第16話 山威の回想② そして…
夜頭ノイド
「これで我々の製品の力は証明されたと思いますが、購入をご希望されますか?山威先生」
山威
「……本当にこんなことが」
夜頭ノイド
「考えておいてくださいという選択肢は無しでお願いします。私から山威先生におすすめするのは今日限りです」
山威
「…どうなる?もし、その才能ってやつをオレに注入したら、どうなる?」
夜頭ノイド
「先ほども申し上げましまが、教師としての指導センスに優れ、教師や生徒内からの評判は上昇し、カリスマ性を備えれば、男子、そして女子生徒からも大人気となっていくこと間違いないでしょう。ましてや、山威先生は、まだお若い。今でも、人気はおありなんじゃないですか?あのSNSで話題のおじさん教師ですら、あの状況ですよ。山威先生なら、間違いなくそれを超えますよ」
山威
「………わかった。購入…するよ」
夜頭ノイドは不敵に微笑む
「ありがとうございます」
山威
「だが…恥ずかしい話しだが、500万円をすぐに用意することはできない…その、頼み事を受け入れれば無料というのは、本当なのか?」
夜頭ノイド
「はい、本当ですよ。引き受けていただけますかね〜?」
山威
「内容にもよるが…一体なんだ?」
夜頭ノイド
「ふふ。暮井ニカを精神的に追い詰めて欲しい。それが私からの依頼です」
山威
「なに?暮井を?!」
夜頭ノイド
「そう、あなたのクラスの暮井ニカ。彼女を追い詰めて、私の前に連れてきてください。そしたらアナタに、無料で、先ほどの教師の才能を与えます」
山威
「どういうことだ?暮井をなぜ追い詰めるんだ?」
夜頭ノイド
「彼女を、我が社の製品で救ってあげたいからです」
山威
「中学の同級生なら、そんなことしなくても会って話してみたらいいんじゃないか?」
夜頭ノイド
「ちょっと理由ありでしてねぇ。それに、彼女は…すでに魅力的な才能は元々備わっていた。だが、そんな彼女も、いまは、己の無力さに苦しみはじめているに違いない。いまはまだ過去の栄光の余韻のおかげで、自身の欠点があからさまに悪影響を及ぼしてはいないだろう。しかし、これから味わう無力感の中に、彼女は求めてくるだろう。私を、私たちの力を。そのためには、まず彼女を追い詰める必要がある」
山威
「何だってそんな…」
夜頭ノイド
「…彼女は美しい…。そう思いませんか?山威先生は」
山威
「え?そ、そう…だな」
夜頭ノイド
「彼女は優秀な人を好むんです。山威先生、アナタも是非、才能を手にして、今とは比べものにならない教師生活の未来を掴んでくださいよ」
山威
「…………何をすればいいんだ?」
夜頭ノイド
「アナタに、『ストゥーピット』を、いま私が所持している分の残り4つを差し上げます」
山威
「あれを?暮井を追い詰めるのと関係あるのか?」
夜頭ノイド
「その優秀さ、その美しさから、暮井ニカを妬む人間は何人かいるはずです。山威先生が見極めてストゥーピット寄生させてください。きっとその者が、嫉妬心を抑えきれず、暮井ニカを自動的に追い詰めていくでしょう。アナタは、その影に隠れて補助をしていけば済む流れになるはずです。暮井さんを嫉妬している人物、思い当たる人いますか?」
山威
「……………いる」
夜頭ノイド
「そうですか、じゃあ話しは早い。では、ストゥーピットお渡ししておきます。この筒から出して対象の者に投げつけるか、手で押し込んでも寄生していきます。たとえば、背中を叩くふりをしてストゥーピットを投入したりと工夫してみてください。くれぐれも人に見つからないように投入することをおすすめします。……ちなみに、我が社の特別販売ツールからレアなアイテムから様々な才能まで購入できるようになってるので、山威先生にメールで『招待状』送っておきます。私と連絡先だけ効果しておきましょう」
山威
「え、招待状?」
夜頭ノイド
「そうです。今のところですが、その招待状がないと、特別販売ツールには入れないので」
山威
「ストゥーピットもそこで手に入るってことか?」
夜頭ノイド
「ストゥーピットは商品としては販売してなく、詳しくは言えませんが、かなりコストかけてつくられているので、差し上げたものは大事に使ってくださいね」
山威
「…何て会社なんだ?君の会社は」
夜頭ノイド
「興味持たれましたか?ふふ。アンビヴァレントです」
山威
「アンビバレント?聞いたことあるような、ないような…」
夜頭ノイド
「ふふ。これからが飛躍の時です。そして、特別販売ツールは『マーケット・ゼロ』と呼ばれております。先生には、ネット版だけ教えておきましょう」
山威
「マーケット・ゼロ?」
夜頭ノイド
「この話はここまでにしておきましょう笑。では、そろそろ…」
山威
「ちょっと待って!な、なぜオレを選んだ?」
夜頭ノイド
「暮井ニカの担任だからですよ。私と暮井さんに感謝してくださいね」
山威
「それだけで?」
夜頭ノイド
「そうですが、何か?」
山威
「いや、なぜ君は…」
夜頭ノイド
「余計な探索は不要です。では、検討を祈ります。あとの私とのやりとりは電話のみでお願いします。次お会いする時は、条件をクリアして才能をお渡しする時が良いですねっ、ふふ」
第二体育館 柔道部更衣室
山威
「そんな具合で、オレは夜頭くんの依頼を受けてしまった…」
ニカ
「……」
破部
「なるほどな。それで、どこまで、伝えてありますか?暮井を追い詰める件について。夜頭に」
山威
「暮井が一週間休んだところまでです」
破部
「夜頭は何て?」
山威
「もうすぐですね、楽しみにしてますよと」
破部
「何が楽しみだ。ふざけた男だ」
山威
「これから…どうすれば…」
破部
「…そうだな、気になることは、まだいくつかあるが…、まずは寄生者を元に戻すのが優先だ。山威先生が最初にストゥーピットを寄生させたのは、渡瀬ルカですか?」
山威
「そうです…。彼女は割と私に心を開いていてくれていて、暮井に嫉妬心と対抗心があるのも知感じていた。彼女にストゥーピットを投入することは簡単だった…」
破部
「大事な生徒をなぜ…」
山威
「………。夜頭くんが言っていたことが図星だったからだよ。実際、私は教員生活へのストレスが限界だった…。いま思えば、どうかしていた…」
ニカ
「……」
破部
「それから、鈴家と鬼竜にも?」
山威
「はい…。渡瀬はストゥーピット寄生後は、暮井への嫉妬心が増大していってるのが見て取るようにわかったよ…。クレープの食中毒事件を企てたのも彼女だ」
ニカ
「そんな…じゃあ意図的に、クレープを利用して…?」
山威
「そうだ。すまない…暮井。後半のクレープの材料に、渡瀬が薬物を混ぜたんだ」
ニカ
「酷い…、そんなことをさせてしまう、山威先生も、そのストゥーピットってものも…」
山威
「そうだよな…。すまなかった。あの時、オレは、ストゥーピットの力の凄さに、自身の欲も掻き立てられていた…何かに取り憑かれていたかのように…」
破部
「……」
ニカ
「破部先生、さっきストゥーピット寄生者をもとに戻すのが優先って言ってましたけど、戻せるんですか?」
破部
「ん?ああ、戻せる」
ニカ
「どうやって?!」
破部
「これを使ってな」
破部は、山威が使っていた黒い筒のような武器を拾い上げた
ニカ 山威
「それを?!」
破部
「山威先生、これ、購入したんですか?アンビヴァレントの販売ツールから」
山威
「え?そ、そうなんです…。よくわかりますね?本当にアナタは何者なんですか?」
破部
「だから言ってるでしょう。アンビヴァレントを阻止する者と」
破部がその筒を握りしめると、筒の先からオレンジ色の光がガスバーナーのように放出された
山威
「!!」
ニカ
「な、なんですかそれ?!」




