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第1話 奪われた才能

はじめまして。


『サンライズ・エクリプス 』を読んでいただき、ありがとうございます。


この物語は、


「状態異常」×「バトル」×「人間ドラマ」


をテーマにした作品です。


主人公・暮井ニカをはじめとする高校生をはじめとする人達が、さまざまな「状態異常」や、自分自身の心と向き合いながら戦っていきます。


第1話では、その始まりとなる

「才能を奪われる」という出来事を描きました。


才能があること。


努力すること。


誰かに認められること。


そして――それらを突然失うこと。


もし、自分が今まで積み重ねてきたものを、ある日突然すべて奪われたら。


それでも、自分自身でいられるのか。


そんな問いかけをしたいわけじゃなく、失ったことで、他人への理解を深めていく、ニカの人生に、何を感ずるか。


まだまだ未熟な作品ではありますが、ニカたちの物語を最後まで一緒に見届けていただけたら嬉しいです。


それでは、

『サンライズ・エクリプス』

始まります。


「あの赤いリボンをつけた女か」

桜が舞う校庭ー

覆面で不敵な笑みを隠しつつ、深い青色のスーツで身を包み、1人の男が木の枝に立って呟いた。


「そうだね。あれがクレイ・ニカだよ。外見データだと99%一致してるよ」

覆面の男の足元で、猫のようなロボットが、機械音の声で応えた。


「暮井ニカか、今日が頃合いだ。奪わせてもらう」

男は可愛らしい虎柄の黄色い覆面の上から、ポニーテールのブラウンの長髪をなびかせている。


「今夜から、また1つ、悲劇が始まるんだね」

額にローマ字でⅫと記された猫型のロボットが発する。


「トゥウェルブ、悲劇かどうかなんて、心次第さ」覆面の奥に冷めた目を忍ばせ、応えた。


「よく言うよ、期待してるのは彼女の悲劇でしょ?」


「……まあね。だがそれは、ただの余興。今日までいまの生活を楽しむが良い、天才女子高生・暮井ニカ」





「ん?」

誰かがあの木の枝に立ってたように見えた。

ここは、校舎の2階。

「あり得ないか」


櫻丘第一高校の生活も今日から2年目。また、窮屈な学校生活が始まる。

なぜ、窮屈か?

学校の勉強が?校則が?そんな一時的な拘束なんてどうでも良い。


私には未来がある。大きな未来が、この先ずっと広がっている。いま努力するのは、その未来に輝くため。


何が窮屈かって?それは…



「暮井さんだー」

「ニカちゃーん」

「暮井ニカと同じクラスだぁ、ラッキー過ぎる」

「お前、隣のクラスだろ、はやく戻れよ、もうちょい見させてくれよー」

「うわー、マジで可愛い」

「挨拶してこよーかな…」

「本読んでるから、やめとけよ、迷惑だろ」

「あの本、なんだろう、私も買ってみよ」

「LINE教えてくれないかな」

「バカ、お前じゃ無理だろ」

「き、綺麗な顔ぉ〜、写メ撮っちゃまずいよね」

「勉強なら教えてくれるかな」


ザワザワ、ヒソヒソ。



いつになっても止まない声、視線…。

私はいま、本を読んだふりをしている。

私への注目は、もう諦めている。

かと言って、調子にも乗りたくない。



「おっはよーニカっ!また同じクラスだね」

「おはよ〜、よろしくね、ルカ」 

「相変わらずすごい人気だねぇ、廊下の方までニカを見ようと人集りができてるよ」

「そうかなー?」

「そうに決まってるでしょー」



「渡瀬ルカじゃん。ニカルカ・コンビ継続かー。学年成績1位2位の優秀コンビ、すげークラスだな」

「バカ聞こえるぞ、2位の渡瀬の方は気にしてるんだから」



「テメーら!さっさと散れ!2人が迷惑してんだろ!!」


「げっ、鬼竜だ!戻るぞっ!」

人集りは散っていった。


「ニカちゃん、ルカちゃん、困ってることあったらオレに言えよっ」

鬼竜はニカたちに、グーサインを出して去っていった。


ルカが作り笑いで鬼竜に手を振った。

「鬼竜かぁ、1番離れた教室からよく来たねぇ。アイツもニカを見に来ただけよね」

「え?まあ結果助かったような…」

「ま、またよろしくね!ニカっ」

とニカの前の席に座っていたルカは、自分の席へ戻っていった。



「サイゴー!一緒のクラスかぁ!やったなぁ!」

「え?!何言ってだよ、暮井さんに聞こえんだろ」

「バァカ、オレと一緒のクラスってことだよ!部活一緒に行けんじゃん」

「あ、え、そ、そうだな!はははっ、軽音でも一緒だから同じクラスとか違和感なかったよ」

「暮井さんがどうしたってぇ??神村サイゴくん?笑」

「だから聞こえんだろって(汗)」




私への注目…、自分の中のバランス…。

視線の中に欲望を感じ、気づいてないように振る舞う、それが私を疲れさせる。

私は私、私の思う未来へ向かうだけ

私自身のために。




「担任の山威だ。今日からこのクラスを受け持つ。よろしくな」


山威先生か。若くて高学歴みたいだけど、女性の担任の方が良かったな。



「じゃあ、出席取るぞ」


安藤メグミ  はい

井之上サトシ はい

長内カヨ はい

神村サイゴ はい

…

…

暮井ニカ はい


「暮井ニカか、学年トップ、いや全国トップクラスの成績の生徒の担任となると、誇らしいな」


余計なこと言わずに、出席進めていって。


「よろしくな、暮井」


「ありがとうございます。それを言うなら一人一人に言わないといけないと思います」


「そ、そうだな。痛いとこつくなぁ」


「先生もニカちゃんと話したいんだよなー笑」


とある、男子生徒が先生に突っ込んだ。

場は和んだが、ニカの正論の余波を残しつつ、出席確認は進んでいった。


小坂ナナコ はい

…

…

渡瀬ルカ はーい


「以上だな。よしっ全員いるな」


「私には何かないんですかぁー?」


「渡瀬、あまり先生を困らせるなー笑」


「先生がニカだけ話しかけるからですよー」


「悪かった。悪かった」


生徒が笑い出す。



「今日は、午前中で終わりだな。クラスでは学級委員を決めるのと、休み中の課題の簡単なテストをやって終わりだ」


「じゃあ早速、学級委員を決めるが、立候補者か推薦いるか?」


「ニカちゃんが良いと思います!」

「俺もー」

「私も暮井さんが良い!」

「賛成ー!」


「暮井、推薦者いっぱいいるが、やってくれるか?」


「私は、適任と思えないので辞退したいです」


「えー、暮井さん以外いないでしょー。ずば抜けて成績優秀だし」


「成績優秀とクラスをまとめるのとでは、違う能力だと思いますし、まだクラスの人達は今日集まったばかりで知らないですし、日を改めて決めた方が、私は良いと思います。」


「確かにその通りかもー」

「んー、さすがニカちゃん」

「でも、やっぱり暮井さんが良いけどなー」



「んー、まあなー、でも全クラス今日決めることになっててだなー。先生、困ったなぁ」



「私やるー。ダメかなぁ?ニカも困ってるじゃん」


「渡瀬か、いいんじゃないかー?みんなも良いだろう?」


「ルカちゃんなら適任かもー」

「そうだなー、ナンバー2だしなー」

「いらんこと、言うな笑」

「賛成ー」


「よし、じゃあ、渡瀬、頼むわ」


「承知しましたー。ナンバー2、頑張りまーす」


「わはははは。」


「ルカ」 


「いいの、いいの、ニカ。これで丸くおさまるでしょ!」


「ルカが良いなら良いけど…」



論理的じゃない。みんな学級委員なんてやりたくないから、いいように押し付けてるだけ。



「よし、部活だ」

私は、バスケ部。中学のころからやっていて、楽しみの1つでもある。

三限目が終わり、学食のパンを買いに廊下を歩く。

チラ見。

また、チラ見。

男子の視線は、常々感じている。気づいてないふりをして歩くのも無意識になって来た。

自惚れたくもない。でも、確実に視線を感じる。視線の奥にある「欲」が気持ち悪い。



部活にも視線を感じるけど、それよりもプレイに集中している。この感覚が好き。

何よりも、バスケは面白い!





「すげー、あそっからシュート入るのかよ。」

「スリー、何本決めた?」

「カットからの速攻はやい〜!」


体育館でも、あきらかにニカ目的で見学する者もいる。


ニカがボールを受け取る。


一人が前に出てくる。


――右。


一瞬だけ相手の重心が傾いた。


その逆へ踏み込む。


「えっ――」


一気に抜ける。


ゴール下まで駆け込み、そのままレイアップ。


「入った!」


「速っ!」


「今のフェイント何!?」


「普通は見えてても、あんな一瞬で判断できないって!」



体育館が少しどよめく。






「おつかれさまでしたー」


よし、帰ったらピアノの練習。


「あれ、楽譜がない」

鞄の中を探す。


…ない。


「机の中かな」


「どうしたの?ニカ」


「忘れ物。先に帰ってて」


「えー、一緒に帰ろうよー」


「ごめん!待たせるの悪いし」


「うーん、そっか、じゃあまた明日ね」


「うん。また明日」


――このことが、すでに仕組まれたことだったとは


私はまだ知らなかった。



「あったー。よかった。机の中なんかに入れたかなー。まあ、いれたんだろうなー。さて、帰るか」



校舎を出る頃には、すっかり日が落ちていた。


昼間はあれほど騒がしかった校舎も、今は静まり返っている。


靴音だけが、廊下に響く。


「……ずいぶん遅くなっちゃったなぁ」


校門を出て、小走りで帰路につく。


「今日は、ちょっと疲れたな。歩こう」


空を見上げる。


「あ、今日は満月か。……綺麗だな」



「同感だよ」


「え!?」

ニカは後ろを振り向いた。


「…と言いたいところだが、満月がそんなに美しいかい?ワタシはそうは思わんよ」


「だ、誰?!!」


月明かりが男を照らす。


深い青色のスーツ、虎模様のような黄色、二次元世界を彷彿とさせ、その不気味さとは裏腹の丸い可愛らしい目のマスクを被り、ポニーテールにしたブラウンの髪が揺れる。


「きゃ…」


「スキャッターブレイン」

ニカが叫ぶ前に、男は瞬時に手から黄色い光を放った。


ニカ心の声「こ、声がでない…」


「そんなに恐れるな。君の脳を混乱させた」


ニカ心の声「動けない…助けて、誰か助けて…誰か…逃げなきゃ…でも、動けない、声が出ない…怖い…助けて…助けて…」


「事が済んだら解放してやる。私の名前は、月光ピエロ。覚えておくといい。ふふ、ワタシは三日月の方が好きでねぇ。欠けてる影に美しさがある」


ニカ心の声「何を言ってるの?おかしいこの人、助けて!誰か!」


「命を取ろうとってわけじゃない。いただくのは…君の才能」 


ニカ心の声「才能??」


「それと君の培った能力もだ。ある男に頼まれていてね」


ニカ心の声「この人、何を言ってるの?!」


月光ピエロと名乗る男は、体に黄色い光をまとった。

「一瞬だから心配するな。いくぞ。スキルスワイプ!」

男が手を振り翳すと、手から放たれる黄色い光がニカの胸あたりを通り過ぎた」


ニカ「!!」


ニカの中から、青白い光が出た。


「ふふっ、出たようだな。この光が君の才能と蓄積した能力だ。綺麗な光だ。眩いばかりの才能だ」


ニカ心の声「何これ?!」


「トゥウェルブ!」


猫型のロボットのような猫が現れた。

「待ちくたびれたよ。さっさとやれば良いのに」


「まあ、そう言うな。その光がそうだ。あとは頼んだよ」


「最近、ボクばかりを使うね。自分で持ってけば良いのに」


「何言ってる、君の新機能はそのためにあるんだろ。さっさと取り込め。レイナと多くいるようになってからわがままになってきたな」


「レイナは荒っぽくないからな。わかったよ」

トゥウェルブと呼ばれるサイボーグのような猫に、ニカから出た光が吸い込まれていった。

「完了したよ」


「ご苦労。早速、運んでおいてくれ、それはいつもとは違う場所に」


「わかってるよ。あの人の元へだよね。じゃあ、先行ってるよ」



ニカは膝をついて、四つん這いに倒れ込んだ。



月光ピエロは、深い青のスーツの胸ポケットから小袋をとりだし、ニカに投げた。


「きゃあ!」


ニカは、粉の煙に包まれた。


「ゲホッ、ゲホッ。何、これ?」


「ブロンドパウダーといってな、髪の毛がブロンド色になるだけだ」


「金髪?!こ、声が出る」


「麻痺は一時的なものにしたからな。ほら、みるみるうちに髪の毛がブロンドに」


「何?私に何をしたの?」


「才能を奪った。ついでに金髪にした。以上だ」


「才能?何を言ってるの?何のために?」


「まあ、明日になってみればわかる。じゃあな、暮井ニカ」


「待って!私に何をしたの?!」



そこに、月光ピエロと名乗る男の姿はなかった…。







第1話、最後まで読んでいただきありがとうございました!


まずは物語の主人公、暮井ニカの「才能を奪われるまで」を描いてみました。




登場した、月光ピエロとサイボーグ猫「トゥウェルブ」


なぜニカの才能が狙われたのか。


奪われた「才能」は一体どうなったのか。


そして、才能を失ったニカはこれからどうなってしまうのか。


次回から、物語は徐々に大きな世界へ動き始めます。


「才能を失った少女の物語」


ここからが、ニカの本当のスタートです。


次回も読んでいただけたら嬉しいです!

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