第16話 山威の回想①
山威は夜頭ノイドとの出会いを話し始めた。
山威
「はじめ声をかけられた時は、銀髪で高級そうな黒のスーツ姿だったから、まさか高校生とは思わなかったよ…」
【回想】
「山威先生ですよね?」
いつものスーパーに車を停めると、となりの黒い大きな車の後部座席から降りてきたのが、夜頭だった
「え?そうだけど」
「ちょっとお話しがあって、お付き合い願いたい」
「というか、誰かな?あなた」
「おっと失礼。私の名前は夜頭ノイド。とある会社の副社長です」
山威
「やとう のいど?副社長?で、私に話し?怪しい話しならお断りします」
夜頭ノイド
「櫻丘第一の教師ですよね?」
山威
「……」
夜頭ノイド
「なぜそれを?って感じですよね。あなたのクラスの2年8組に中学の同級生がいましてね。それで知ってるんです」
山威
「中学の同級生?誰?」
夜頭ノイド
「暮井ニカです」
山威
「暮井かー、同級生?君は、高校生なの?」
夜頭ノイド
「そうですよ。そう見えないですかね。まあ、この髪の色とこのスーツ姿じゃ、高校生に見えないですかね、ふふふ」
山威
「高校生で副社長って、何の仕事してるの?」
夜頭ノイド
「慈善介護施設や障害者へ補助製品の研究開発などしてます」
山威
「へえ〜、偉いもんだね。話があるって言ってたよね?私なんかに何の話し?」
夜頭ノイド
「高校での教育は大変じゃないですか?」
山威
「え?まあそれはね。苦労ばかりだね」
夜頭ノイド
「そうですよね。言うことを聞かない生徒。世の中全て知ってるかのように生意気言ってくる青二才。いじめ、不登校、暴力、家庭環境の問題への対応、こちらが努力しても解決しない問題だらけ。生徒のために尽力を尽くしても本人や保護者から理解されない理不尽さ。その割に報酬に反映されない。学業の成績あげることだけに専念するな塾講師でいいじゃないか、自分の時間なんてない、辞めてしまいたいって具合でね」
山威
「うぐっ…否定はできないな…」
夜頭ノイド
「でしょう?教師を志したときの理想とはほど遠い現実じゃないですか」
山威
「はは。まだ三年目だ。そう簡単にいかないのは、わかってるよ」
夜頭ノイド
「そうですか?山威先生。もう、こんな仕事辞めてしまいたいと思ってるんじゃないですか?仕事を始めて三年目、ちょうど辞めたくなる時期です」
山威
「そりゃあ…そう思うことはある。でも…」
夜頭ノイド
「今夜もお酒を買って帰るのでしょう?帰って飲んで、迎えたくない明日をまた迎えて、仕方なく職場へ行き、またストレスをためて酒を買って帰る。そんな毎日。でも何ですか?やりがいもあるとでも?」
山威
「生意気言うな!さっきから何なんだ、高校生だろ君?!」
夜頭ノイド
「これはこれは、すみません。言葉が過ぎましたね。あなたを馬鹿にしに来たんじゃない。そろそろ結論から伝えないとですね。あなたのその苦労、解決して理想の教師になれますよ、我が社の製品を使っていただければ」
山威
「何を言ってる?障害者関係の製品開発じゃなかったのかい?だいたい、怪しすぎる。何かの情報商材なら帰ってくれ」
夜頭ノイド
「わかります。そう思いますよね。なら話だけでも聞いてください。山威先生には憧れる教師などいたりしますか?」
山威
「ん…まあ、いるねぇ。私の高校の時の担任の先生」
夜頭ノイド
「おお、その方の影響で教師を?」
山威
「それもそうだけど、教師の中では優秀な人もたまにいるから憧れるというか、羨ましいというか、そんな教師もいるねぇ。俺もああなりたいなぁって」
夜頭ノイド
「ですよねぇ。では、もしその羨ましいと思う教師の才能・能力をそのまま手に入れて自分のものにできたとしたら、どうです?」
山威
「どうですって、そんな魔法のようなことできたらって思うことたまにあるけど、そんなんでうまくいってもしょうがないとも思うかな」
夜頭ノイド
「おっしゃる通りで。では、こちらの方ご存知ですか?」
夜頭はタブレットで画像を見せてきた。
山威
「ん?ああ、SNSで人気のおじさん教師だろ。それくらい知ってるよ」
夜頭ノイド
「そうです。この方、以前は、生徒からも軽んじられ、教育も不得意。クラスの成績もあげられずに悩み切っていた人なんですが、この人、我が社の商品を使ってから一気に教育現場で活躍し、なんと女子生徒からも大変人気になるという変わりようで、自身のSNSでも1万人ほどもフォロワーが増えてる大人気の教師になり、教師生活が一変したんですよ」
山威
「そうなの?まあ、なんでこんなおじさんがとは思ってけど。でも、やっぱりあり得ないよな。何なの商品て?ノウハウとかでしょ?やっぱり」
夜頭ノイド
「情報商材のようなノウハウじゃなく、才能を注入するだけですので、簡単です」
山威
「は?才能を注入?」
夜頭ノイド
「はい。タブレットで開いて見せますね。…はい、こちらです、様々な才能をご用意させていただいております」
山威
「ちょっ…ちょっと、何を言ってるんだ?やはり詐欺まがいの……って、何これ?100万円?250万円、300万円…1000万円、1億まである!?最低100万円からって。だいたい、こんな嘘くさいもの誰も買うわけねーだろ」
夜頭ノイド
「詐欺とは、失礼な、こちらも大変苦労して販売させていただいてるんですよ。その先の人生が一変して華やかになっていくことを思えば安いもんですよ」
山威
「いきなり買わないだろっての」
夜頭ノイド
「購入される方もいますよ。ですが、お気持ちはわかります。なので、わたしたちの技術を目の前でお見せしたい。その先に、購入を考えてみてください」
山威
「こんな高単価なもの、いきなり買えないだろ」
夜頭ノイド
「いまから、我が社の開発した『光形化』を応用して生み出したもので、どれだけの変化が起きるか見ててください」
山威
「話を進めるな、押し売りだぞ」
夜頭ノイド
「さっきの生まれ変わったおじさん教師は『教師指導力とカリスマ性』の才能・能力を購入しました。山威先生には、同じ感動を味わっていただきたい。教育指導力、カリスマ性が揃えばいままで悩んでいた時間も、愚痴でいっぱいの時間も他の時間に費やせる。そして、男子だけでなく、女子生徒からも大人気の教師になれることは保証します。そして、あることを引き受けてくだされば、本来500万円のその商品を無料で提供させていただきますよ」
山威
「そんな……」
夜頭ノイド
「まずはご覧ください。我が社の商品『ストゥーピット』の威力を。こちらは、この光形化したものをこの『ストゥーピットガン』に入れて、対象に撃つだけです」
山威
「おいおい…」
夜頭ノイド
「あそこに、パチンコに負けていつも座ってる壮年がいます。あの壮年にこのストゥーピットを今、投入してきます。見ててください」
夜頭ノイドは、ベンチに落ち込むように座ってる壮年近くへ行き、人目につかぬようストゥーピットガンを撃つと、小さな光の玉みたいなものが壮年の胸の中へ入っていった。
夜頭ノイド
「どうです?見ましたか。これからが見ものです」
山威
「だ、大丈夫なのか?あのおじさん死んだりしないよな…」
夜頭ノイド
「それは無いです。が、いまあの壮年は欲望のままに行動することになるでしょう。おそらくですが、スーパーへ入り、どうにかしてお金を盗み、パチンコへまた行くでしょうね」
山威
「……」
夜頭ノイド
「ほら、動いた。少しあとをつけてみましょう」
その壮年のあとをつけると、おにぎりを手にすると歩きながらポケットに入れていた、そして、壮年がある婦人とぶつかると、婦人のバックが落ち、拾うしぐさの中で財布を抜き取っていた。
夜頭ノイド
「ほら、言った通りでしょ」
山威
「犯罪促進してどうすんだよ」
夜頭ノイド
「その通りです。だが、狙いはここから。先ほどの窃盗はスマホで撮らせてもらった。こちらは彼の弱みをにぎっている。これで彼は、私の言うことを聞くしかなくなった」
山威
「悪どいな。俺には逆効果の印象だぞ。やはり帰る」
夜頭ノイド
「帰るのはいつでもできます。どうですか、こんな話し誰かに言って信じると思います?」
山威
「信じないだろうな。誰かに言うつもりは無いよ。やってることがおかしい。そう思っただけだ」
夜頭ノイド
「彼はあなたの為に犠牲になっている。見届けてあげるのがあなたの責務です」
山威
「おいおい、これは君が勝手に…!」
夜頭ノイド
「わからないかなぁ。こんな話し誰も信じない。だけど、我が社の製品は本物と証明された。つまり、それを知ってる私達だけが、社会を『支配』していけるんです」
山威
「は?……犯罪…だろ」
夜頭ノイド
「盗みを犯したのは彼です」
山威
「そのきっかけは、そのストゥーピットってやつだろ」
夜頭ノイド
「誰が信じます?」
山威
「それは…」
夜頭ノイド
「理解できましたか。そして、これで終わりじゃない。窃盗を犯した彼を救えるのも私たち。見ててください」
山威
「……」
夜頭ノイドは、パチンコ屋に入る前に、さっきの壮年に話しかけた。
夜頭は、窃盗のことを話し動画を見せた。
壮年は、観念したのか、うなだれて座り込んだ。
夜頭ノイド
「私たちは警察ではありません。あなたはここからやり直せますよ。私は『才能』を販売しておりまして、こちらから選んでいただければ購入でき、それからの人生が必ず変わります。いかがでしょう?」
壮年
「さ、才能を販売?頭おかしいんじゃないのか…」
夜頭ノイド
「この状況で、よくそんな失礼なこと言えますね」
壮年
「あ、あぁ、すまない。パチンコで勝つ才能でもありゃ、欲しいもんだ…」
夜頭ノイド
「パチプロの才能はございますよ。100万円からになりますが」
壮年
「ひゃ、100万?そんな金あったら苦労しねーわ、払えるわけねーだろ」
夜頭ノイド
「そうですかねー?いままでパチンコにそれ以上注ぎ込んでるんじゃないですか?」
壮年
「そりゃそうだがよ、こっちは金に困ってるんだよ…」
夜頭ノイド
「そうですよね。じゃあこうしましょう。今日だけ無料でいいですよ」
壮年
「無料?なら…そりゃあ…ホントに勝てるようになるんなら」
夜頭ノイド
「必ず勝てるってなら無料じゃ安すぎる。勝てるセンスは強くなる、とでも言っておきます」
壮年
「どうせ俺は、もう人生終わりだ…無料ならくれ」
夜頭ノイド
「承知致しました。今日は特別です」
山威
「ホントにいいのか?おじさん」
壮年
「なんだ?いまさら、ホントにいいのか?って」
夜頭ノイド
「黙っていていただけますか?山威先生。あなたの為にお見せするんですから」
山威
「俺のために?」
夜頭ノイド
「では、こちらへ。車に、ちょうどその才能は持ち合わせていますので」
夜頭ノイドが降りてきたワゴン車に戻り、車に乗った。
夜頭ノイド
「こちらの筒に『パチプロの才能』が入っております。こちらが才能を注入するGun型機材『グラフター』です」
壮年
「お、おいおい、こ、殺す気じゃあねぇだろな?」
夜頭ノイド
「こちらに、そんなことするメリット1つもありませんよ。大丈夫ですから。ではいきます」
夜頭は、紫色に光る筒を大きな銃のようなものに入れると壮年の胸に目掛けて撃ち放った。音もなく丸い紫色の光が壮年の胸に入った。
壮年
「うおおお、何だこれは!?はわ、はわわわぁ、死なねーよなぁ?」
夜頭ノイド
「終わりました。これで、あなたはパチプロの才能を得ました。どうですか?早速、試してみては?」
壮年
「お、おう」
夜頭ノイド
「その前に、盗んだサイフはお返しするか、先ほどのスーパーに落とし物として届けておきましょう」
山威
「そんなんで良いのかよ。おにぎりは?」
壮年
「まだ食べてないから、普通に買ってくる」
山威
「そういう問題じゃ…」
壮年は少し雰囲気が変わった感じがした。
第二体育館 柔道部更衣室
ニカ
「本当に、才能の売買が行われているの?」
破部
「わかってはいたが、胸くそ悪い手口だな…」
山威
「それから、その壮年はパチンコ屋に入り、台の様子を見歩くと、ハイエナして、持っていた残りの1000円で見事に当てて、4万にして戻ってきたよ」
ニカ
「よくわからないけど、たまたまにも思える」
山威
「そうだな…。だが、調子にのらずそこで止められることも、その壮年は不思議がってたよ」
破部
「壮年のストゥーピットは寄生されたままか…。
で、夜頭の狙いは、そこからだろ?暮井を追い詰めてくれってやつ」
山威
「そうですね…」
ニカ
「……」
山威
「続きを話そう…」




