わかるな?」


「髪の毛の色」


「そうだ、前のように戻してこい」


「もちろん、試したんですが、ダメだったんです」


「そんな言い訳あるか、明日には戻してこい。そんなの高校卒業してからでもできるだろ」


そんなことは、わかっているのに。


「とにかく、お前は高校生活だけなんかに惑わされるな、先生たちもついて行けないくらいの頭脳があるんだから、卒業してからでも髪の色なんて自由に楽しめるだろ、遊びなんかに乱されるんじゃない、わかったな」


「はい、申し訳ありません」


「よし、わかったならいい、次の授業もある、行きなさい」


「はい」


職員室を出ると、鬼竜が待っていた。


「ニカちゃん。似合うじゃんその髪。ついにオレと付き合ってくれる前触れか何か?」


「いや、」


「鬼竜!授業始まるぞ!お前もその茶髪なおしてこい!」

山威が出てきた。


「うるせーな、関係ねーよ」


「なんだその態度は!」


「わかったわかった、せっかくのニカちゃんとの時間邪魔するからさ」


「暮井も次の授業遅れるなから、そんな奴に構ってないで行きなさい」


「ああ?そんな奴だぁ?」


「鬼竜くん!私、授業遅れたくないから行くね」


「お、おう。き、きりゅうくんて呼んでくれた!せ、先生、ありがとう、授業行くぜ!」



早足で教室へもどると、授業がはじまる鐘が鳴った。


次は、数学。間に合った。

教科書…ちゃんとある。良かった。


数学の女教師が入ってきた。

一年生のときからの同じみの鈴池先生だ。


鈴池先生は私の方を見て、無表情のまま驚いてる様子だった。


「数学を担当する鈴池です。よろしくお願いします。じゃあ今日はおさらいからです」


淡々と授業が進む中、違和感を感じた。

内容が、理解できない。


「暮井さん」


「はい、この数式解けるわよね、一年生のとき解いてたやつよ」


「は、はい」


「黒板に書いてみて」


高一の時から、鈴池先生は私に絶大の信頼をおいている。数学は哲学を解くようで、好きだった。


のに。


「わ、わかりません…」


「そんなはずないわ、去年解いてたでしょ?」


「わからないんです…」


「私、覚えてまーす」


「渡瀬さん、じゃあ、代わりにお願い」


ルカは、なんなく数式の答えを黒板に書いて行った。


「正解、確かに難しいけど、よくできたわね」


「ありがとうございまーす」


ルカは、私の方を少し見て席に戻って行った。


何かが、違ってきている。確かに、去年解いたことは覚えているし、休み中の課題でもしっかり復習したはず…

何かが、おかしい…





あの覆面の男が脳裏に浮かぶ。





「明日になればわかる」   



急に、胸の奥が冷たくなった。



「才能を奪った」



まさか、本当に…!























読んでいただき、ありがとうございました。


徐々に、生活に異変を感じる暮井ニカ。

まだまだ止まらないニカのミス連発。

このことをきっかけに、さらに学校では、ニカの噂が広まっていく。

ニカの苦悩を描く、第3話へと続いていきます。

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